ラクロス

立教大・佐藤壮HC、「自分の未来への成長に興味を持てる人」こそがリーダー

立教大は「シェアド・リーダーシップ」を取り入れている(撮影・全て松永早弥香)

チームにはみんなを支える主将がいる。立教大学女子ラクロス部にも主将はいるが、「主将が必ずしもリーダーではない」と佐藤壮ヘッドコーチ(HC、45)は言う。立教大は誰もがリーダーシップを発揮できる「シェアド・リーダーシップ」という考え方を採用しており、その誰もが自分の力を発揮できるように行動してほしいと佐藤HCは期待している。

立教大・佐藤壮HC「誰もが輝ける場所がある」 自分の弱みもチームの誰かの成長に

「こうあるべき」というリーダー像はない

佐藤HCはリーダーシップを「自分の能力をどこでも発揮できて、周りに影響を与えられること」と定義している。当初は「いい影響」と表現していたが、「影響にいいも悪いもないな」と思い、改めた。「例えば誰かが感情的になるという影響を与えたとして、それが伝播(でんぱ)したのを悟ってケアする人が出てくる。必要悪じゃないですけど、何かが起きれば何かの反応が起きるので、とにかく自分のままでいいので自分の能力を隠さず発揮していこうというのを伝えています」

だからこそ、リーダーは「自分を知っている人、内省できる人」だと佐藤HCは考えている。自分のいいところも悪いところも分かった上で、自分と向き合う努力をし、自分の未来への成長に興味を持てる人。そういう意識を持って、一人ひとりがチームに関われるよう、佐藤HCは促している。

選手たちは自分と向き合い、チームと向き合って力を蓄えてきた

立教大女子ラクロス部は毎年部員が230人ほどという大所帯。そのため2年生になってからは各学年でリーダーと呼ばれる人を自分たちで決め、そのリーダーがリーダーミーティングに加わるようにしている。確かにチームの中にはリーダーが存在しているが、そのリーダーを頂点にヒエラルキーが形成されているわけではない。

「キャプテンはみんなのボスである必要性はないですし、リーダーもそうです。皆が皆、意見をまとめるのがうまいとか、勇気を持って決断できるとか、こうあるべきだと考えなくていい。その場にまとめるのが得意な人がいればまとめればいいし、各自の能力を発揮できるところで発揮すればいいんです」

リーダーミーティングでは2年生も積極的に発言しており、上級生も「そういう考え方もあるんだ」と知る機会になっているという。

自分の強みを生かせる場所で存在感を示す

2015年から立教大は実力順に背番号をつけるスタイルをとっており、1番はチームのエースがつける。エースはフィールド上で圧倒的な力を発揮し、仲間を勇気づけてくれる。そのエースに相手チームからのプレッシャーが集中することも多いが、「エースがいるから自分たちはのびのびとプレーができている」とチームメートは言う。だがエースだからといって、常にチームへ影響力を発揮しなければいけないというわけではない。

「例えば去年エースだった櫻井美帆はフィールド内での存在感こそ大きかったけど、フィールド外ではあまり存在感を発揮することはなかったです。それが悪いというわけでは全くなく、櫻井はチームを仕切ったり、積極的に進言をしたりというタイプではないというだけです。背中で鼓舞するのが櫻井だと周りも分かっていたから、それぞれが果たせる役割をそれぞれの場所で担ってくれていましたね」

櫻井はエースとしてフィールド上で影響力を発揮してきた

前述の通り、佐藤HCはリーダーシップに関して「いい影響」という表現を「影響」に変えたが、チームで過ごす時間を重ねるうちに、学生たちは自然と周りにいい影響を与えられるようになっていくという。何か課題や問題が起きたとしても、「これだったら大丈夫だと思いますよ」と皆が言う。仮にうまくいかないことがあったとしても、その場所でどんな反応があったのかを見つめ、そこから学び、次へとつなげる。立教大女子ラクロス部で培ったことは、絶対、社会人になっても生きると佐藤HCは確信している。

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