ラクロス

立教大・佐藤壮HC「誰もが輝ける場所がある」 自分の弱みもチームの誰かの成長に

それぞれがもつ強みが合わさり、強固なチームになる(撮影・松永早弥香)

「『みんなちがってみんないい』ってあるじゃないですか? 結局はそこだと思うんですよね」。女子ラクロス日本代表ヘッドコーチ(HC)も経験している立教大学女子ラクロス部の佐藤壮HC(44)は、チームの信頼関係を深めるキーワードをそう話した。立教大のメンバーは皆、入部してすぐのタイミングでその理解を深めているという。

立教大・佐藤壮HC、「主体性」から始まったチームが持つ無限の可能性

自分を知り、人を知るところから始める

立教大では2015年から、新入生に「エニアグラム診断」を促している。90もの質問に答え、その回答から9つの基本的な性格に分類するというものだ。ラクロス日本代表が実施していることもあり、他大学のラクロス部にも導入しているところはあるという。自分はどのタイプなのかを知り、どのタイプにも優劣がないことを、皆がまず理解する。その上で今度は上級生も混じってコンセンサスゲームをする。

「無人島に漂流したとか砂漠で遭難したとか、答えのないようなものをみんなで考える。先輩たちはある程度知識があるんで、『(エニアグラムの)タイプはなんだった? それだったらこんなことが得意なんじゃない?』とサポートしてくれます。タイプによって自分の強みや弱みが分かり、特にその弱みを知って向き合うことにつながるので、非常にいい結果に結びついているなって感じています。『自分の考えは他の人と違うんだ』ということも早い段階で分かり、じゃあどうするの?という壮大なワークが大学4年間という舞台で始まるわけです。何より、この取り組みをみんながキャッキャッと楽しそうにやっているので、今も続いているという感じです」

佐藤HCは勝つこと以上に、能力を発揮することを求めている(写真は本人提供)

誰もが完璧ではないから、誰かに頼る必要がある。そのためにチームメートがいると佐藤HCは強調する。「誰もが自分の力を生かせる場所が必ずある。その時に行動することで誰かが助けられ、自分も自信を深められる。自分の力を発揮して受け入れられる土壌が、チームの中に整っています」。だから一人ひとりが自発的に行動し、その行動を「いいね!」と皆が反応する。

フィールド上だけが舞台ではない

立教大女子ラクロス部は毎年、部員が230人程度と国内ラクロス部では最大規模を誇る。もちろん皆がフィールドに立てるわけではない。部にはカメラ係やSNS係など様々な係活動が設けられており、全員が何かしらの係に属している。誰もがチームに関われる場所があり、誰もが輝ける場所がある。

「1年生の中から必ず“ラクロスマニア”が出てくるので、ラクロスの技術や知識なんかをみんなに共有します。でもモチベーションの差がある仲間がいると『勝ちたくないの?』って言い始めるもんなんですけど、そういうのをここ10年ぐらい見てないです。やる気がある・ないというのは、必ずどんな組織でも出てくる。いわゆる意志決定の中枢から近い人が遠い人に向かって発言するようなことで、その逆はまず聞いたことがないですよね。うちはそのヒエラルキー的なものをなくすことから始まっているから、もちろんその時々によって一人ひとりのモチベーションに差はあるでしょうけど、チームとして致命的な問題になるということはないです」

スタンドからの応援が選手たちの背中を押してくれる(写真は2019年のもの、撮影・松永早弥香)

立教大は試合に勝つことだけではなく、その先を見据え、「社会で活躍する女性を輩出する」という目標を掲げている。そのために自分はこの4年間でどう力を蓄え、チームに貢献していくか。まずは自分を知り、仲間を知ることから始めることで、立教大は一人ひとりの可能性を育てている。

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