東海大、強さへの挑戦 「森永製菓inトレーニングラボ」のサポートでフィジカル強化
2018年正月の駅伝で初の総合優勝を果たした東海大。昨年はらしからぬ戦績に終わったが、「森永製菓inトレーニングラボ」のテクニカルディレクターである牧野講平氏の指導を受け、フィジカル面を強化。11月の全日本大学駅伝では万全なコンディションで復活の走りを見せる。
補強トレーニングをバージョンアップ
2018年頃から、東海大の選手たちのコンディショニングをサポートしている森永製菓。両角速監督によると、素早くエネルギー補給ができる「inゼリー」はなくてはならない存在だという。
選手たちはみな、レースや練習の時は始まる時間から逆算して『inゼリー エネルギー』を飲んでいる。また、体に負担がかかるレース後や強度の高い練習をした後は早めにたんぱく質を摂ることが大事なことから、『inゼリー プロテイン5g』を活用している。
昨年2021年6月には森永製菓とのユニホームのスポンサー契約を締結。右胸のところに「inゼリー」のロゴが入ったユニホームで競技に臨んでいる。
一方で、森永製菓の支援は物品提供にとどまらない。森永製菓には最先端のトレーニングや栄養指導など通してアスリートをサポートする施設「森永製菓inトレーニングラボ」(東京都港区)がある。そこで得たさまざまなノウハウやデータも、東海大に提供している。
こうした中、今年7月から始まったのが、「森永製菓inトレーニングラボ」のテクニカルディレクターである牧野講平氏による指導である。
「実は昨年から『森永製菓inトレーニングラボ』に数人ずつ行かせてもらい、そこで受けた指導をチームに持ち帰っていました。ただ、それではなかなか浸透しないところがあるので、本来はパーソナルな指導がメインの牧野さんにお願いして、チーム全体を見てもらっています」
両角監督は経緯についてこう話す。もともと補強トレーニングにも力を入れていたが、これまで以上に強化をしていきたい、バージョンアップしたい、という考えがあったという。牧野氏による指導は月に1度程度のペースで実施されている。
フィジカル面を高めてけがをしない体に
11年より「森永製菓inトレーニングラボ」のテクニカルディレクターを務めている牧野氏は、アスレティックトレーナーのスペシャリストである。浅田真央さん(フィギュアスケート)、高梨沙羅さん(スキージャンプ)、有村智恵さん(ゴルフ)、前田健太さん(野球)ら、各競技の数々のトップアスリートを指導してきた実績を持つ。自身は高校時代、陸上のハードル選手だった。
牧野氏は初めてチーム全体の練習に合流した際、東海大の選手に対してこんな印象を持ったという。
「陸上界のエリート揃(ぞろ)いですが、フィジカル的には格別強くはなく、素質で育ってきたのかな、と。まっさらな分、少しやれば効果が出ると感じました」
その上で、トレーニングの目標を「個々のフィジカル面のポテンシャルを上げて、レース後半を楽に走れるようにする」、そして「故障をしない体づくり」とした。
ただ、普段はマンツーマンで選手と向き合っており、学生を教えるのも久しぶり。牧野氏は「当初は大人数を指導する難しさも感じました。そこで、選手の走りやフィジカル面を見ながら、平均値を探り、みんなに効果があるトレーニングメニューを組んでいます」と話す。
初回はエクササイズのポーズをとるのがやっと、という選手が多かったが、回数を重ねるにつれて、全体的に体幹が安定してきたという。
「背骨がすっと真直ぐになって、立ち姿勢も良くなりましたし、足首の柔らかさも出てきましたね」
これを踏まえ、3回目の指導では「強化」をテーマに、17種類のエクササイズを教えた。例えば「シングルレッグ・デッドリフト」では、骨格的に一般的な日本人が使いにくいとされる臀部(でんぶ)とハムストリングを鍛えるのが狙いだ。
牧野氏によると、このエクササイズは、“「厚底シューズ」対策”という意味合いもあるという。「カーボンプレートが搭載され、推進力がある『厚底シューズ』は反発力が高いので、それに負けない体づくりが必要なのです」
必ず「5強」に食い込む走りをする
牧野氏の指導を受けてから、選手の意識も変わった。3年間けがに苦しんだ駅伝主将の宇留田竜希(4年、伊賀白鳳)は「地道なトレーニングを続ける重要性、その真意に気付きました」。また、1年次に全日本大学駅伝と正月の駅伝で区間賞獲得と鮮烈なデビューを飾るも、2年次はけがで三大駅伝を走れなかった石原翔太郎(3年、倉敷)は「けが予防のための体づくりをより大事にするようになりました」と言う。
これまで以上に高い意識でトレーニングに励んだ結果、ある成果が現れた。それは「故障をする選手がほとんどいなくなった」(両角監督)ということだ。牧野氏のサポートもあり、夏合宿以降、チームの状態は上がっている。
今年のチームのスローガンは「強さへの挑戦 ~東海ブルーのシンカ~」。今年正月の駅伝はまさかのシード落ちで、4年前に総合優勝した東海大は屈辱を味わった。だが、来たる全日本大学駅伝には、臥薪嘗胆(がしんしょうたん)の日々で培ったものをぶつけるつもりだ。
宇留田は「三重出身の僕にとって伊勢路は地元。錦を飾る走りをしたい」と意気込む。両角監督が大きな期待を寄せるエース・石原は、出走できなかった去年の思いも乗せて、東海大のエースにふさわしい走りをするつもりだ。
中距離を専門とする飯澤千翔(4年、山梨学院)は「(距離が短い)出雲駅伝は走りたい思いがあった」と残念なそうな表情を見せるが、6月の日本選手権男子1500mで優勝するなど、トラックで結果を残すことで、「全日本」を走る選手の良き刺激になってきた。
両角監督は「今年の大学駅伝は(青山学院大、順天堂大、駒澤大、國學院大、中央大の)5強という前評判ですが」と前置きすると、力強くこう語った。
「うちも戦力は整っています。必ずこの5強に食い込むつもりです」