東海大・市村朋樹、個人選手権5000mで大会新「市村朋樹の走りを見せたい」
「(3週連続の)3戦目できつい中でのレースになるので、タイムは気にせず勝負、勝つことを意識して(1週前の)東海大記録会が終わってからやってきました」。東海大学の市村朋樹(4年、埼玉栄)は学生個人選手権2日目の6月5日、5000mタイムレースに出走。ラスト1周で勝ち切り、13分45秒20の大会新記録と自己ベストで優勝した。
ラスト1周、若林の動作を見て勝負
5月23日の関東インカレでは男子1部5000mに出場し、13分56秒99で5位だった。翌週29日には東海大学記録会3000mで8分10秒86をマーク。2連戦の疲れを感じながら、6月5日の学生個人選手権5000mに挑んだ。レースは2組でのタイムレースで行われ、市村は2組目。1組目には後輩の佐藤俊輔(東海大3年、鶴崎工)が14分04秒01で2着に入った。
2組目がスタートすると、まず倉本玄太(青山学院大2年、世羅)が先頭に立つ。市村はその後ろにつき、レースは大きな集団で進んだ。そのレース中に電光掲示板には1組目の記録が表示された。市村は佐藤のタイムを確認すると、「絶対にこの記録だけには負けない」という気持ちが沸き起こった。
3000mをすぎたところで先頭集団は10人程度に絞られた。残り4周になる前に市村がギアを変え、前に出る。その市村に若林宏樹(青山学院大1年、洛南)が反応し、2人で後続ランナーをみるみる引き離す。
残り2周で若林が前に出る。「絶対に負けてはいけない」と心に決めていた市村は、若林の後ろについてタイミングを計る。ラスト1周の鐘が鳴る前、若林が後ろを振り向いた。「余裕なさそうだな」と踏んだ市村はギアを変えて若林を抜き去る。若林はそれに反応できず、2人の差は開いていき、そのまま市村がトップでフィニッシュ。大会新記録と自己ベストのタイムに、ジャンプで喜びを表現。若林と顔を合わせると、2人そろってお辞儀をした。
ラストスパートでは負けられない
「タイムよりも勝負」と決めて挑んだレースで大会新記録をマークしたことに、「めっちゃ意外でした」と市村。大学ラストイヤー、市村は「強い選手」になることを目指しており、監督やコーチからも勝つのが当然だと思われていることを感じ取っていた。特に勝負どころになったラストスパートは市村の強みだ。「マンツーマンになったら絶対に勝たないといけない」と覚悟し、ラスト1周で勝負に出た。
若林が1年生だと知ったのはレースの後。後ろについたことを「ちょっと申し訳なかったんですけど」と言いつつ、「でも勝負の世界はああいうものだと思うんで」と、勝つレースに徹した。市村にとっては、これが大学に入ってから初の全国大会での優勝。勝負に勝ち切り、自己ベストを出せたことは素直にうれしく、「とりあえず、疲れました」と笑顔を見せた。
「強い選手」を目指し、愚直に泥臭く
連戦で結果を出せた要因はなんだったのか。市村は少し考えてから、「今年の箱根駅伝が終わってからは、距離を踏む練習を中心にやってきました。去年のようにスピードを求める練習とは打って変わって。その成果が5~6月に出たんじゃないかな。距離を踏んでしっかり足作りをしたことがよかったのかなと思います」と答えた。特に今回のレースは、勝負どころを見極められたことが自信になった。それでも、市村が目指す「強い選手」からはまだまだ遠いと感じている。
「自分ではあまり大した進化はなくて、僕の上には、上と言っちゃああれなんですけど、石原(翔太郎、2年、倉敷)とか、他大で言えば三浦(龍司、順天堂大2年、洛南)とか、もっと強い選手がいるんで……。そういう選手に比べると、僕は強さ的にはまだちょっと歩みが遅いかなと思っているんで、愚直に泥臭く走っていこうかなと思っています」
これまではレースが続いていたが、ここからは7月21日からのホクレン・ディスタンスチャレンジに向け、脚をつくっていく。今のところ5000mと10000mでの出走を予定しており、ともに記録を狙う。
同じチームの4年生も、就職活動を終えて少しずつチームに戻ってきている。「やっと4年生がまとまりつつあります。レースに出る出ないに関わらず、4年生全員が夏合宿で士気を高めていって、駅伝3位以内を全員で目指していけるよう、4年生が中心になってチームをまとめていきたいです」。市村はこれまでの3年間を振り返ると、「一度も駅伝でまともな結果を残していない」と言う。だからこそラストイヤーでは「ちゃんと4年生らしい、市村朋樹の走りを見せたいと思っています」と、言葉に力を込めた。