早稲田・千明龍之佑、関東インカレ5000mで3位 勝てなかった悔しさも向上心に
関東インカレ最終日に行われた男子1部5000mで早稲田大学の千明(ちぎら)龍之佑(4年、東農大二)は、4位のジェームズ・ブヌカ(駿河台大4年)と0秒03差で表彰台をつかんだ。しかしラストに順天堂大学の三浦龍司(2年、洛南)に敗れたことに、自らの課題を感じている。
関東インカレ前に大幅自己新
千明は5月4日の法政大学競技会で13分31秒52をマークし、自己記録(13分54秒18)を約23秒も更新。日本選手権の参加標準記録(13分32秒00)も突破した。これまでの練習通りの記録が出せたことでホッとした一方で、関東インカレでの注目度も必然的に上がり、結果を出さないといけないというプレッシャーも感じていた。
チームは今年、「関東インカレ・日本インカレで全種目表彰台」、そして大迫傑(Nike)が1年生だった2011年度以来となる「学生駅伝3冠」を目標に掲げた。駅伝シーズンに勢いをつなげるために、トラックシーズンに結果を出す。だからこそ、関東インカレでは勝ちにこだわったレースをしようと心に決めていた。
自分が集団の先頭に立って、選手を振り落とす
スタートしてほどなく、サムソン・ディランゴ(流通経済大1年)が前に出ると、その後ろに鎌田航生(法政大4年、法政第二)と藤本珠輝(日体大3年、西脇工)が続き、大きな集団でレースが進む。集団の中からジェームズ・ブヌカ(駿河台大4年)がスッと前に出ると、ディランゴがその後に続き、2人が抜けた。集団のスピードが上がらないと感じた千明は、2000mを過ぎたところで自分のすぐ後ろを走っていた後輩の井川龍人(3年、九州学院)に指でサインを送り、2人そろって前へ。
最初は千明も藤本の後ろについたが、ペースを上げないと混戦になると考え、少しでも集団の人数を減らしたかった。残り4周で前に出ると、集団は千明を先頭に三浦、市村朋樹(東海大4年、埼玉栄)、井川、藤本の5人に絞られた。ラスト3周を前にして井川が後退。ラスト1周でスパートをかけたが、三浦が離れない。ラスト200mでもう一度ギアを上げる。三浦は離れるどころか最後の直線で千明を振り切り、日本人トップの2位でゴール。千明はゴール直前にブヌカをとらえ、3位に上がった。
レース中、千明は常に三浦の位置を確認していた。自分がペースを上げて集団の人数を減らしても、最後は三浦との勝負になると分かっていた。「ラスト800mとかでもう1回いかないといけなかったです。ラスト400mであの距離を保たれていたのはダメだった」。最後のスパートに自分の力不足を感じたが、三浦に敗れたことをネガティブにはとらえていない。「まだ上があることはいいことなので、そこを目指してやっていきたい」。ここからまた強くなる。
目標通りにいかなくても、前向きに
千明は昨シーズン、夏にけがをしてしまい、日本インカレと全日本大学駅伝を回避した。自分が思うように走れていない間に、同期の中谷雄飛(佐久長聖)が10000mで27分54秒06、同じく太田直希(浜松日体)も27分55秒59をマークし、今年4月には井川も27分59秒74を記録するなど、チームの中に3人も27分台が選手がそろった。「僕をドンドン追い越す存在が出てきたことは、僕自身も普段の生活や練習を見直すきっかけになった」と言い、自分に甘いところを直す努力もしてきた。
前述の通り、この関東インカレでは「全種目表彰台」を目標にしていた。しかし初日のハーフマラソンは佐藤航希(2年、宮崎日大)が6位、10000mは中谷の8位と、流れに乗れずにいた。2日目には1500mで菖蒲敦司(2年、西京)が2位になり、更に菖蒲は最終日の3000mSCで8分45秒95の自己ベストを出して優勝している。「チームで一番調子がよかったのはあいつなんで、やってくれると思っていました」と千明は言い、その菖蒲がもたらした流れに乗って、5000mでは自分と井川で入賞しようと考えていた。井川はラスト3周で集団から離れてしまったが、最後は踏ん張り、8位入賞を果たした。
多くの選手が記録を出してこの関東インカレに臨んだが、「すごく自信があったんですけど、少し物足りない結果で終わってしまった」と千明は言う。しかし悲観するのでなく、気を引き締めて前を向く。「調子の良い悪いで取りこぼしもあって、そこを取れていたらと悔しいところはあるんですけど、それも試合の流れや状況で変わるので仕方がないのかなと。まだ日本インカレがあるので、そこで取りこぼしのないようにしていけたらと思っています」
近年で最も高い目標を立てたからこそ、4年生として主将として、自分の言動でチームを上へ上へと引き上げていく。悔しさを見せながらも、千明は前向きな姿勢を崩さない。