早稲田大・中谷雄飛、日本選手権10000mで27分台「箱根でもインパクトを」
第104回日本陸上競技選手権大会・長距離種目 男子10000m1組
12月4日@大阪・ヤンマースタジアム長居
1着 市田孝(旭化成) 27分52秒35
2着 中谷雄飛(早稲田大学)27分54秒06
3着 太田直希(早稲田大学)27分55秒59
12月4日の日本選手権長距離に出場した早稲田大学の中谷雄飛(3年、佐久長聖)は、27分54秒06で走りそれまでの自己ベストを大幅に更新。レース後、充実した表情で取材に答えた。
始めから積極的に先頭に立った中谷
今回の日本選手権10000mの参加標準記録は28分20秒。標準記録を切る選手が続出し、エントリー選手が50名あまりとなり、2組にわかれてタイムレースでの開催となった。資格記録が早い順に組みが振り分けられ、資格記録28分19秒27の中谷はチームメートの太田直希(3年、浜松日体、資格記録28分19秒76)とともに先にレースが行われる組に入った。
この組にはオープン参加のマゴマ・ベヌエル・モゲニがいたが、中谷はそれよりも前に出て、勢いよく先頭を引っ張った。1000mの通過は2分46秒、2000mは2分49秒、3000mは2分48秒となり、フィニッシュタイムがちょうど28分となるぐらいのペースでレースが進んだ。3000mを過ぎたぐらいから相葉直紀(中電工)、モゲニが出て、4000mを過ぎると市田孝(旭化成)が先頭へ。ペースを上げた市田に中谷と太田もついていく。5000mの通過は13分57秒となり、好記録への期待が高まった。
5000mを過ぎて先頭の市田、中谷と他の選手の距離が少し離れた。軽快なペースで刻み続け、8000mを通過したところで中谷は先頭に立った。後ろから大六野秀畝(旭化成)と太田もついて先頭グループは4人に。大六野が前に出たが、9000mで中谷が先頭に立ちペースアップ。残り600mで太田が初めて先頭になり、残り1周で中谷が再度先頭に。ラスト200mで市田がラストスパートしトップでゴール。27分台を確信した中谷は両手を広げて笑顔で2着のゴール。直後に太田も笑顔でフィニッシュした。
思い描いたもの、9割がた達成できた
中谷はレースプランとして、先頭で勝負することを思い描いていた。27分台を出したいという思いがあり、相楽豊監督からは「最後まで勝ちきってこい、勝負に勝てば自ずとタイムはついてくる」と言われていたという。「今年1年間一番力を入れてきた戦いだったので、そこで27分台を達成できた、トップ争いをできたのはいい経験になりました。形として目標にしていたものが9割がた達成できたので、よかったと思います」と語った。
9割がた、とはどういうことか? と聞かれると、最後に競り負けてしまったことをあげた。「残り200mのスピードで負けてしまったので、トップを取れてれば100点だったのかなと思います」
速いランナーが集まる2組目で走りたかったかという質問には「もちろん出るからには2組目で勝負したいという思いが強かったんですけど、監督と話していく中で『少人数だし記録も狙いやすいんじゃないかな』という話になって、ポジティブに捉えられて走れました」という。来年は2組になるかわからないが、もしそうなったらもちろん上の組で勝負したい、と力強く言う。
視野が広がったことが飛躍への鍵に
中谷は10月11日のトラックゲームズ in TOKOROZAWAで10000mの自己ベストを更新し、11月1日の全日本大学駅伝では3区区間賞。そして今回の27分台と、いい流れで結果を出してきた。好調の要因をたずねると「継続してトレーニングを積めていること」をまずあげた。「過去2年間で調子の合わせ方だったりとか、トレーニングの組み方で考え方が広がって、今年1年間はそれを生かしながらできたのが好調につながってるのかなと思います」
具体的にはどういったことに気をつけたのだろうか。「今までは極端な話、疲労があるときはたくさん寝よう、ぐらいの考え方でやってきました」と明かす。しかしトレーニングの内容、睡眠の質、栄養など細かな部分に気を配るようになり、その成果が現れてきているという実感がある。今年の夏に大迫傑(ナイキ)の主催する学生ランナー向けの強化キャンプ「Suger Elite」に参加したことも大きかった。「大迫さんの考え方だけじゃなくて、参加してる大学生、高校生の選手の考え方を実際に聞いて、すごく視野が広がったなと思っています」。中谷の中に蓄積されたさまざまなものが実を結ぼうとしているのが感じられた。
同級生でライバルの太田との27分台「感慨深い」
同級生の太田はトラックゲームズ in TOKOROZAWAで中谷とともに自己ベストを更新し、全日本大学駅伝では4区区間新記録と着々と実力を高めてきている。レース前は特に話はしなかった、というが「(太田は)最後まで絶対いるだろうなと思って、8000mぐらいで意識してラスト1周は『絶対負けない』と思って走りました」。ともに27分台を出したことについては「僕だけでは味わえないような、感慨深いものがあります」と笑みを浮かべた。
今回のレースに集中していたので、箱根駅伝のことはまだ具体的に考えられない、と言った中谷。しかし「今回のレースの結果を通して、箱根でもいい走りができるんじゃないかという自信がつきました。箱根では日本選手権同様にインパクトのある走りができればいいと思います」ときっぱり。中谷と太田、2人が先頭に立つ早稲田の箱根路での戦いがさらに楽しみになってきた。