陸上・駅伝

特集:東京オリンピック・パラリンピック

相澤晃が日本新記録で東京オリンピック内定、2位の伊藤達彦は「相澤に勝ちたかった」

日の丸を背負い、笑顔で記念撮影に応じる相澤(すべて撮影・朝日新聞社)

第104回日本陸上競技選手権大会・長距離種目 男子10000m

12月4日@大阪・ヤンマースタジアム長居
1位 相澤晃(旭化成)  27分18秒75
2位 伊藤達彦(ホンダ) 27分25秒73
3位 田村和希(住友電工)27分28秒92

12月4日、陸上の日本選手権長距離が開催され、男子10000mで相澤晃(東洋大~旭化成)がそれまで村山紘太(旭化成)の持つ日本記録27分29秒69を更新する27分18秒75で優勝。東京オリンピックの参加標準記録27分28秒も突破し、内定をつかんだ。

コエチのペースメイクに最後までついた相澤

今回の日本選手権男子10000mの参加標準記録は28分20秒。標準記録を突破しエントリーした選手が50人あまりとなり、2組にわかれてのタイムレースとなった。この日最後の種目となった1組には資格記録が速い選手から順にエントリー。ペースメーカーを務めるのは、日本で活躍するケニア勢の中でも資格記録27分02秒39と、トップレベルの実力を持つベナード・コエチ(九電工)だった。

レースは最初の1kmを2分45秒で入り、その後も2分44秒、2分44秒と安定したペースで刻んでいく。相澤ははじめ、集団の5番手ほどでレースを進めた。5000mの通過は13分39秒。6000mを過ぎてコエチについて大迫傑(ナイキ)、田村和希(住友電工)が出て、その後ろに伊藤達彦(ホンダ)、相澤が続く。先頭集団は佐藤悠基(SGホールディングス)、鎧坂哲哉(旭化成)、田澤廉(駒澤大2年、青森山田)を加えた7人となった。

7000mを過ぎて先頭はコエチ、伊藤、田村、相澤の4人に。7600mで田村が離れ、8000mを通過したところで初めて相澤が日本人先頭に立った。しかし伊藤もまた前に出るなど競り合いながら走り、8400mで伊藤が離れ、相澤のみがコエチについた。そのままハイペースを維持し、最後の1kmは2分37秒と上げてフィニッシュ。ゴールライン手前では「1」のポーズをつくり、再度ガッツポーズ。ゴール後に相澤と伊藤は健闘をたたえあい、大記録をアシストしてくれたコエチに感謝を示した。3位の田村までが日本記録を更新、2組合わせて27分台が18人出るという、まさに日本トップの戦いにふさわしい結果となった。

ハイレベルな練習が日本記録への自信に

「まずこのような状況の中で(大会を)開いていただき本当にありがとうございました。この1年間このレースのためにやってきたので、オリンピック内定という結果が出て良かったと思います」。相澤は取材の冒頭、感謝とうれしさを口にした。

ゴール手前で「1」を掲げる相澤

昨年、東洋大4年時の頃から相澤ははっきりと「世界」を意識して取り組んできた。10000mを27分台で走れるスピードをつけたいと取り組みつづけ、今年の10月17日、宮崎県長距離記録競技会で27分55秒76を出し、初めて27分台に突入した。この記録会を走り終わったあとにまだ余裕があり、記録をまだまだ伸ばしていけるという手応えもあり、「(日本選手権まで)1カ月半あったので、練習を積むことができれば日本記録も目指せるんじゃないかなと思いました」と振り返る。

社会人1年目、旭化成には世界を目指す選手たちが数多く在籍し、切磋琢磨できているという相澤。大学時代にはあまりできなかったスピード練習にも取り組めている。特に27分29秒74の自己ベストを持つ鎧坂とレースペースを意識した練習をこなすことができ、「今回のレースで日本記録を出す自信につながった」と話した。

伊藤「体がついていかなかった」

最後まで相澤と競り合った伊藤は27分25秒73でゴール。優勝と27分28秒切りを目標にしていたと言い、「タイムは出たけど最後相澤選手に負けたので、そこが課題かなと思います」と感想を口にした。最後まで気持ちは切れなかったが、体がついていかなかったという。

昨年3月の学生ハーフマラソンで相澤が優勝、伊藤は3位となり、ともにユニバーシアード代表となった。その頃から「相澤に負けたくない」と常々口にし、ライバルだと思って実力を高めてきた。ユニバーシアードのハーフマラソンでも相澤の後塵を拝し、今年1月の箱根駅伝では2区で15km近くも並走。お互い一歩も引かないデッドヒートが話題となったが、ここでもラスト1kmで置いていかれた。「負けてばっかりだから、今回こそは勝ってやるという思いで走ってました」

伊藤(後ろ)は今回も相澤に及ばなかった

社会人1年目、ホンダで走る伊藤だが、自主性を大切にしてくれるチームカラーがとても自分に合っているという。「チームの練習でもみんなのペースより速く走ったり、5秒遅れでスタートしたりとかハイレベルな練習ができてたんで、今回はいけるのではと手応えを感じていました」と話す。すでに東京オリンピックの参加標準記録を突破したが、「オリンピックに出るだけで終わりじゃないので、出て結果を出すにはさらにレベルの高い練習をしていかないと。今回相澤が出した日本記録の更新、26分台も狙っていかないとと思います」と視野を高く持つ。

相澤と伊藤、同年代の2人がこれからの日本長距離界をさらにレベルアップさせてくれるのは間違いない。

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