全日本大学駅伝、中盤に首位を守った早稲田大が5位 相楽豊監督「層の厚さ」が課題
第52回全日本大学駅伝
11月1日@愛知・熱田神宮西門前~三重・伊勢神宮内宮宇治橋前の8区間106.8km
5位 早稲田大 5時間13分04秒
11月1日の全日本大学大学駅伝で早稲田大は5位だった。3区の中谷雄飛(3年、佐久長聖)が首位に立ち、6区の終盤までレースを牽引(けんいん)。3位以上を目指していたチームとして、「前にいる4チームとは層の厚さで負けたのかなと思っています」と相楽豊監督は悔しさをにじませた。
区間新ペースで突っ込んだ中谷が初の区間賞
早稲田大は10月27日に発表されたメンバーエントリー通りのメンバーでレースに挑んだ。1区は辻文哉(1年、早稲田実)が担い、井川龍人(2年、九州学院)につないで3区に中谷雄飛(3年、佐久長聖)。中谷はレース前、自分のところでトップに立ち、その勢いのまま同期の太田直希(浜松日体)で後続ランナーを更に引き離すことで、続く1年生の菖蒲敦司(西京)と諸冨湧(洛南)を安心させたいと考えていた。
前回大会、中谷は同じ3区で相澤晃(東洋大~旭化成)に力の差を見せつけられた。故障明けだった前回大会とは異なり、今年は継続的に練習が積めていた。10月11日にあったトラックゲームズ in TOKOROZAWAでは10000mで28分19秒27と自己ベストも更新し、自信をもって今大会に臨んだ。
1区の辻はトップと11秒差の6位。2区の井川はそこからすぐに追い上げ、3位集団の先頭で中谷に襷(たすき)をつないだ。トップの城西大とは22秒差。相楽監督からは「最初の5kmは13分台で入ってしっかり粘っていこう」と言われていた。しかし中谷はいい流れでつないでくれた後輩たちのためにも、前回大会で従来の区間記録を1分8秒も上回る区間新記録を出した相澤よりも速いペースで城西大を猛追し、1.7km地点で一気に追い抜く。後半は苦しさから顔をゆがめながら、2位に浮上した明治大と20秒差をつけて太田に襷リレー。33分42秒で区間賞を獲得した。
「とくに具体的なタイムは考えていなかったんですけど、33分30秒くらいでいけたらいいかなと思いながら走っていました」と中谷。相澤の区間記録(33分01秒)をまったく意識しなかったわけではないが、「あまり具体的なタイムを意識すると、僕自身あまり結果がよくないことが多いので」と、自然体で押せるペースで押していくことを考えていたという。これが中谷にとって学生駅伝初の区間賞。「3年目ではあるんですけどようやく区間賞がとれたので、そこは自信にしていけたらいいのかなと思っています」と笑顔で答えた。
同じ3区には東京国際大の内田光(4年)や駒澤大の鈴木芽吹(1年)、皇学館大の佐藤楓馬(1年)と、佐久長聖高校時代の仲間の姿もあった。レース前には4人で顔を合わせて話をしたそうだ。「久しぶりにああやって先輩や後輩と話せて、改めて負けたくないなという思いで走ることができたかな」と中谷はうれしそうに明かした。とくに鈴木は9月の日本インカレ5000mで3位になるなど、ルーキーイヤーから結果を出している。当日変更で3区にきた鈴木に「あ、3区なんだね」と中谷はつい言ってしまったようだが、一選手として勝ちたいと思いながらレースに臨んだという。
Bチームで力を蓄えた山口が初の学生駅伝でアンカー
太田は「いい流れでもってきてくれ」と中谷に話していた通りの展開で襷を受け取った。終始単独走でのレースとなったが、単独走に対してとくに苦手意識はなく、続く1年生のためにも最初から突っ込んだ。同期でチームを支えてきた千明(ちぎら)龍之佑(東農大二)が走れない分、自分の走りでチームを盛り上げたいという思いも太田にはあったという。持てる力を振り絞り、2位の明治大との差を52秒に広げて菖蒲につないだ。33分23秒と区間新記録ではあったものの、東海大ルーキーの石原翔太郎(倉敷)に次いでの区間2位に「もうちょっと力が必要かな」と悔しさの方が強かった。
早稲田は6区終盤で首位を明け渡し、7区を鈴木創士(2年、浜松日体)が、8区を山口賢助(3年、鶴丸)が務めた。山口は夏前にけがをしてしまい、夏合宿はBチームの中にいた。けがが治ったからAチームに戻るのではなく、もっと強くなってから戻る。そう決意した山口は、今まで取り組んでこなかった補強もこなして力を蓄え、Aチームに復帰。そして自身初の学生駅伝のメンバーに選ばれた。
山口は鈴木から5位で襷を受け取り、11秒差の4位明治大を追う。明治大との差は開いていったが、次第に青山学院大の背中が見えてきた。このふたりを抜けばチームが目指してきた「3位以内」に届く。チームのために最後の力を振り絞るも届かず、5位でフィニッシュ。「正直、優勝を狙いつつ、3位には絶対入りたいと思っていたんですけど、最後に明治さんや青学さんが見えていた中で抜けきれなかったということに、力不足を感じています」と無念さを口にした。
学年関係なく、常に毎年戦えるチームに
今大会、早稲田大は4年生0人、3年生3人、2年生2人、1年生3人という布陣だった。新しい戦力を生かせたことで来年以降につながる経験を積めたものの、「1年1年が勝負なのは間違いないですので、次の来年を足がかりにして来年はもっとよくなるというような考え方をしていたら勝てない」と相楽監督。学年関係なく、常に毎年戦えるチームにしなければいけないという思いは強い。
今大会、中谷とともにエースとしてチームを支えてきた千明を故障で欠いた影響は大きく、前半の勢いを最後までつなげられなかった。課題は層の厚さ。「故障者や体調不良者など隙があったら、絶対3位以内に入れない」と相楽監督は言葉を重ねた。箱根駅伝まであと2カ月。選手たちを更に磨きあげながら、隙のないチームをつくっていく。