陸上・駅伝

特集:第52回全日本大学駅伝

全日本大学駅伝で明治大が3位 光ったルーキー児玉真輝の走り、4年大保海士の意地

アンカーの鈴木が青山学院大を抜き、明治大は3位でゴール(すべて撮影・朝日新聞社)

第52回全日本大学駅伝

11月1日@愛知・熱田神宮西門前~三重・伊勢神宮内宮宇治橋前の8区間106.8km
3位 明治大 5時間12分24秒

11月1日に全日本大学駅伝が行われ、明治大が3強(東海大・青山学院大・駒澤大)の一角を崩す3位に食い込んだ。「選手には5位以内と言っていたんですけど、あわよくば3強を崩したいという思いがあって、その通りの結果を選手が出してくれて素直にうれしいです」と山本佑樹監督は言い、箱根駅伝に向けては「まずは往路優勝を狙って総合優勝に結びつけたら」と、初めて「優勝」という言葉を口にした。

初の学生駅伝に児玉「距離耐性に対してはかなりいい」

10月11日にあったトラックゲームズ in TOKOROZAWAで明治大は多くの選手が自己ベストを更新し、選手層の厚さを見せつけた。全日本大学駅伝での活躍も期待されていた中で、1区を任されたのはルーキーの児玉真輝(鎌倉学園)だった。児玉自身、チームの流れを左右する役割にプレッシャーを感じていたものの、それでも「僕がいけたら結構いいところまでいけるはず」と覚悟を決め、スタートに着いた。

児玉(中央、13番)は三浦(14番)の後ろにつきながら、余裕をもってレースを進めた

同じ1区には、昨年の全国高校駅伝(都大路)でともに1区を走った順天堂大の三浦龍司(1年、洛南)や帝京大の小野隆一朗(1年、北海道栄)の姿もあった。都大路では児玉が区間9位、三浦が区間21位、小野が区間4位だった。とくに三浦は10月17日にあった箱根駅伝予選会で日本人1位(総合5位)と力を示しており、児玉も意識するところはあったという。

しかし個人の勝負よりもチームのために自分が果たすべき役割を考え、鈴木聖人(3年、水城)が1年生の時に1区を走った状況(トップと34秒差)を参考にしながら、トップと30秒以内で走りきることをイメージ。8km地点でも余裕をもって走れ、トップの三浦と8秒差での区間5位で、2区の小袖英人(4年、八戸学院光星)に襷(たすき)つないだ。

初の学生駅伝を終え、「僕の中で80~90点くらい。高校時代に10kmとかも走っていましたけど、その時よりも確実にいい意味で短く感じたので、距離耐性に対してはかなりいい感じかな。もちろんきつかったんですけど、今日もあっという間でした」と言い、続く箱根駅伝へ確かな手応えをつかんだ。

大保「一泡吹かせてやろう」と区間2位

小袖は一時はトップに立ちながら、区間4位の快走で2位につけた。当日変更で3区を任された手嶋杏丞(3年、宮崎日大)も区間7位で2位をキープ。手嶋はレース直前に調子を崩してしまい、山本監督はレース前日の段階では手嶋をメンバーから外す予定だったという。しかし互いに切磋琢磨(せっさたくま)してきた鈴木と手嶋のコンビで頑張るという意見があったため、山本監督も手嶋の起用を決意。手嶋は持ち味である積極的な走りでチームの勢いを次につないだ。

4区の櫛田佳希(2年、学法石川)が2位を守り、5区の金橋佳佑(3年、札幌山の手)で5位になるも、6区の大保海士(4年、東海大福岡)が区間2位の走りで2位に浮上。一時はトップにも立った。

大保は1年生の時に全日本大学駅伝を経験しているが、その後は学生駅伝から遠ざかっていた。陸上を続けてきたこの10年間の集大成として、メンバー入りの当落線上にいた夏も気持ちを切らすことなく走り込んできた。10月のトラックゲームズ in TOKOROZAWAWAでは、規格外シューズながら10000mで29分19秒32の自己ベストをマーク。そして伊勢路に帰ってきた。「これまで目立った結果を出せていなくて、注目もされていなかったと思うんですけど、今回の駅伝でちょっと一泡吹かせてやろうという思惑も自分の中では少しありました」。4年生としての思いがこもった走りを見せつけた。

第6中継所直前で大保(右)は東海大の長田と競りながら、一時は長田に先行してトップにも立った

7区の加藤大誠(2年、鹿児島実)は3位の駒澤大と9秒差での4位で、アンカーの鈴木に託した。19.7kmの最長区間を任された鈴木は自分のペースで押し切り、スタート時に50秒差があった青山学院大の吉田圭太(4年、世羅)を抜き去っての3位へ。右手で力強く「3」を示しながら笑顔でゴールした。

パンチ力・爆発力のある走りで箱根駅伝では「優勝」を

結果を見てみると、常に5位以内でレースを進め、3強を崩しての3位。全日本大学駅伝に向け、監督からはシード圏を目指しての5位以内という言葉が出ていたが、「練習とか調整の段階で明らかに動きがよかったですし、例年にないくらい結果が出ていたので、みんな言葉には出さなかったけどそれ以上を目指す気持ちはあったと思います」と大保は振り返る。

今シーズンを迎えるにあたり、大エースだった阿部弘輝(明治大~住友電工)が卒業した影響は大きかったという。その一方で、一人ひとりの力が合わさった総合力で勝つという雰囲気がチームの中で芽生え、山本監督も「エースは誰なんだ」と投げかけながら選手たちの主体性を促してきた。

箱根駅伝に向けては、アンカーで結果を出した鈴木を中心に、という思いが山本監督にはある。しかしひとりのエースではなく、5人ほどのエース級がそろった中で、箱根駅伝では「優勝」を目指すと公言。「今回走った8人以外にも走らせたい選手、走れそうな選手が数多くいますので、区間が増える箱根駅伝でも選手層の厚さで勝負したい。ただ、パンチ力・爆発力のある走りが駅伝で優勝するには必要になるので、そのあたりは選手と相談しながら最後まで調整していきたいと思っています」

今回の全日本大学駅伝では、今年の箱根駅伝を走った前田舜平(4年、倉敷)と村上純大(4年、専大松戸)はメンバーから外れていた。優勝に向けて動き出したチームの中で、4年生がどんな姿を見せてくれるか。

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