全日本大学駅伝前日、東海・青学・駒澤「3強」の監督が会見「エースはどこに?」
明日11月1日に迫った第52回全日本大学駅伝。開催に先立ってオンラインで監督会見が行われ、東海大学の両角速監督、青山学院大学の原晋監督、駒澤大学の大八木弘明監督の3人が出席。レース展望や他校の気になる選手など、さまざまな質問に答えた。
「コロナに負けるな大作戦」!
まず最初の質問は、「今大会のテーマと目標について」。両角監督はこの状況下でも大会が開催されることへの感謝を述べ、テーマは「感謝と恩返し」。目標は「優勝を目指し、2連覇」と口にした。「自信を持って指導してきたが、やってみないとわからない、気が抜けない」と気を引き締める。
原監督はもまず感謝を口にしたのち、「コロナ禍で自粛ムードが広がって、ネガティブ思考に陥っているのでは。できない理屈を考えるのではなく、どうやったらできるのかという理屈で世の中を動かすべき」と持論を展開し、作戦名は「コロナに負けるな大作戦!」と発表。「相手は東海さん、駒澤さんじゃない、相手はコロナだ。ウイルスに負けないようなポジティブな展開にしていきたい」と過度の自粛を牽制するように意見を述べた。
大八木監督もまた感謝、支えてくれている人たちへの恩返しを何度も口にし、「しっかり恩返しして、しっかり戦っていけたら。優勝を目指して頑張っていきたい」とした。
駅伝デビューの選手たちに期待
続いての質問は「鍵を握る、特に活躍を期待している選手は?」。大八木監督は1年、2年の下級生がだいぶ成長してきている。3大駅伝初めての選手がどういう走りをしてくれるか楽しみにしている」とした上で、エースの田澤廉(2年、青森山田)については「状態はいいので、田澤のところまでどれだけ流れを作ってこられるか」
原監督は8区間を1~3区、4~6区、7、8区の3ステップに分けていると言い、2区にエントリーされている近藤幸太郎(2年、豊川工)、中村唯翔(2年、流経大柏)の3大駅伝初出場の2人に期待していると答えた。
両角監督はアンカーの名取燎太(4年、佐久長聖)の名前を挙げ、「エースをそこに置いて、名取のところにしっかりつなごうという形でやっていきます」と2年連続アンカーを務める最上級生への信頼をにじませた。
当日エントリー変更で、あの選手はどこを走る?
第50回記念大会から区間の距離が変更になり、後半の7、8区が長距離区間となった本大会。区間配置の重要性について問われると、原監督は現状のメンバーエントリーを見て他大学の予想を開始。「東海さんは西田(壮志、4年、九州学院)、石原(翔太郎、1年、倉敷)、喜早(駿介、1年、仙台育英)は変わりますね。1区石原、4区喜早、7区に西田くんかな? どうでしょう」と両角監督にパス。両角監督は苦笑いしながら「ご想像にお任せします」とかわした。
続いて原監督は駒澤の予想も。「小林(歩、4年、関大北陽)、田澤、鈴木(芽吹、1年、佐久長聖)が変わりますね。7、8区に小林、田澤のどちらか。鈴木くんがう~ん、4区! いかがでしょう!」と大八木監督に直球質問。大八木監督はニヤリと笑ったのち、「青学も4区あたり、アンカーとかそのあたりが変わると思いますね(笑)」と反撃。補員となっている吉田圭太(4年、世羅)はどこへ? との質問には「今言ったら面白くないですからね、競馬の予想と一緒。予想しあって当事者意識を持つ、それが大切ですね」と「原節」を展開した。
他大学で意識している選手は? との質問には、両角監督は「ここまでトラックの評価になっちゃうので難しいな」としながらも、東洋大学の西山和弥(4年、東農大二)、早稲田大学の中谷雄飛(3年、佐久長聖)の名前を挙げた。
原監督は「後半の7区8区が重要区間となるので、そこを走る選手」としつつ、「東海だったら西田、名取。青学なら神林」といったところでうっかり名前を出しそうになりながらも「エース格」。続けて「駒澤は小林、田澤、東洋は西山、國學院は藤木(宏太、3年、北海道栄)、殿地(琢朗、3年、益田晴風)」と各大学の主力級を警戒。
大八木監督も「7、8区を要注意、ミスのないレースを」としながら「明治に注目」。「ここへ来てものすごくチーム状況がいいのは感じています」という。それを受けて原監督も「ポテンシャルの高い選手が多いし、勝つべき大学だと思います。チーム1枚岩になったときは恐ろしいなと思います」とライバルの力を認めた。
解説を務める瀬古利彦さんから「アンカーまで何秒あれば勝てますか?」という質問を受けると、3人とも「30秒」と回答。30秒負けてきてもひっくり返せる、30秒勝って来てくれれば確実に勝てる、と認識が一致していた。
原監督、過度な自粛ムードに苦言
今年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、例年通りの動きができないシーズンとなった。特に緊急事態宣言下での取り組みなどで工夫したことに話が及ぶと、原監督の口調は熱くなった。
「どこの大学でも、長距離選手というのは特に規則正しい生活を人一倍行っていると思います。寮生活の中からコロナウイルスが湧き出るんじゃなくて、乱れた私生活からクラスターが起きる。私は18歳から22歳の若者たちが不要不急な外出を避けて規則正しい生活に取り組んでいる姿を間近で見ているんです。そんな中でも自粛警察的な方からの誹謗中傷や、悪意の電話もありました。そこからどう指導者が守ってあげるか苦労しました」と、過度な自粛強要ムードに改めて苦言を呈した。その上で取り組んだこととして、コロナウイルス以外の病気にもかからないように、免疫力を下げないように、練習を3割程度カットしたことを明かした。「それから4年生たちには、4年生としてかっこよく、プライドを持ってやろうと伝えましたね」
大八木監督もまた、集団で練習に取り組めなかった苦労を明かした。「厳しい状況の中で我慢しながら乗り切っていこう、と学生たちには言いました。各自が自主性を持って大変な期間を乗り切ろうと」。両角監督もまた選手の自主的な取り組みについて言及した。「日頃やらされてる、強制されてるというところがなくなり、今までの教えの中で学んできたことを生かせる、自分と向き合えるチャンスじゃないか、というのは言っていました」
レース本番では昨年同様監督車に乗る増田明美さんからの質問は、「もし自分のチームの選手と体が入れ替わるとしたら、誰と入れ替わりたい?」。この突拍子もない質問に、原監督は最初混乱した様子。「入れ替わったってしょうがないじゃん(笑)」と言いつつ、質問の意図をつかむと「うーんそれはですね、顔だけで言ったら湯原です! イケメンですからね(笑)」との回答。両角監督は「優勝のゴールテープを切りたいんで、名取と入れ替わったらそうなれるのかな?(笑)」。大八木監督も「ゴールテープを切ったことがないんで、やるんだったら8区を走る選手かな」と回答。増田さんからの質問はいつも変化球、監督たちにも困惑と笑いをもたらした。
3強以外も強い、はたして優勝のゆくえは?
続いての質問は「今年は1年生に非常に勢いがあるが、例年のルーキーと何が違いますか?」。大八木監督は「昔と違ってスピードがすでにあるところに、大学に入ってスタミナ型の練習をして実力がついてきているのでは」。原監督も同意しつつも、「駅伝界が魅力あるコンテンツになったんじゃないかな」と言う。「サッカーや野球じゃない、駅伝を見てかっこいい。全国の選手や指導者が頑張った結果、身体能力の高い選手が駅伝界に入るというのも要因なのでは」と分析。
両角監督は「自分の学年のライバルを意識するので、三浦くん(龍司、順天堂大1年、洛南)や吉居くん(大和、中央大1年、仙台育英)といった突出した選手がいるので、それに引っ張られるように元気がいいですね」。それから両角監督の佐久長聖高校時代の教え子でもある大迫傑(ナイキ)の存在も口にした。「今の1年生は大迫にすごい憧れていて、ああなりたいという選手が多いです。スピードも強さもある、そこを目指してる学年だなと思います」という。
最後に渡辺康幸さん(住友電工陸上部監督)からの質問は「自分の大学以外で優勝候補はどこ?」。両角監督は「3強と言われている青学、駒澤。絞れと言うと難しいですが、うちも含めて候補であることは間違いない」とコメント。両大学で注目する選手として、駒澤は鈴木、青学は佐藤一世(1年、八千代松陰)の名前をあげた。「鈴木くんは間違いなく将来の大器。駅伝でどうデビューするか見たいですね」
原監督も同様に3強、東海・駒澤の名前を挙げつつも、「明治もいい。東洋は西山くんを7区に置く、これは勝負にきたなと。優勝を狙った区間割ですね」。西山は現状補員だが、原監督の予想は果たして当たるか。
大八木監督もまた「ここにいる3校は当然」としつつ、「東洋、明治も選手層がしっかりしてるので、(優勝候補が)1校ということはない」と戦国駅伝であることを改めて強調した。
果たして3強のうちどこかが頂点をつかむのか、それ以外か。各大学の監督とも「ひとつのミスが取り返しのつかないことになる」と口をそろえ、年々レースがレベルアップしてきていることを感じさせる。選手たちの熱い戦いはまもなく幕を開ける。