陸上・駅伝

特集:第52回全日本大学駅伝

東海大は全日本大学駅伝連覇ならず2位 両角監督「諦めない気持ちで走ってくれた」

2位でのゴールとなり、厳しい表情を見せる名取(すべて撮影・朝日新聞社)

第52回全日本大学駅伝

11月1日@愛知・熱田神宮西門前~三重・伊勢神宮内宮宇治橋前の8区間106.8km
2位 東海大 5時間11分31秒

11月1日の第52回全日本大学駅伝、2連覇を目指していた東海大学は最終8区まで優勝争いを演じたが、アンカーの名取燎太(4年、佐久長聖)が残り1.2kmで離され、23秒差で2位となった。

一時17位まで後退も、2つの区間賞で盛り返す

東海大、青山学院大、駒澤大は今シーズン「3強」と呼ばれ、特に注目されて始まった今回のレース。1区の佐伯陽生(1年、伊賀白鳳)は集団にしっかりとつき、トップと16秒差の7位で襷(たすき)リレー。2区は昨年5区を走った市村朋樹(3年、埼玉栄)だがペースが上がらない。ずるずると後退し17位、トップとは1分45秒の差がついた状態でキャプテンの塩澤稀夕(4年、伊賀白鳳)に襷がわたった。

塩澤は「ライバルに圧倒的な差をつけたい」と語っていたが、正直なところ、この位置でもらうのは予想外だった。攻めの走りを貫き前を追い6人を抜いたが、33分45秒で区間2位の結果に「区間賞に届かなかったし、去年の自分を少し超えるぐらいになってしまったのでまだまだだなと。ライバル視していた青学や駒澤との差が思ったより詰まらなかったので、力不足」ともらした。

塩澤は予想外の位置での襷渡しに「どういう走りをしたらいいかわからなかった」という

2連覇に暗雲。そんな雰囲気を振り払ったのは、4区を走ったルーキーの石原翔太郎(倉敷)だった。力強い走りでぐんぐんと前を追い、5人抜きで6位に。33分16秒と従来の区間記録を32秒も縮める快走で学生駅伝デビューを飾った。石原は走る前に両角速監督から「前との差はだいぶあるので、自分の走りをして気持ちよく走れ」と言われていた。突っ込んで入り、5kmは13分台、10kmは28分09秒で通過。始めから区間記録の更新を狙っていたといい、「嬉しい結果」と笑顔を見せた。

5区の本間敬大(3年、佐久長聖)は区間4位と粘りの走りを見せ、7位で同学年の長田駿佑(東海大札幌)につなぐと、長田が前年の郡司陽大(東海大~小森コーポレーション)の区間記録を4秒更新する区間賞の走りでついにトップに立った。

7区は「3本柱」の一人、西田壮志(4年、九州学院)。以前より「7区を走り、名取と2人で勝負を決めたい」と言っていたがその通りの区間配置に。しかし23秒差で追ってきた青山学院大の神林勇太(4年、九州学院)に追いつかれ、39秒差をつけられてアンカーの名取につなぐことになった。

アンカー勝負もラストで力及ばず

名取は駒澤大の田澤廉(2年、青森山田)を終始引っ張る形になった。「ラスト勝負になったら分が悪い」と感じていたので、できるだけハイペースでいって早い段階で田澤を引き離したいと考えながら走っていった。9kmで前を行く青山学院大の吉田圭太(4年、世羅)に追いつくと3人で並走。11kmで吉田が離れてからは、田澤との対決になった。2人は同じペースで走り続け、伊勢神宮の鳥居をくぐる。残り1.2kmとなったところで田澤がスパートし猛烈にスピードを上げると、名取はついていけなかった。

名取は早い段階で田澤を引き離したいと考えていたが、田澤の力があり離れなかった

「(スパートに)備えてはいたんですが、想像以上に足が動かなくてついていけなかったです。引っ張っていたというのを言い訳にしてはいけないんですが、わりと風が強かったのもあって消耗してしまったのが後半にも響いてしまったのがあります」。昨年は笑顔で切ったゴールテープをうつむいた顔で切ることになり、「勝ちきれなかったのは自分の力のなさ」と口にした。

「諦めない」を体現した走りをしてくれた

一時期圏外になったと思われてからの、最終区間での優勝争い。両角監督にあえて勝ちきれなかった要因をたずねてみると「監督の力量の差じゃないですかね」と笑いながら冗談めかして返された。そして「本当に学生はよく走ってくれましたし、この状況下で力をつけてきてくれました。諦めないことが一番、それを今日の走りでもやってくれたことが一番の収穫ですね」と選手たちをねぎらった。

「黄金世代」と呼ばれた現社会人1年生が抜け、今回の駅伝では8人中4人が大学駅伝デビューとなるメンバー構成で臨んだ。他大学でも今年は1年生の起用も多く、両角監督は「チームの世代交代が同時にあったような状況での戦いになった」と表現した。「最後正直勝ちたかったのはあるんですが、メンバーが大きく入れ替わった中ではよく戦えたなと思います」。そして区間賞を獲得した石原には「期待以上の走り」、長田には「よく力をつけてきてくれたなと思う」と健闘をたたえた。

区間新記録で区間賞を獲得したルーキーの石原。今後の走りも楽しみだ

今の東海大は塩澤、名取、西田の3人が「3本柱」として競技でも精神面でもチームの支柱になっている。3人もそれぞれ「3人がエース」といい、良きライバルとして仲間として支え合ってきた。その姿を見ている石原も「本当に大きな存在で、追いかける目標にしている」と口にしていた。箱根まであと2カ月。変わらず3本柱を中心に、東海大は諦めない気持ちで頂点を目指して走り続ける。

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