陸上・駅伝

特集:第52回全日本大学駅伝

東海大・西田壮志 最終学年は「どうしても優勝したい」強い気持ちで臨む

昨年の全日本大学駅伝4区での西田。快走し、区間賞を獲得した(撮影・藤井みさ)

2年連続で箱根駅伝の5区を走り、「山の男」という印象が強い西田壮志(たけし、4年、九州学院)。しかし昨年は全日本大学駅伝4区で好走し、「平地でもいける」というところを見せつけた。改めて昨年を振り返ってもらい、今年をどんな年にしたいかを聞いてみた。

東海大・名取燎太 チームを引っ張る自覚、今年も笑顔でゴールテープを切りたい

必死で練習も「パッとしない結果で終わってしまった」

合宿中の取材となったこの日。「去年が一番自分的には練習も積めてて調子も良かったんですが、今年は調子悪いなりには走れてるなと思います」と現状を口にした。

昨年度、西田は「箱根駅伝でどうしても優勝したい」という思いで練習に取り組んだ。夏合宿も今まで以上にとにかく走り込んだ。しかし「夏に頑張った成果は出てると思うんですが、結果に結びつかなくて……パッとしない結果で終わってしまいました」と振り返る。

必死で練習した結果、自身初出場となった出雲駅伝ではアンカーの6区で区間2位(総合4位)、全日本大学駅伝は4区で区間賞。「2年生のときに初めて全日本を走って区間3位だったんですけど、トップの塩尻さん(和也、順天堂大~富士通)と林さん(奎介、青山学院大~GMOアスリーツ)には全然歯が立たなくて。その後箱根で5区2位を取って、褒められるのかなと思ったら世間から『山しか走れない』って書かれて……それが悔しくて、3年生では平地でも頑張ってやろうと思ったんです」と苦笑いを交えて思い返す。「全日本はすごくうまくいって、調子もよかったです」

箱根駅伝まで必死で練習したが、最後の1週間でボロボロになってしまったと振り返る(撮影・佐伯航平)

有言実行の区間賞のあと、2連覇を目指して臨んだ箱根駅伝。実はレースの1週間前に体調を崩してしまったという。「復調したあとに練習をしたら詰め込みすぎて足を故障してしまって、その1週間で全部ボロボロになってしまいました。レースもお話になりませんでした」

正直なところ、両角速(はやし)監督に「出たくない」とも訴えたという。しかし「お前しか準備している人はいないんだぞ」と言われ、当時の4年生たちからも「他の人が走るぐらいならお前が走ってほしい」と背中を押された。「そこまでして背中を押してもらったんですが、スタートラインに立ったら体が動かなかったです。本当に申し訳ないです」

箱根駅伝のあとはメンタル面をやられてしまい、一時「走りたくない」という状態まで落ち込んだ。しかし両角監督との個人面談で、「悔しい思いをしたからこそ、最後の年に誰も破れないぐらいの記録を残そう」と確認し合い、リベンジをしようとまた立ち上がれた。

目標を達成しないと卒業できない

緊急事態宣言が発令し、学内のグラウンドが使えない期間も西田は寮に残った。「いつものように集団ジョグはできないけど、各自のジョグで追い込めました。ポイント練習でも名取燎太(4年、佐久長聖)など競り合うメンバーがいたので、不自由なく練習ができていた、という。一方、生活空間を整えたり、寮のご飯のありがたさを感じたりと、私生活の大切さを改めて感じ、見つめ直すきっかけにもなった時間でもあった。

4年生になって変わったことを聞いてみると、「チームのことを考えるようになりました」と答えた。「去年はただ走ってればいい、自分の練習に集中してればいい、と思っていました。今は下のチームの練習状況を気にしたりだとか、ポイント練習でも下級生で離れた人の背中を推してあげたりするようになりました」。そして意思を込めた言葉で「どうしても優勝したい! という気持ちが強くなりました。チーム全体で優勝への意識を高めていって、目標を達成しないと卒業できないなと強く思います」と言い切る。

「どうしても優勝したい」。ムードメーカーの西田がその気持地になっていることは大きいと両角監督も言う(撮影・藤井みさ)

同学年で主将の塩澤稀夕(きせき、伊賀白鳳)と名取の存在は西田にとってとても大きい。「高校時代から知っていて、2人が東海大学に入るとわかっていたので都大路での1区はどうしても負けたくなかったんです。でも負けて区間3位になって……。大学でも負けたくないという気持ちでやってきて、あの2人がいるから今ここまで来られて強くなっている、というのはあります」

夏合宿後のレースは9月27日の東海大記録会10000mとなった。「名取と一緒にタイムを狙うつもり」と話してくれたとおり、2人とも自己ベストを更新。西田は従来の28分58秒15から28分37秒37と、20秒以上もタイムを縮めた。

故郷の応援を力に変えて走る

全日本大学駅伝はどこを走りたい? と聞いてみると「7区に絞って勝負したい」とすでに気持ちは固まっているようだ。「アンカーは名取に任せて、それまでにどんな差があったとしてもその2区間で爆発力を発揮して、ひっくり返したいです」。そして「自分の順位でチームの順位が決まる、という気持ちでやっていきたい」と責任感をにじませる。

将来は服部勇馬のような、強いマラソンランナーになっていきたいという(撮影・藤井みさ)

熊本県八代市出身の西田の故郷は、7月の豪雨で大きな被害を受けた。友人の家が流されて心配して連絡すると、友人のお父さんが「壮志が元気に走ってくれたら俺たちも元気になる」と言ってくれた。昨年全日本で区間賞を取ったときも、テレビの前で地元のおじいちゃんおばあちゃんが泣きながら喜んでくれた。「テレビの前でみんなが見てくれてるって思いながら走ります」。故郷の応援も力に変えて、西田はラストイヤーを駆け抜ける。

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