陸上・駅伝

早稲田大・井川龍人、学内3人目の27分台にも満足しない 「勝ちきる強さ」で優勝を

井川(3番)は27分59秒74と自己ベストを12秒も更新する走りを見せた (c)IUAUJ

日本学連10000m記録会

4月10日@日本体育大学横浜・健志台キャンパス陸上競技場
1着 牟田祐樹(日立物流) 27分57秒15
2着 井川龍人(早稲田大学)27分59秒74

日本学連10000m記録会が4月10日に行われ、早稲田大学の井川龍人(3年、九州学院)が27分59秒74をマークし、同記録会で学生トップを飾った。当初はワールドユニバーシティゲームズ(旧ユニバーシアード)の選考会として開催される予定だったが、大会の延期により選考会の冠が外れた。直前での変更だったが、「27分台を出すことをすごく意識していたので、そこまでモチベーションの低下はありませんでした」と井川は振り返る。

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ラスト1周、体中から元気がみなぎった

井川には27分台という目標はあったが、レースプランは大雑把にしか考えていなかった。「しっかり先頭についていく。ラストスパートには自信があったので、ラストで勝負すれば結果としていい順位で帰ってこられると思っていました」。その先頭に見すえていたのは先輩の姿だ。早稲田大からは井川の他に、中谷雄飛(4年、佐久長聖)と太田直希(4年、浜松日体)がエントリー。ふたりは昨年12月の日本選手権10000mで中谷が27分54秒06、太田が27分55秒59とともに27分台をマークしている。27分台を目指すのであれば、このふたりとの勝負にもなることもイメージしていた。

レースは大きな集団で進み、最初の1000mは2分48秒を刻んだ。井川は集団の後方ではあったが焦りはなく、ペースを維持しながらじわじわと前に詰めていければいいと考えていた。スタートから前に出て走るのが苦手だからこそ、自分の強みであるラスト勝負に備え、できるだけ足を使わずに自分のペースを守る。ひとりまたひとりと抜いて順位をあげていったが、ラスト2周で足が止まってしまった。

前の走者から離されているのを感じながらラスト1周へ。電光掲示板を見ると27分00秒を示していた。60秒以内に戻ってこられたら27分台でゴールできる。そう思うと体中に元気がみなぎり、先行する選手たちの背中を追いかけた。 最後に牟田祐樹(日立物流)だけは抜けなかったが、3着以下と僅差で2着を勝ちとり、27分59秒74と従来の自己ベスト(28分12秒13)を大幅に更新した。

先輩の太田(2番)と一緒に走れる久しぶりのレースでもあった (c)IUAUJ

早稲田大としては歴代7人目となる27分台であり、同一の大学チームによる27分台3人は史上初のこと。特に中谷や太田も出走していた中での結果は自信になったのではとたずねても、「今回はあくまでも記録会だし、そんな一喜一憂している場合ではないかな。おふたりは学生ハーフ(3月14日)も走った後ですし、自分はこのレースに調子を合わせられたというところだと思います」とさらり。昨シーズンを通じて「速さ」だけではなく「強さ」が必要だと痛感したからこそ、現状に甘んじていない。

箱根駅伝で思い描いた「1区の役割」

九州学院では3年連続で全国高校駅伝(都大路)を走り、最後は1区で区間2位。チームは4位だった。初めての箱根駅伝でも1区を希望していたが3区にまわり、区間14位と苦しんだ。昨年12月、自身2度目の箱根駅伝を前にして全体ミーティングで意気込みを求められ、「1区でいいですか」と控えめに希望を伝えたという。結局、1区に決まったのはレースの直前だった。

スピードレースになると予想されていた中、1区の最初の1kmは3分30秒程度と超スローペースだった。井川自身も「誰が出るんだろう」とやきもきしていたという。「次の選手が走りやすい流れをつくるのが1区の役割。1位で襷(たすき)を渡しても後ろとの差がなかったら走りにくいし、3位だとしても前の走者と差がなければ走りやすいですから」。周りの選手の動きを気にしながらとにかくついていき、最後にどうやって次の走者につなげられるかを考えていた。ラスト3km、六郷橋の下りで法政大学の鎌田航生(4年、法政二)がスパートをかけたことでレースが動き、井川も食らいつく。最後はトップの鎌田と17秒差、3~6位は集団での襷リレーとなり、その中で井川は5位で襷をつないだ。区間賞を狙っていただけに、井川にとっては悔しさが残るレースだった。

想定外のスローペースで始まったが、井川(右から2人目)はラストで勝負しようと考えていた(代表撮影)

早稲田大は往路11位から追い上げ、最後は総合6位でゴールした。5000mや10000mで多くの選手が好記録をマークしていた中での箱根駅伝で、井川も「総合3位以内」も十分狙えると思っていた。しかしレースを振り返り、「結果を見ると速いだけのチーム。まだ強さがなかったのかな」と課題を感じた。

熊本県記録を全部塗り替えたい

千明(ちぎら)龍之佑(4年、東農大二)が主将になった新チームは、大迫傑(ナイキ)が1年生だった2011年度以来となる「学生駅伝3冠」を目標にすえた。井川も「今年はチャンス。みんなで意識してやっていければ全然狙える」と意気込む。3年生になり上級生と呼ばれるようになった今、自分が果たすべき役割を強く感じている。「僕はあまり口うるさく言うようなタイプではないんで、1年生だった時にキャプテンだった太田さん(智樹、トヨタ自動車)のように背中で引っ張る選手になって、練習でも積極的に前を走り、みんなに目指してもらえるような選手になりたいです」

今年の箱根駅伝が終わった直後、右の膝下と左の足首に痛みが出てしまい、みんなが走り込んでいた1~2月はほぼ走れなかった。当初は井川も学生ハーフに出る予定だったが、その先を見すえ、3月は焦らずジョグからを始めようと切り替えた。結果、1カ月で700km程度走り込み、今回の10000m記録会へとつなげられた。「正直、(10000m記録会に)間に合うかどうかすごく微妙でした。でも実際走ってみて、なんとか間に合ったのかなという感じでした」

このレースでは熊本県記録も意識していた。3月28日の記録会で井川は3000mに出走し、8分07秒34の自己ベストをマークしている。周りから「熊本県記録(8分10秒96)を更新しているのでは?」と言われ、「だったら長距離種目の記録を全部塗り替えたい」と思うようになったという。10000mは1986年(昭和61年)に西本一也さんが記録した28分09秒40だった。10000mの記録を約34年半ぶりに塗り替え、次に狙うのは5000m(現記録は13分39秒47)。5月4日のゴールデンゲームズinのべおかで5000mに出走を予定しており、そこで13分30秒前後の記録を目指しているが、その前日の日本選手権10000mに出場できるようになれば、10000mで更なる記録を目指す。

5000mも自己ベスト(13分45秒30)の更新とともに、熊本県記録の更新を狙っている (c)IUAUJ

目指すタイムこそあるが、今シーズンの狙いは「勝ちきる強さ」。大学に進んでからはまだ優勝を経験していない。だからこそトラックでも駅伝でも、負けない選手になりたい。高校時代から中谷は立ちはだかる壁だった。そんな中谷に日々の練習から挑める今の環境は、井川に多くの刺激をもたらしてくれている。

「学生駅伝3冠」を目指すチームにおいて、井川は欠かせないピースだ。ここからの成長が早稲田大の強さをより強固なものにしてくれるだろう。

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