陸上・駅伝

特集:第100回関東学生陸上競技対校選手権

明治・鈴木聖人 関東インカレ2種目入賞も「まだまだ弱い」、伊藤達彦のような走りを

鈴木(44番)は勝ち切るため、留学生に挑むと決めていた(撮影・藤井みさ)

第100回関東学生陸上競技対校選手権

5月20~23日@相模原ギオンスタジアム
鈴木聖人(明治大4年)
男子2部10000m 4位 28分09秒24(自己ベスト)
男子2部5000m 5位 13分56秒21

明治大学主将の鈴木聖人(きよと、4年、水城)は関東インカレに男子2部5000mと10000mにエントリーし、初日の10000mでは28分09秒24の自己ベストで4位、最終日の5000mでも13分56秒21で5位と結果を残したが、口をついて出てきた言葉は「まだまだ弱い」。日本人トップをとれず、悔しさをかみしめた。

明治大・鈴木聖人 ラストイヤーは箱根駅伝を勝ちきる「強さ」を主将の走りで見せたい

10000mは手嶋と引っ張り、勝負

明治大は今年の箱根駅伝で総合優勝を目標に掲げていたが、総合11位でシード権を逃した。「確かに10000mの記録では(今年の箱根駅伝の)各区間の上位だった選手も明治にはいたのに、流れを変えるような強さが足りないと感じました」と鈴木。速さだけではなく強さを求め、ラストイヤーは主将として勝ちきる強さをチーム内外に示したい。関東インカレは絶好の舞台だった。

初日の10000mは雨の中でのレースとなった。スタートしてからほどなくイェゴン・ヴィンセント(東京国際大3年)が先頭に立ち、留学生たちが先頭集団を形成。第2集団はジョセフ・ラジニ(拓殖大3年)を先頭に、その後ろに鈴木や手嶋杏丞(きょうすけ、明治大4年、宮崎日大)がつく。レースに前に2人は「一緒に引っ張り合おう」と話していたこともあり、予定通りの展開だった。明治大として得点を稼ぐため、手で合図しながら互いに協力。それでも最後はライバルとして勝負しようと決めていた。

鈴木はこれまで、体の大きさで当たり負けする懸念から、序盤に前の方で勝負できずにいたという。しかし今回は「勝ち切る」と決めたからこそ、留学生に挑みながらレースを進めた。5000mあたりで集団はラジニと鈴木、手嶋、唐澤拓海(駒澤大2年、花咲徳栄)、藤木宏太(國學院大4年、北海道栄)の5人に絞られ、そのまま周を重ねる。

ラスト1周で唐澤(31番)に離された

ラスト2周になった瞬間、鈴木がラジニの前に出て集団を引き離す。しかし唐澤についてこられ、ラスト1周で前に出られた。唐澤との差が開き、後ろからは藤木が迫っていたが、最後は逃げ切ってフィニッシュ。日本人2位での4位だった。今回は勝負にこだわっていたためタイムは特に気にしていなかったが、28分09秒24は自己ベストだった。

5000mも最後で勝ち切れなかった

中2日を挟んでの最終日には5000mに出走。疲労はあったが、10000mで敗れた唐澤へのリベンジを胸にスタートした。10000mを制したヴィンセントが先頭に立ったのは1000mを過ぎたあたりから。その後ろに留学生が続き、鈴木はその後ろにぴったりとマーク。ヴィンセントがひとり抜けた時、鈴木もついていくか悩んだが、力の差から萎縮してしまった。

ラスト4周でも第2集団は10人ほど。ラスト3周でノア・キプリモ(日本薬科大3年)が第2集団の先頭に立つと唐澤が続き、鈴木はその後ろについた。第2集団の後方に位置取りしていた鈴木芽吹(駒澤大2年、佐久長聖) が加速し、鈴木聖人の後ろにつく。ラスト1周、最初に鈴木聖人が動く。その後ろに鈴木芽吹、唐澤の順で続いていたが、鈴木聖人は2人につかまり、そのままゴール。ラスト勝負を制した唐澤が3位、敗れた鈴木芽吹が4位、そして鈴木聖人が5位だった。

「最後、気持ちで離されてしまいましたね。(唐澤に負けた)10000mの借りを返そうと、前に出て離してやろうと思っていたんですけど、最後に勝ちきれず、諦めかけてしまったのがやっぱり自分の弱さだなと思いました」

5000mは唐澤(右)と鈴木芽吹(左)との勝負になると鈴木も予想していた(撮影・藤井みさ)

明治大は2019年の関東インカレで2部に降格した。昨年の関東インカレは新型コロナウイルスの影響で10、11月に延期して開催されたが、対校戦は実施されなかった。今大会は1部に復帰するために、1点でも多く稼がないといけなかった。「8位入賞じゃ意味がない。僕たちは普段、駅伝を応援してもらっているんで、自分たちが1点でも多く稼がないといけないと思っていました」と鈴木。チームに2種目で9点をあげられたことには安堵(あんど)しているが、個人としては満足できるレースではなかった。ただそれでも、積極的にレースを進められたことや、10000mで自己ベストと5000mで13分台をマークできたことで、自分の成長を感じられたという。

主将として周りに目を向け、まずは自分が実践する

鈴木は主将になってからはより周りを見るように意識しており、それまで気がつかなかったことも見えるようになったという。「挨拶(あいさつ)とか、本当に当たり前のことです。例えば朝練で挨拶の声が小さいとか、元気がないとか、やる気がなさそうな雰囲気が見えたら、見て見ぬ振りをしない。選手一人ひとりと向き合うようにしています」。仲間に伝えていくためにも、まずは自分が実践していき、背中を見せることを心がけている。

鈴木と手嶋は下級生だった時からチームの主力として活躍しており、ラストイヤーの今年は鈴木が主将、手嶋が副将となってチームを支えている。鈴木は今年3月14日、箱根駅伝予選会場でもある立川駐屯地内で行われた学生ハーフは、けが明けだったこともあって65分00での34位と苦しんだ。「あれがいい意味で『このままじゃダメだ』と思えたきっかけでした」と言い、そこから気持ちを切り替え、練習を積んできた。

後輩たちの存在も大きい。関東インカレ開幕を飾ったハーフマラソンでは、小澤大輝(3年、韮山)が62分33秒をマークして5位入賞を果たしている。「小澤の走りで僕も刺激をもらいました。自分と手嶋が下級生に刺激を与えて、下級生が追いつこうといい意味で燃えている選手が多いです」。練習から一人ひとりが泥臭く、がむしゃらに。鈴木がイメージするのは10000mで東京オリンピック内定をつかんだ伊藤達彦(ホンダ)のような走り。諦めることなく、最後まで出し切る。「伊藤さんみたいな走りを求めていけば、自然とチームは強くなるのかなと思っています。それをまずは自分が見せていきたいです」

勝ち切れなかったこの悔しさは、次の勝利のために(撮影・松永早弥香)

求めているのは速さ+強さ、勝ち切る走り。「今回、駒澤の選手に勝てなかったので、まだまだ、まだまだだな。強さが足りないと改めて感じました」。自分に矢印を向け、貪欲(どんよく)にチームを押し上げる。




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