明治大・手嶋杏丞 インカレで手応えつかみ、攻めの走りで目指す全日本1区区間賞
9月11日の日本インカレ10000mで、明治大学の手嶋杏丞(きょうすけ、3年、宮崎日大)は29分02秒30をマークしての8位(日本人5位)だった。夏合宿の最中にあったレースということもあり、日本インカレに向けては数日前に少し調整をしたのみ。疲労が抜け切れていなかったが、「自信を持ってスタートラインに立てました。レースでも積極的に走ってまとめられたのでよかったのかな」と振り返る。
コロナ禍、ぶれない走りを目指して体幹強化
レースは当初、レダマ・キサイサが引っ張る留学生の集団に、田澤廉(駒澤大2年、青森山田)と塩澤稀夕(東海大4年、伊賀白鳳)、そして手嶋が食らいつくという展開だった。4000m過ぎで留学生と田澤のトップ集団から塩澤と手嶋が遅れ始め、その後、手嶋は藤木宏太(國學院大3年、北海道栄)と西山和弥(4年、東農大第二)に抜かれたものの、最後まで粘った。
今大会ではタイムよりも勝負に徹しつつ、あわよくば28分台も狙っていた。記録は2秒30届かなかったが、「状態としては6~7割程度。まだ上がりきってなくて、まだどんどん上がっていく段階でのレースだったので」と、現状での走りとしてはまずまずの手応えを感じている。
手嶋はこれまでトラックシーズンに結果を残せていなかったこともあり、今年は5月の関東インカレで結果を出し、その勢いで夏合宿でさらに力をつけていこうと考えていた。しかし新型コロナウイルスの影響で、4~6月の約2カ月は各自での練習に切り替わった。ほとんどの選手が寮を離れて帰省した中、手嶋は寮に残った。
大学のグラウンドは使えなかったため、早朝の人がいない時間帯にロードを走るという程度。世の中の流れを見て、「前半シーズンは関東インカレも含めて試合は絶対ない」というのは想像できていた。せめてこの期間だからこそできることをしようと考え、後半でもぶれない走りを目指し、普段はしていなかったウエイトトレーニングや体幹トレーニングなどを徹底的にこなしてきた。6月になって集団でのポイント練習ができるようになってからは、このメンバーで戦っていくという気持ちを改めて高められたという。
昨シーズン、箱根駅伝予選会で大活躍するも……
北海道と長野での合宿を終え、チームはいよいよ駅伝シーズンに突入する。昨年、明治大は箱根駅伝予選会の翌週に全日本大学駅伝を走るという過密スケジュールだった。
手嶋はその予選会で一時、日本人トップに立つ積極的な走りを見せ、1時間3分28秒の記録で9位(日本人4位)とチームに貢献。明治大は4位で予選会を突破した。しかしその翌週の全日本大学駅伝で手嶋は2区区間16位。5位で襷(たすき)を託されるも、14位に沈んでしまった。「予選会で出し切ってしまって……。疲労もだいぶあり、いいイメージが湧かない中で走ってしまいました。スタートラインから弱気なところがあったので、やっぱり力をつけないといけないと改めて思い知らされました」
その一方で箱根駅伝では3区区間7位、12位だった順位を7位に引き上げ、シード権を目指していたチームに流れをもたらす走りを見せた。山本佑樹監督から「お前に合っていると思う」と言われていた3区だったが、自分でも「勝負できる」と感じながら挑めたレースだった。
阿部弘輝が抜けた今年、全員の走力アップでさらに上へ
昨シーズンを振り返ると、パフォーマンスの波が激しい傾向があった。だからこそ今シーズンはすべてにおいて外さない走りができるよう、自分の持ち味である積極的な走りにラストのスピード強化を意識して練習に取り組んでいる。
リベンジとなる今年の全日本大学駅伝では、1区で勝負したいと考えている。「自分の攻めの走りでどこまでトップ争いができるのか。1区は区間順位が分かりやすいし、競り合いでは負けられないし、そういうのも面白そうだなって」。どんな相手にもひるまず勝負できる積極性で、区間賞を狙う。
昨シーズンのチームを支えてきた阿部弘輝(現・住友電工)が抜けた大きさを、明治大チームも理解している。それでも手嶋は、「でも全員の走力は上がっていると思うんで、自分の走りに集中してやることをやっていけば去年のタイムは超えられる」と言い切る。
チームは全日本大学駅伝でシード圏内(8位以上)、箱根駅伝で5位以上を目標にしている。「10000mで日本選手権の標準を切って、駅伝では区間賞を取ってから卒業したい」と考えている手嶋はもちろん、今年も区間賞を狙っている。