大学陸上・駅伝

特集:第96回箱根駅伝

明治大、下級生の活躍で予選会4位通過 本気で狙う箱根駅伝シード権

果敢な攻めの走りで一時日本人トップに立った手嶋(撮影・小野口健太)

第96回東京箱根間往復大学駅伝競走予選会

10月26日@東京・陸上自衛隊立川駐屯地~立川市街地~国営昭和記念公園
4位 明治大学 10時間51分42秒

4年連続で挑み、2年前には涙に暮れた順位発表の瞬間も、選手たちは冷静だった。10月26日にあった箱根駅伝予選会。4位での2年連続の本戦出場権獲得を静かに喜んだのは、明治大が本番でのシード権獲得を本気で見据えているからこそだった。

前日にふとよぎった「ヤバいな」

山本佑樹監督も少しほほを緩めた程度だったが、「昨日の夜にこのメンバーを見て、ふと『ヤバイな』と思いました」とポツリ。その表情の裏には、一抹の不安もあったという。

出場者に名を連ねる4年生は2人のみ。主将にして大エースの阿部弘輝(4年、学法石川)は、「集団走を引っ張る役くらいならできる感じ」(山本監督)まで戻ったものの、けがのために夏合宿前から離脱している。実力者の中島大就(4年、世羅)も回復が思わしくなく、佐々木大輔(4年、八千代松陰)も出走しない。三輪軌道(4年、愛知)の状態はさほど悪くなかったというが「(11月3日の)全日本(大学駅伝)にアンカーでいこうかなと、僕の欲が出た」と山本監督は温存を選択。決断は下したものの、改めてメンバーを見直すと「(10000m走で)27~28分台を出すチームの上から4人を使わない」という事実に不安がよぎったのも無理はない。

不安を吹き飛ばす下級生の快走

そんな監督の思いを杞憂に変えたのが、勢いのある下級生だった。特に出色の出来だったのが、手嶋杏丞(きょうすけ、2年、宮崎日大)だ。予想通りにスタートからケニア人留学生がトップ集団を形成したが、5km地点で14分40秒と、日本人選手のトップ集団に食らいついていった。この日走った11人のメンバーのうち、集団走は8人。フリーで走った3人の中の1人として攻めの姿勢を見せた。

阿部(左から2番め)は手嶋の快走をねぎらった(撮影・杉山孝)

7kmを過ぎようかというころには、手嶋が1人抜け出した。その展開は長くは続かなかったものの、東京国際大のエース、伊藤達彦(4年、浜松商)と抜きつ抜かれつしながら激しく日本人トップを争った。「リズムで走るタイプなので、伊藤さんを気にせず走っていました」という手嶋だが、ユニバーシアードのハーフマラソン銅メダリストとの勝負に「後半は勝ちたいという気持ちがありました」と火がついた。徐々に離されたものの、全体で9位、日本人選手では4番目でフィニッシュした。トップ10に入った選手で、手嶋以外は留学生か4年生。胸を張っていい結果だった。

「負けたくない」悔しい思いで成長した手嶋

手嶋の走りに、山本監督は「練習をパーフェクトにやってたので、こういう走りはしてくれるだろうと自信を持って送り出しました」と想定内だったことを明かした。手嶋本人も「思ったよりも走れましたけど、狙ったタイムよりも遅かったので、そこは反省したいと思います」と浮かれる様子はない。「17km地点のあたりで伊藤さんに離されて他大学のエースとの差が感じられたので、あと2、3カ月練習を積んで、そのレベルに達するように気を引き締めて頑張りたいと思います」と新たな目標を体に刻んだ。

箱根路を笑顔で走り抜くため、チームは前進し続ける(撮影・杉山孝)

危機感は、自らを奮い立たせ成長するチャンスでもある。手嶋は昨年の箱根駅伝で、1年生ながら登録メンバーに入りはしたが、本番の舞台には立てなかった。一方で、同期の鈴木聖人(2年、水城)は1区を走っている。「鈴木はしっかりと1年目から走って結果を残してるので、それを見て『負けたくない』という気持ちが強く、悔しい思いを忘れずにずっと練習してきました」。特に夏合宿では、とにかく多くの距離を走ったという。

エース阿倍の不在をチャンスに変えて

奮起する理由は他にもあった。膝から連鎖するように、腰、股関節とけがが続いた阿部を完全に休ませて回復させることを山本監督は夏合宿前に決めていた。その発表に手嶋は「阿部さんが走れないということは分かってたので、その分を自分が埋めたいという気持ちが強かった」。まさに、阿部の離脱に「それをどう取るのか。上が抜ければチャンスが回ってきて、それをものにすれば、チームの中での地位も確立できる。考え方次第だよ」と話していた山本監督の期待通りに、選手たちは奮い立った。

さまざまな形でチームに影響を与える阿部本人も、「チームとしては本来走るべき選手が走れなかったという取りこぼしはありますけど、手嶋のような中間層の選手が主力に割って入ってきたことは、チームにとってすごくプラスなこと」と喜ぶ。その一方で「日本人トップ争いをしてくれるだろう」と山本監督から期待を受けていた小袖英人(3年、八戸学院光星)は、脱水症状に苦しんでチーム8位に沈んだ。下級生の突き上げを反発力に変える番だ。

期待されながらも脱水症状に苦しんだ小袖。今後の奮起を期待したい(撮影・小野口健太)

結果発表時の控えめな喜びぶりには、さまざまな思いが入り混じっていたはずだ。何よりも、まだスタートラインに立ったに過ぎない。

「今回、下級生がしっかり走ったことで選手層は厚くなるし、十分にシード権争いができるチーム力はあるかなと思います」と、山本監督は手応えを語る。自信と緊張感の、ほどよいバランスの中で。命題である「本当の」トップ10入りへと歩を進めていく。

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