陸上・駅伝

東海大・飯澤千翔が日本選手権初優勝、世界陸上の参加標準記録の突破は「最低限」

飯澤は日本選手権で初優勝し、喜びを爆発させた(撮影・すべて藤原伸雄)

第106回日本陸上競技選手権大会 男子1500m決勝

6月10日@ヤンマースタジアム長居(大阪)
優勝 飯澤千翔(東海大4年) 3分42秒82

6月9日、日本選手権男子1500m予選を走り終えた東海大学の飯澤千翔(4年、山梨学院)は、翌10日の決勝への目標について自信がなさそうにこう語った。「入賞という結果が妥当かなと思っている。隙があれば3位以内を狙っていければという感じです」。だが決勝では勝負どころで勝ちきり、初優勝。右拳を突き上げ、雄たけびをあげた。

東海大・飯澤千翔、個人選手権1500mで復活示す優勝 3分35秒切りで世界陸上へ

決勝では館澤亨次と荒井七海の動きを見ながら

予選2組目に登場した飯澤は4、5番手付近でレースを進めた。残り1周付近で前に出て仕掛ける。バックストレートで先頭に出たが、その後2人にかわされて3分42秒47の3位で決勝に進んだ。

レース後、飯澤の第1声は「めっちゃきつかったです。マジできつかった……」。予選もトップ通過を狙っていたというが、最後は足が動かなかった。「いつもと同じ1500mと思っていたが、日本選手権の予選は独特な雰囲気があった。うまく調整すれば動くかなと思ったが、予想以上に動かなかった」

そんな不安な気持ちを抱えた中で迎えた翌日の決勝。だが、そこには吹っ切れた飯澤の姿があった。

レースはスローペースで進み、先頭集団には日本記録保持者の河村一輝(トーエネック)らがいた。飯澤は後続で冷静に2人の動きを観察していた。東海大の先輩の館澤亨次(DeNA)と、合宿で練習をともにする荒井七海(ホンダ)だ。残り1周で館澤が仕掛けると、飯澤も反応。内側でもまれる形となったが、するすると抜け出して最後の直線でトップに立つとそのまま逃げ切り、3分42秒82で初優勝をつかんだ。

飯澤(338番)は冷静に流れを見極め、初優勝をつかんだ

「地獄のような思いをした」日々を乗り越えて

日本選手権はこれまで3年前と昨年に出場し、ともに決勝で最下位。「今年は勝ってもほとんど叫んでいなかった。大きな目標のひとつである日本選手権優勝を達成できて、うれしさで自然と叫んでしまいました」

予選で思うような走りができなかった中、決勝で意識したことは何だったのか。飯澤は決勝に向けて「何か取り組んだことはない」とした上で、「ラストまでどのような動きで抜け出していくか練習の時のイメージが湧いた。冷静に対応できた」と、普段の走りを貫いたことを勝因にあげた。

大学1年目は関東インカレで館澤に0.01秒差で競り勝って優勝するなど、今後の活躍が期待されていた。だが2、3年生では故障に苦しみ、「地獄のような思いをした」と振り返る。最終学年になった今季は4月に学生個人選手権を制し、5月の関東インカレでは1年生以来3年ぶりの頂点に。結果を残し続けた。

東海大学陸上部中長距離ブロック全体の主将としても負けられない

飯澤にとって日本選手権優勝は通過点に過ぎない。次に見据えるのは世界だ。7月に米・オレゴン州である世界選手権の参加標準記録(3分35秒00)の突破を22日に開催されるホクレン・ディスタンスチャレンジ深川大会で目指している。

「今季の目標が3分33秒というのは変わらない。深川では最低でも標準突破できるように頑張っていきたいと思います」

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