中央大・金子魅玖人、海外遠征で感じたスピードの違い 日本新記録で世界選手権へ
THE MIDDLE 男子800m
3月29日@駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場(東京)
1着 金子魅玖人(中央大2年)1分49秒19
2着 飯濱友太郎(立教大2年) 1分49秒89
3着 川元奨(スズキ) 1分52秒02
4着 根本大輝(順天堂大4年)1分53秒43
世界選手権(米国・オレゴン、7月)の標準記録突破にチャレンジすることを主旨として、3月29日、中距離特化レース「THE MIDDLE」が開催された。全4レース(U20男子800m、男子800m、女子1500m、男子1500m)が行われ、男子800mでは中央大学の金子魅玖人(みくと、2年、鎌ヶ谷)が1分49秒19で1着だった。ただオーストラリアで連戦した直後のレースということもあり、「あまり体の状態は良くなかった。これからシーズンの中で修正していって、自分が思うタイムに近づけたらいいな」と口にした。新シーズンの目標は世界選手権の標準記録(1分45秒20)の突破。それは日本記録(1分45秒75)への挑戦でもある。
「中距離大国ニッポン」の第一歩
今大会は横田真人さんが代表兼コーチを務めるTWOLAPS TC主催で実施されたが、元々は陸連中距離強化コーチでもある環太平洋大学の吉岡利貢コーチたちの思いが形になったものだ。吉岡コーチは言う。
「でかいことを言うんですけど、『中距離大国ニッポン』をスローガンに掲げ、初っぱなに何をしたらいいかというところからミーティングを始めました。通常であれば、シーズンイン前には現状に合ったレースをすると思うんですが、今の自分を知るという意味で最初にトライする。その姿を皆さんに見てもらうことで、自分たちが求めるレベルを皆さんに知ってもらう。それが一番の目的でした」
世界選手権の標準記録突破を狙い、各レースにはペースランナーが設けられ、その上でU20 800mを除き、各ポイントで集団から離れた場合は自主的にレースを終了すると決められていた。1500mの日本記録保持者で世界選手権の標準記録を突破している田中希実(豊田織機TC/同志社大4年、西脇工)は直前に欠場となったが、800mの日本記録保持者である川元奨(スズキ)や源裕貴(環太平洋大4年、美祢青嶺)らも出走するなど、国内トップレベルの選手がそろった。
ラスト100mで金子がトップへ
800mのレースがスタートすると立教大学の飯濱友太郎(2年、立教新座)が先頭に立ち、金子は川元に次ぐ4番手の位置につけた。1周目は51秒ほどで通過。その時点でも金子は4番手だったが、ラスト300mで川元が前に出ると金子もその後を追う。最後のカーブで飯濱が再び前に出る。飯濱の後ろにつけていた金子は、ラスト100mで一気に前に出るとそのまま逃げ切った。
昨年11月に右足を捻挫した源はまだ完治していなかったものの、今の状況でどこまで走れるかを試すという位置づけでレースに出走。600mまでとなったが、「現状を把握できたので、出遅れているのは分かっていますし、ここからグランプリ(シリーズ)に向けて挑戦していきたいです」と世界選手権を見据えている。
海外レースを転戦し、スピードの違いを実感
金子は今年2月に予定されていたアジア室内選手権で800mの日本代表に内定していたが、新型コロナウイルスの影響で大会は来年2月に延期となった。2022シーズンの幕開けを、3月12日にシドニー・トラック・クラシック800mで1分47秒29での3位、翌週の19日にはメルボルン・トラック・クラシック800mで1分49秒33での7位と、海外での連戦で飾った。「日本とは違い速いペースでのレースを経験できたことは収穫だった」と金子は振り返る。特に1周目のスピードの違いを肌で感じ、その上で後半に切り替えられるようなスピードの強化を課題に挙げた。
今大会で金子はラスト100mで前に出たが、ラスト200mから思うようにスピードを上げられなかったという。それでも「海外レースのような、レベルの高いレースをシーズン前にできたのは良かったな」と言い、ここからスピード練習に取り組み、新シーズンの目標である世界選手権の標準記録の突破、その上で日本選手権(6月9~12日)で世界選手権内定を狙う。
2021シーズン、中央大の長距離は全日本大学駅伝で8位となり10大会ぶりにシード権を獲得、箱根駅伝でも6位で10年ぶりにシード権を獲得した。「自分の大学の選手が頑張っていると自分も頑張ろうと思えるので、駅伝に限らず、(同じ大学の選手の活躍は)自分のプラスになっていると思う」と金子は言う。
4月9日の金栗記念(熊本大会)を皮切りに、日本グランプリシリーズが開幕する。日本歴代3位の金子の記録(1分45秒85)と、川元と源が持つ日本記録との差は0.1秒。その差を埋めるレースを誓う。