陸上・駅伝

特集:第54回全日本大学駅伝

全日本大学駅伝6位の早稲田大 花田勝彦監督「78点」と総括、トップ3は見えている

6位でゴールする早大の佐藤航希(撮影・小玉重隆)

第54回全日本大学駅伝

11月6日@愛知・熱田神宮西門前~三重・伊勢神宮内宮宇治橋前の8区間106.8km
1位 駒澤大   5時間06分47秒(大会新)
2位 國學院大  5時間10分08秒(大会新)
3位 青山学院大 5時間10分45秒(大会新)
4位 順天堂大  5時間10分46秒(大会新)
5位 創価大   5時間12分10秒
6位 早稲田大  5時間12分53秒
7位 中央大   5時間13分03秒
8位 東洋大   5時間13分10秒
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9位 明治大   5時間15分29秒
10位 東海大   5時間16分01秒

全日本大学駅伝3位以内、最低でもシード権獲得を目標にしていた早稲田大学は前回大会に続き6位だった。今年6月に花田勝彦監督が就任、名門の復活を託された。今大会に点数を付けるとしたら「78点」と振り返り、箱根駅伝に向けて収穫と課題を得た。

前半は想定通り、石塚陽士・山口智規が好走

名門・早稲田大学の復活を託された花田勝彦監督にとって、就任後では初の全日本大学駅伝だった。シード権は獲得したが3位以内の目標は果たせず6位。レース全体を「78点です」と総括した。

前半は想定通りの走りで流れをつくった。

1区に投入した間瀬田純平(1年、鳥栖工)は、8月のU20世界陸上(コロンビア)男子1500メートル日本代表で、「ロードも意外と強い」(花田監督)という期待のルーキー。序盤で青山学院大学の目片将大(4年、須磨学園)がロケットスタートし、大東文化大学のピーター・ワンジル(2年、仙台育英)が追いかけた。間瀬田は彼らに続く集団の中でペースを維持した。ラストスパートは中央大学の千守倫央(4年、松山商)、駒澤大学の円健介(4年、倉敷)らに遅れをとりつつも、トップと26秒差の10位で2区の井川龍人(4年、九州学院)に襷(たすき)をつないだ。

井川は10000m27分59秒74とトップレベルの記録を持つエース。ただ10月中旬の箱根予選会の疲労が残っており、懸念材料はあった。さらに2区は駒澤大のスーパールーキー佐藤圭汰(1年、洛南)や世界陸上代表である順天堂大学の三浦龍司(3年、洛南)ら、各校エース級がそろっていた。その中で6位に順位を上げトップと44秒差で襷を渡した。花田監督も「悪いなりにきっちりまとめて力がついてきた。エースらしくなってきた」と称えた。

2区のエース井川龍人(左)から襷を受けた3区の石塚陽士は順位を3位に上げた(撮影・浅野有美)

3区の石塚陽士(2年、早稲田実)と4区の山口智規(1年、学法石川)も好走した。

1500mで高校歴代3位の記録を持つ石塚は当日変更でエントリーされた。花田監督も起用に自信を持っており、その期待に応えるように順位を上げ、区間3位の走りでトップと41秒差の3位につけた。「石塚は安定感がある、リクエスト通り、いまの状態でやることをきっちりやってくれた」と目を細めた。

4区の山口も流れを引き継いだ。10kmすぎで順天堂大の石井一希(3年、八千代松陰)を抜いて2位に。ラストスパートで引き離し、トップと1分1秒差、区間3位で走り切った。将来のエース候補が初の伊勢路で存在感をアピールした。

2位まで追い上げたルーキーの山口智規(撮影・藤井みさ)

不安的中の中盤、最後は伊藤大志と佐藤航希が取り返す

一方、不安が的中したのが5区の小指卓也(4年、学法石川)と、6区の菖蒲敦司(3年、西京)だった。「練習がそこまでできてなかった2人だった。箱根駅伝を考えるとここで使っておきたかった」という。

「小指は前半気負って練習よりもちょっと速くいってしまった」と花田監督。後半はペースが落ち、脇腹を押さえ苦しそうな表情も。区間賞を出した國學院大學の青木瑠郁(1年、健大高崎)に追い越された。一時は青学大の岸本大紀(4年、三条)にも抜かれたが、最後は意地を見せて3位でつないだ。菖蒲について、「ちょっと速めに入ったら思いの外、後ろにかぶせられちゃって、本人はそれがショックで。それでびっくりして、そのあと体が動かなくなってしまった」と明かした。

小指は区間11位、菖蒲は区間15位。7区の伊藤大志(2年、佐久長聖)に襷が渡った時点で8位、トップと3分44秒差が開いていた。

そこから盛り返せるが早大の強さだ。当日変更で投入された伊藤と8区の佐藤航希(3年、宮崎日大)がともに区間5位と力走。伊藤が前を走っていた東洋大学の梅崎蓮(2年、宇和島東)をとらえ、7位で襷をつなぐと、佐藤も中央大学の阿部陽樹(2年、西京)を抜き去り、チームは5時間12分53秒の6位でゴールした。「伊藤と佐藤は、夏から続けて練習できていて、休んでしっかり疲労抜いて、調子が上がっていた。前の2区間のマイナス2分を取り返してくれた」と振り返った。

6区の菖蒲敦司から7区の伊藤大志に襷をつないだ(撮影・佐伯航平)

「想定通りみんな走れていれば3番が見える」

レース前、花田監督は伝えていた。「想定通りみんな走れていれば3番が見える」。そして他の大学の調子次第ではトップに立つ可能性もあると。結局、駒澤大学が隙(すき)のないオーダーで大会新記録、3連覇を果たした。早大は山口が走っていたときの2位が最高順位だった。

「予想では1回トップに立って(全体)4番くらい、実際は(途中)2番で(全体)6番だからちょっと想定より下回った。及第点かな」。よかった前半はもう少しできた部分もあった。そして5、6区が順調であれば(全体)3位も見えていた。総括すると「78点」と評価した。

早大の監督になって初の全日本大学駅伝だった。「楽しい5時間でした。監督として選手と喜びながらやるのはすごくワクワクしますし、ちょっとハラハラもしましたけど、すごくいいなと思いました」

来年1月の箱根駅伝は2区間が加わり10区間の勝負となる。今回走らなかった鈴木創士(4年、浜松日体)や辻文哉(3年、早稲田実)、菅野雄太(2年、西武文理)、伊福陽太(2年、洛南)らがメンバー入りをうかがう。「きっちり10区間、自分たちがリクエストされた通りの仕事ができたら間違いなくシードがとれる」と花田監督は自信をのぞかせる。

主将の鈴木に対しては「夏以降は背中でチームを引っ張ってきた」と信頼を寄せる。箱根予選会の疲労などもあり、今大会は無理をさせなかった。全日本大学駅伝、箱根駅伝はフル出場しており、鈴木本人は出場を希望していたが、「キャプテンとしてチームをまとめてほしい」という監督の意図を理解し、今回はサポートに徹した。

ゴール後、チームメートから出迎えを受ける佐藤(撮影・長島一浩)

今後に向けて花田監督は、「11月に足づくりやスタミナづくりをして、12月の試合に向けたところで実践的な練習をしようと考えています。けがして走れない選手はほぼいないので、そういう状態を最後まで続けたいと思います」と語った。

3週間前の箱根駅伝予選会をへて、シード権を獲得したのは早大のみ。疲労が残り調整が難しい中で、想定通りの走りをした選手たち、今回は調子を合わせられなかった選手たちも含めて、さらにレベルアップができるチームだ。

「常に優勝を目指す」チームづくりを掲げる花田監督。階段を上り始めたばかりだが、トップ3は手が届くところにあると言えるだろう。名門復活へ、チームが築いていく道を追いかけたい。

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