陸上・駅伝

早稲田大・花田勝彦監督、常に優勝を目指すチームとして 核となる選手が背中を見せる

早稲田大は花田新監督のもと、再スタートを切った(撮影・松永早弥香)

花田勝彦さんが早稲田大学競走部の駅伝監督に就任したのが6月1日。4月下旬からチームの状況を見ていたが、当時の印象を「チームがバラバラになっていた」と振り返る。「早稲田大学は常に優勝を目指すようなチームです」と花田監督は言い切り、10月15日の箱根駅伝予選会ではトップ通過、最低でも3位に入り、その勢いを続く全日本大学駅伝につなげたい。

早稲田大・花田勝彦新監督「選手自身が誇りを持てる指導を」世界という伝統を引き継ぎ

トラックシーズンは「及第点をつけられる結果」

トラックシーズンを振り返ると、5月の関東インカレでは男子1部1500mで菖蒲敦司(3年、西京)が3位、10000mで井川龍人(4年、九州学院)が2位、3000m障害(SC)で菖蒲が1位で北村光(3年、樹徳)が6位という成績を残している。6月のホクレン・ディスタンスチャレンジ深川大会10000mで井川は28分15秒95の4位(日本人2位)。7月には菖蒲がスタンプタウン・トワイライト(アメリカ・オレゴン)に出場し、1500mで3分45秒41の自己ベストをマークしている。

8月には間瀬田純平(1年、鳥栖工)がU20世界陸上(コロンビア・カリ)に1500mで出場。自身初の海外レースは予選10着だった。慣れない環境で実力通りの結果を出す難しさを痛感したという。

そんなトラックシーズンを総括すると、ケガ人が続出した昨シーズンに比べ、花田監督は「及第点をつけられる結果」と評価している。

間瀬田(先頭)は関東インカレ1500m決勝でも積極的なレースを見せた(撮影・藤井みさ)

花田監督は前監督の相楽豊さん(現・チーム戦略アドバイザー)から引き継いですぐ、それまでの練習を白紙にし、強度を落とした練習に切り替えた。学生一人ひとりの実力や状況を見極めた上で、学生たちが目指しているものを把握し、そのためにどんな練習が必要なのかを学生自身に考えさせるためだ。目標は「学生駅伝二冠」。今のチーム力を考えると、まだ先にある目標だと花田監督は感じたが、「やるからには勝つという目標を持つことは大事なことですし、否定はしません。そのために4年生が背中を見せ、次の世代に流れをつなげてほしいです」と学生たちの思いを尊重している。

だからこそ、花田監督はポイント練習など全員で取り組むメニューの強度を再び上げた。加えて、練習中は厚底シューズを禁止した。主将の鈴木創士(4年、浜松日体)は昨シーズン、ケガに悩まされていたこともあり、厚底シューズに頼らない体作りの必要性を感じていたという。同じ練習をしていても、厚底シューズの時よりも負荷を感じており、質の高い練習ができていることを実感している。

瀬古さん「これが予選会のチームだな」

過去2年はコロナ禍で夏合宿に制限があり、学内の所沢も加えたスケジュールだった。だが今年は例年通りの夏合宿ができている。コロナ禍の前までは菅平(長野)と妙高(新潟)を経てもう一地域だったが、今年は花田監督が上武大学の監督をしていた頃の経験も踏まえ、尾瀬(群馬)、妙高、紋別(北海道)というスケジュールを組んだ。

「今年は3年ぶりに箱根駅伝予選会に挑みます。市街地から昭和記念公園内というコースで、後半はアップダウンがありますから、その対策も兼ねてアップダウンのある妙高で脚力をつけたいと考えました。私自身、上武大学で指導していた時にもチーム強化として妙高で足作りをしたら、予選会も結果が良かったので、験を担ぐという意味もありますね」

花田監督は「早稲田大学の伝統のスタイルがあると思うのでそれも踏襲しつつも、世界を目指す上で新しいメニューも入れながらやっています」 と言う(撮影・松永早弥香)

合宿には早稲田大学競走部OB・OG会「早稲田アスレチック倶楽部(WAC)」の会長も務める瀬古利彦さんが駆けつけてくれた。ポイント練習の様子を見た瀬古さんは、「これが(箱根駅伝)予選会のチームだな」と厳しいことを学生たちに伝えたという。オフ明けすぐの夏合宿で、集団についていけず離れてしまう選手が数名いる状況だった。特にトラックシーズンにレースが続いた井川は、他の選手がオフ期間中も走っていたのに対し、体を休める時だと考えてあえて走らなかった。「僕自身、確かにそうだなと思いましたし、ここから上げていかないといけないと思いました」と井川は気持ちを引き締めた。

鈴木主将とエース井川が走りでチームを引っ張る

箱根駅伝予選会で狙うは1位通過。その3週間後の11月6日には全日本大学駅伝が控えている。他大学に比べてチーム層が決して厚くない早稲田大にとっては、箱根駅伝(10区間)に勢いをつなげるために、全日本大学駅伝(8区間)でなんとしても結果を出したいところ。「予選会と全日本は疲労度合いでメンバーの入れ替えがあるかもですが、基本的に変えないと思う」と花田監督は言う。そうなると、全日本大学駅伝で距離の長い7区(17.6km)と8区(19.7km)に自信をもって送り出せる選手は限られてくるだろう。特に鈴木と井川は4年生の覚悟を胸に、7区・8区を見据えて強化をしている。

各学年には核となる選手がおり、3年生は菖蒲や北村、2年生は伊藤大志(佐久長聖)や石塚陽士(早稲田実)に加えてたたき上げの菅野雄太(西武学園文理)などが、同学年を引っ張りながらチームを底上げしている。また、ルーキーには間瀬田のほか、学法石川高校(福島)時代に5000mで高校歴代3位の13分35秒16をマークしている山口智規などもいる。山口は学法石川の先輩で8月の世界陸上(アメリカ・オレゴン)で5000mに出場した遠藤日向(住友電工)を目標に定め、5000mで世界を目指している。ルーキーたちの存在が上級生たちの刺激になっていると花田監督は見ている。

ケガをしない体作りとして、花田監督はシューズの見直しも含め、補強の大切さを学生たちに伝えている(撮影・松永早弥香)

そんなチームを支えるが主将の鈴木であり、鈴木はこれまで強いキャプテンシーを発揮してきた。だが花田監督は「チームのことはもちろん大事だけど、まずは自分自身の走り、選手としての役割を果たすことを考えてもいいんじゃないか。自分が走りで背中を見せることが、チームのプラスになると思う」と、鈴木に声をかけたという。

鈴木は5月の関東インカレのハーフマラソンでは途中棄権という悔しい結果になったが、ケガでに苦しんだ昨シーズンに比べ、今シーズンは継続して練習ができている。7月からはトレーナーと一緒に体作りにも取り組み、「自分でも怖いくらい順調に夏合宿を迎え、走り込みができています」と手応えを感じている。

主力を担ってきた先輩たちが卒業し、選手層という意味では課題があるかもしれない。それでも鈴木は主将として、「貪欲(どんよく)に優勝を狙っていきたい」という姿勢を崩さない。その思いは他の学生たちも同じだ。

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