陸上・駅伝

特集:第54回全日本大学駅伝

3連覇目指す駒澤、青山学院・順天堂も優勝狙う 全日本大学駅伝監督アンケート

前回大会の優勝後インタビューで笑顔を見せる大八木監督(右)と花尾恭輔(撮影・佐伯航平)

いよいよ11月6日に開催される第54回全日本大学駅伝。全国から27チームが日本一をかけて伊勢路を駆け抜ける。先月発表されたチームエントリーの際に全日本大学駅伝事務局が行ったアンケートから、各大学の監督・チームの目標についてまとめた。大会前日には監督の会見が予定されており、各チームのエントリーや戦略に注目が集まる。

※回答は10月12日締め切りのチームエントリー時点のもの。

【区間エントリー発表】シード編 駒澤大は田澤廉7区、佐藤圭汰2区
【区間エントリー発表】関東7校編 創価大5区に嶋津、東洋大2区に石田
【区間エントリー発表】打倒関東勢編 東海・関西・地方勢・学連選抜

駒澤大など優勝を狙う5校

「優勝」とはっきり目標に書いたのは駒澤大学、青山学院大学、順天堂大学、東京国際大学、東洋大学の5校。駒澤大は3連覇がかかる。大八木弘明監督は「上級生中心を中心に、下級生も伸びてきており層が厚くなってきている」と自信をのぞかせる。特に復活した鈴木芽吹(3年、佐久長聖)や、佐藤圭汰(洛南)らルーキーたちに期待がかかる。出雲駅伝で9大会ぶり4度目の優勝を果たし、「学生3大駅伝三冠」に挑戦できる権利を持っているのは駒澤大だけだ。

青学大の原晋監督はチームの特徴について「4年生を中心とした分厚い戦力」と分析する。期待する選手に日本インカレ男子5000mで連覇したエースの近藤幸太郎(4年、豊川工)を挙げた。チーム全体で28分台の選手がそろっており、オーダーを組むにも隙がない。

順大の長門俊介監督は「最上級生である4年生の充実、世界で戦うエースの存在」をチームの長所に挙げた。トラックでもロードでも結果を出してきた伊豫田達弥(舟入)、野村優作(田辺工)、平駿介(白石)、四釜峻佑(山形中央)、西澤侑真(浜松日体)らの4年生、7月の世界陸上3000m障害に出場した3年の三浦龍司(洛南)の活躍が見られるか。

東京国際大の大志田秀次監督は、イェゴン・ヴィンセント(4年、チェビルベレク)と丹所健(4年、湘南工大付)のWエースに、白井勇佑(2年、仙台育英)と冨永昌輝(2年、小林)らの若手も加わり、「バランスの取れたチーム」という。

2015年第47大会以来の優勝を狙う東洋大は、関東インカレ10000mとハーフマラソンで出場選手全員が入賞を果たしている。酒井俊幸監督は「今年は短い距離からマラソンまで、幅広い種目で結果を出すことができ、例年より選手層に厚みがある」とチームの成長を実感する。伸びている選手について柏優吾(4年、豊川)、梅崎蓮(2年、宇和島東)、吉田周(2年、広島国際学院)と回答した。

■目標が「優勝」のチーム(前回順位/今大会出場回数/過去優勝回数)
駒澤大学   1位/27大会連続29回目/14回
青山学院大学 2位/10大会連続12回目/2回
順天堂大学  3位/6大会連続27回目/1回
東京国際大学 5位/4大会連続4回目/0回
東洋大学   10位/15大会連続30回目/1回

優勝を狙う順天堂大。長門俊介監督は夏合宿で4年生に対し「期待はしているけど、まだまだ」と発破をかけた(撮影・松永早弥香)

國學院大、中央大、早稲田大、創価大が上位をうかがう

「3位以内」と回答したのは、國學院大學、早稲田大学、中央大学、創価大学の4校。早大の花田勝彦監督は「他の有力チームに比べて選手層は薄いが、潜在能力の高い選手は数多くいる」と回答。10000mで27分台の記録を持つエースの井川龍人(4年、九州学院)を中心にトップ争いに食い込みたい。

國學院大學は出雲駅伝準優勝で勢いがある。前田康弘監督は「エース格が強い。層が厚くなってきている」を自信をのぞかせる。主将を務める中西大翔(たいが、4年、金沢龍谷)、5月の関東インカレ男子2部ハーフマラソンで優勝した伊地知賢造(3年、松山)、2月の実業団ハーフマラソンで日本人学生歴代2位の記録で走った山本歩夢(2年、自由が丘)らがチームを引っ張る。

中央大の藤原正和監督は「4年生がまとまり良く牽引(けんいん)してくれる中、3年生世代に大エースがそろう。また1、2年生にも力のある選手がそろっており、総合力は非常に高い」とチームの充実ぶりをにじませる。日本インカレ男子1500m2位の千守倫央(松山商)ら4年生に、下級生には中野翔太(3年、世羅)、吉居大和(3年、仙台育英)、吉居駿恭(1年、仙台育英)ら10000m28分台の選手がずらり。溜池一太(1年、洛南)もロードに強く、戦力を底上げしている。

全日本大学駅伝初出場の創価大も「初優勝を視野に3位以上」を掲げている。榎木和貴監督は「4年生を中心にまとまりがあり、選手の個性も豊かで活気のあるチーム。学年を問わず気配りができ助け合いのできるチーム」と特徴を回答。葛西潤(4年、関西創価)と嶋津雄大(4年、若葉総合)らを中心に優勝争いに絡む。

■目標が「3位以内」のチーム(前回順位/今大会出場回数/過去優勝回数)
國學院大學 4位/8大会連続10回目/0回
早稲田大学 6位/16大会連続28回目/5回
中央大学  8位/2大会連続29回目/0回
創価大学  -位/初出場

今年駅伝監督に就任した早稲田大学の花田勝彦監督。伊勢路で3位以内を目指す(撮影・松永早弥香)

神奈川大、東海大、大東大などシード権争いも注目

「シード権」または「8位入賞」と回答したのは神奈川大学、東海大学、大東文化大学、中央学院大学、日本大学、そして関東以外から唯一、立命館大学。

神奈川大は関東地区予選会をトップ通過している。大後栄治監督は「主力に3年生が多い、スピード強化の成果が少しずつ表出してきている」と回答。伸びている選手に尾方馨斗(3年、自由ケ丘)、中原優人(2年、智弁学園奈良カレッジ)を挙げている。箱根駅伝の本選出場を逃した予選会から日数が短い中でチーム全体でどこまで調子を上げてこられるか。

東海大は2019年以来、優勝から遠ざかっている。「4年生の頑張りでチームを引っ張っている」と両角速監督。エースの石原翔太郎(3年、倉敷)の復活に期待を寄せる。主将の宇留田竜希(4年、伊賀白鳳)は地元の声援を受け、いい流れをつかみたい。

大東大は、仙台育英高校の男子監督を務めていた真名子圭(まなこ・きよし)が率いるチーム。5大会ぶりの伊勢路で、「出場復活に向け勢いのあるチーム」と特徴を記した。10月の箱根駅伝予選会でもトップ通過を果たしていることから選手たちの力は着実に上がっている。

中央学院大は過去3年の成績が、2021年11位、2020年11位、2019年10位で、シード権に手の届くところにいる。川崎勇二監督は伸びている選手に今年3月の学生ハーフで6位に入った吉田礼志(2年、拓大紅陵)を挙げた。

日大の井部誠一監督は「個性豊かでタレント揃いの頼れる4年生と、1~3年生の勢いがある」とチームの長所を説明。2大会ぶりの伊勢路で、前回14位を上回りシード権をつかみとりたい。

関西勢を代表する立命館大。山菅善樹監督は「将来有望な1年生がたくさん入部し、実力のある2年生と合わせて下級生が元気。そこに最後の意地を見せる4年生がうまくブレンドされた面白いチーム」と特徴を回答した。新潟の妙高高原で行った17日間の合宿では走り込みとスピード練習を組み合わせたトレーニングを実施。前回大会の18位を上回る結果を残したい。

■目標が「シード権」または「8位入賞」のチーム(前回順位/今大会出場回数/過去優勝回数)
神奈川大学  -位/4大会ぶり18回目/3回
東海大学   12位/9大会連続35回目/2回
大東文化大学 -位/5大会ぶり43回目/7回
中央学院大学 11位/10大会連続16回目/0回
日本大学   -位/2大会ぶり42回目/3回
立命館大学  18位/22大会連続34回目/0回

シード権獲得を目標に掲げる東海大の両角速監督(撮影・佐伯航平)

地方枠を増やし、来年につなげる

前回大会は9チームが繰り上げスタートだった。チームの襷(たすき)を最終走者までつなぐことを目標にするのは北海道地区の札幌学院大学。鹿内万敬監督は「夏場の走り込みを通じて、安定感が増してきている」といい、伊勢路で力を出し切りたい。東海地区の愛知工業大学の奥野佳宏監督も「まずは襷をつなぎ、東海学連の成績枠を確保したい」と意気込む。

同じく東海地区の皇學館大学は過去最高16位が目標。日比勝俊監督は「部員の90%以上が高校時代の5000mベストを更新」とし、選手たちの成長を感じさせる。特に記録が伸びている選手に毛利昂太(2年、神港学園)を挙げ、「まだまだ経験がない分、弱さありますが未知なる魅力満載」と評する。加えて中川雄斗(2年、伊賀白鳳)と浦瀬晃太朗(2年、鎮西学院)が「駅伝力を高めている」という。

関西地区選考会でトップ通過した大阪経済大学は前回大会19位を上回る「総合15~16位」、青木基泰監督は「『1+1=3にも4にもできる全員駅伝チーム』。飛び技けたエースはいませんがチーム全員が切磋琢磨(せっさたくま)した結果、関西選考会では史上初のトップ通過を果たしました」とチームの長所を紹介する。期待する選手は主将の片山蓮(4年、東海大附属大阪仰星)。

関西学院大学は「関西勢1位、過去最高順位」が目標。竹原純一監督は「去年の大会経験者が多く、今年は更に力を付けている。1~4年生と良い雰囲気の中で練習に取り組み、切磋琢磨している」と回答。陸上競技部中長距離パートの公式ツイッターでも「#三日月の逆襲」「#さあ歴史を塗り替えにいこう」とハッシュタグをつけて選手を紹介。過去一番の走りを期待したい。

国立大の意地を見せたいのが北信越地区の新潟大学と、東北地区の東北大学。新潟大は「国立大学として誇りを持ち、強豪私立に立ち向かう。大学記録の更新」、東北大は「全国レベルのスピード、体力、精神力を体感する」ことを目指す。

中国四国地区の環太平洋大学は前回大会22位を上回る「18位」、九州地区の第一工科大学は「同じ地方の大学に1校でも多く、 勝ちたい」とそれぞれ目標を掲げている。

全日本大学駅伝では、毎年成績に応じて翌年大会の地域に割り当てられる枠の数が変動する。各8地区の基本枠は1ずつ。現在はシード枠として1~8位の大学が自動的に次回大会の出場権を得て、9位~17位の大学の所属地区に成績枠計9を配分する。各地区の出場枠は最大で15とするルールになっている。上位は関東勢が占めることが予想され、関東勢以外は少しでも地方枠を増やすために上位を狙っていく。

■目標その他もしくは回答なし(前回順位/今大会出場)
明治大学   7位/15大会連続16回目
札幌学院大学 20位/5大会連続29回目
東北大学   23位/3大会連続16回目
新潟大学   -位/3大会ぶり13回目
皇學館大学  17位/6大会連続6回目
愛知工業大学 -位/3大会ぶり19回目
大阪経済大学 19位/2大会連続24回目
関西学院大学 16位/4大会連続12回目
環太平洋大学 22位/2大会連続3回目
第一工科大学 24位/2大会連続26回目

各校監督の優勝予想は? 14チームが挙げたのは駒澤大学 全日本大学駅伝アンケート
全日本大学駅伝、エントリー選手の出身高校を集計!最多は京都・洛南高校
全日本大学駅伝 出場27チームの上位8人、10000mの平均タイムは?

in Additionあわせて読みたい