野球

天理大・真城が史上8人目のノーノー 快投の原点にある昨年の悔しさ

無安打無得点試合を達成し、仲間から祝福される天理大の真城翔大(中央、撮影・安藤仙一朗)

 (5日、全日本大学野球選手権 天理大4―0西南学院大)

大阪公立大・米麦波留 統合2年目で初の全国大会、当初はチームをまとめる大変さ実感

 第72回大会が開幕した5日、いきなり快記録が生まれた。東京ドームの1回戦第2試合、天理大(阪神)の先発真城(ましろ)翔大(4年、高知商)が西南学院大(九州六)を相手に無安打無得点試合(ノーヒットノーラン)を達成した。

 昨年の第71回大会で渡部雄大(東海大札幌)が達成して以来で、史上8人目だ。

 巧みな投球術が光った。ワインドアップから投げる速球は最速で140キロ前後とそれほど速いわけではない。それでも、変化球を効果的に交えて的を絞らせなかった。許した走者は四球による4人だけ。六回2死からは4者連続で三振を奪うなど、相手打線を寄せ付けなかった。

 特に武器になったのが、130キロ前後のスプリットだ。本人が「一番良かった」という球種に、西南学院大の東和樹監督(50)も「予測していた以上に球速も速くて、最後まで対応できなかった」と脱帽した。

 1年前の悔しさを晴らす一戦でもあった。

 昨春は阪神大学リーグで初めて最優秀投手に輝き、6月の全日本大学選手権に乗り込んできた。その初戦。先発を託されて七回まで無失点に抑えたが、スタミナ切れで八回に先頭から2連打を浴びたところで降板した。後を受けた投手が逆転3ランを喫し、チームは敗退した。

 「あそこで(投手を)交代になった『借り』を返そうと思って、走り込みや投げ込みをしてきた」。この日、最後まで球威が衰えることはなかった。

 ノーヒットノーランを意識し始めていた八回。思わぬところで記録達成を阻まれそうな「ピンチ」を迎えた。仲間が4点目を取り、なおも無死満塁。一塁走者がかえると、大会規定でコールドゲームが成立する状況になった。

 ベンチで見ていた真城は、「ちょっとやめてくれと思っていました」と笑う。結局は後続が倒れて九回のマウンドに上がった。余裕にもあふれたマウンドさばきだった。

(安藤仙一朗)

=朝日新聞デジタル2023年06月05日掲載

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