野球

大阪公立大・米麦波留 統合2年目で初の全国大会、当初はチームをまとめる大変さ実感

統合2年目で全日本大学野球選手権に出場した大阪公立大の米麦主将(すべて撮影・井上翔太)

第72回全日本大学野球選手権大会 1回戦

6月5日@明治神宮野球場(東京)
大阪公立大学 1-6 環太平洋大学

6月5日に開幕した第72回全日本大学野球選手権大会、神宮球場で行われた開幕戦に、初出場の大阪公立大学(近畿学生野球連盟)が登場した。大阪府立大学と大阪市立大学の統合により、2022年春に発足して2年目のチーム。環太平洋大学(中国地区大学野球連盟)に1-6で敗れた後、主将の米麦波留(よねばく・はる、4年、高松商業)に感慨深さは一切なく「ピンチになったときの球際の強さとか、チャンスで一本打てるかとか、そういうところをレベルアップしないといけない」と反省を口にした。

勝敗を分けた球際の強さと、チャンスでの一打

試合は米麦が述べたところで勝敗を分けた。1-1で迎えた四回、大阪公立大の先発・正中敦士(4年、小野)が先頭打者に四球を与えたところから、ピンチが広がった。次打者に右前安打を許し、ここから味方の2失策などで2点を勝ち越された。「野球のセオリーですけど、四球と失策が絡むと、特にこういう舞台では勝たせてもらえないと痛感しました」と小林隼矢監督。正中について「リーグ戦ではもうちょっと四死球が少ないタイプなので、少し緊張もあったかなと感じました」と評価した。

一方で、打線は活発だった。一回表。先頭の米麦は「どんどん振ってチームに勢いをつけるバッターなので、全国でも変わらずにやろうと決めていました」と初球から積極的に振った。左前安打で出塁すると、第2打席は左翼線への二塁打。3打席目はきっちりと四球を選んだ。これには環太平洋大の野村昭彦監督も「スイングが良くて、うちのピッチャーも中盤は逃げていた。とらえられるスイングの幅を外そうとするから、ワンバウンドが増える」と米麦を中心とした打線を褒めていた。

三回に左翼線へ二塁打を放った米麦

大阪公立大は1点を追う二回に、3安打を集めて追いついたが、三つの併殺打が結果的に痛かった。米麦は「試合を通して、相手の強さも試合展開も思い通りだったんですけど、こっちはチャンスを作りながら最後の一本が出なかったし、逆に向こうは少ないチャンスをものにしていた。その差が勝ち負けにつながったと思います」と振り返った。

チーム方針を統一するところに苦労

2022年春の統合前、2021年の秋季リーグ戦は大阪府立大も大阪市立大も、ともに1部で戦っていた。「統合することが決まってから完全に統合するまで、2週間に1回ぐらいのペースで、何カ月間か一緒に練習したぐらいです」と米麦。発足1年目は、1学年上の主将を務めた薗佑海さんが大変そうにチームをまとめる姿を見ていた。「めざしているところや、やっている野球がまったく違ったので、それを目標の高い方に合わせるところで苦労されていたと思います」。平日は市大組が杉本キャンパス(大阪市住吉区)、府大組が中百舌鳥キャンパス(堺市中区)と練習場所が違うこともあり「普通のチームよりは、まとめるのがしんどかったです」と明かす。

大阪府立大は2019年秋に1部昇格を果たした一方、大阪市立大は統合前まで4度のリーグ優勝を経験している。チームの発足にあたり、まずは全国大会出場と日本一をめざす大阪市大側に目線を合わせる必要があった。小林監督は「チーム方針や『どこをめざすのか』という部分を統一していくことが、一番大変だったかなと思います。ただし『日本一をめざしてやろう』と走り出してからは、みんながそこに向かって頑張ってくれたと思います」と話してくれた。

守備が終わると、出迎える仲間のもとへ笑顔で向かった

めざすところがもっと上にあったからだろう。試合後は悔しさをにじませる言葉が並んだ。米麦が「いっぱい課題が見つかった試合になったと思います。自分たちは基本的に守備のチームなのに、守備から点を取られてしまった。向こうは、こっちが『よっしゃ!』と思う打球でもアウトを取っていたので、シンプルに参考になりました」と言えば、小林監督は「選手たちも『出られてよかった』という風には一つも思っていなくて、『絶対に勝つ、勝てる』という気持ちで戦いに来たので、悔しい気持ちでいっぱいですね」。

兄は2016年選抜高校野球大会で準優勝

「米麦、高松商業」と聞くと、ピンとくる野球ファンもいるかもしれない。

学年にして二つ上の兄・圭造さんも高松商業で活躍し、20年ぶりに出場した2016年春の選抜高校野球大会で準優勝に輝いている。弟自身は甲子園出場を果たせなかったが、「高校3年のときに市大のことを知って、自分たちで練習から考えて、先輩が後輩に伝えるスタイルに『ここで野球をやりたい』と思ったんです」と一浪して入学を果たした。全国大会に出たという意味では、兄と肩を並べたのでは? と尋ねると「全然です。向こうは準優勝なんで、優勝しないと」と対抗心をのぞかせた。

他ではできないようなチーム作りの期間を乗り越え、たどり着いた全国での経験を秋につなげるために。米麦は「今までは『全国に出るためにリーグで圧倒する』という気持ちでやっていたんですけど『全国でも圧倒する』ぐらいの力じゃないと、勝ち続けるのは難しい。すべての面でレベルアップしたいと思います」と誓った。

課題が多く見つかった今回の経験を秋季リーグにつなげる

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