唯一の3年生は涙、晴れやかな表情も 創部2年目で初出場の島原中央
(島原中央●60―84○鳥取城北 バスケットボール全国高校選手権女子1回戦 23日)
創部2年目の島原中央(長崎)が、初めて全国の舞台で戦った。
関東地方の高校で指導実績を残してきた崔純也監督が「バスケ部がない」「生徒数が少ない」といった条件の学校を探し、みずから全国各地に売り込み、縁もゆかりもない島原中央でバスケ部を立ち上げた。
監督自身が中学生に声をかけ、長崎県内だけではなく全国から部員を勧誘。外国人留学生も迎えてチームは着々と力をつけ、今大会の出場権を獲得した。
初戦の相手は4度目の出場となる鳥取城北。前半はリードを奪われながらも、なんとか食らい付いた。しかし、第3クオーターに入ると、地力や経験の違いがスコアに表れ、一気に突き放された。
初陣を終えて崔監督はこう振り返った。
「創部2年目のチームにとっては、いい経験ができたっていうか、勉強になりました。やっぱりこの長崎県内で勝ち上がるのと、全国で戦っていくのってやっぱり違う。フィジカルとかスピードとか、あとプレーの正確さ。そういったところを肌で感じてわかったと思うんで、あの、来年またこの場所に戻ってきたいと思います」
そして、異例の形で指導者として受け入れてくれた学校や、選手たちへの感謝を口にした。
「(2年目で)ここまでくることができたのは、僕の力じゃない。学校のサポートだったり、周りの人たちの支えがあったりしたから、僕はこの場に立たせてもらってます。子供たちに連れてきてもらったウインターカップですね」
そんな選手たちのなかに、ただ一人、3年生がいる。
背番号7をつけた村田碧海(うみ)だ。
福岡県出身の村田は、通っていた高校の学校生活に苦しんだ。より良い環境を求め、2年生だった昨年12月に転校してきた。
この日は、合計18分弱の出場で得点こそ決められなかったが、最上級生として劣勢のチームを鼓舞し続けた。
「緊張しすぎて、焦って……。全然うまくいかなくて。みんなに迷惑かけてばっかで、支えてくださった方々に申し訳ないです」
試合後は大粒の涙がほおを伝った。
でも、自ら行動して島原中央に来ていなければ、こんなラストも待っていなかったはずだ。
「最初で最後の全国大会だったので、ここに来られてうれしい。後輩たちは先生を信じて、またレベルアップしてここに戻って来て、長崎代表として誇りに思われるような存在になってほしいです」
ここまでの道のりを振り返ったとき、少しだけ表情が晴れやかになった。
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(松本龍三郎)=朝日新聞デジタル2023年12月23日掲載