日本大・山田哲汰 U18代表、大型PGのルーキーイヤー「1試合が濃い」経験を次へ
日本大学のインカレでの戦いぶり
12月8日(2回戦)82-73 天理大学
12月10日(準々決勝)61-66 東海大学
日本大学・山田哲汰(1年、白樺学園)の1年目が終わった。チームは第75回全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)の準々決勝で東海大学に敗れてベスト8。「お世話になった4年生と優勝したかった」。進学前はU18日本代表にも選出された大型ポイントガードのルーキーシーズンは、どんなものだったのだろうか。
前回王者との戦いでインカレデビュー
今大会の日本大学は、山田が主戦場とするポイントガード(PG)の選手を3人エントリーした。先発として司令塔を担う一戸啓吾(3年、仙台大明成)を、後輩の下地秀一郎(2年、北陸)と山田の2人でサポートする形をとった。
天理大学との初戦で山田の出番は訪れなかった。自身初となるインカレのコートに立ったのは、ディフェンディングチャンピオンとの大一番。身長188cmのポイントガードは東海大戦の第1クオーター(Q)途中から出場を果たした。
9点リードを作った第3Q中盤にも、山田は三つ目のファウルを取られた一戸に代わりコートイン。ここから徐々に点差を詰められた日本大は、残り4分43秒にターンオーバーから速攻を許して43-39と4点差に迫られた。
この失点を招いてしまったのは山田だった。直前の攻撃で東海大のゾーンディフェンスを崩そうとトップの位置からドライブを試みたものの、相手の網にかかりボールを奪われた。失点直後に城間修平監督はベンチの下地へ交代を指示。だが、自身のミスを取り返すかのように背番号20が右のコーナーから迷わず3ポイントシュートを射抜いた。
最後はベンチから見つめ、試合後は涙
「自分のミスで流れを持っていかれそうになったので、しっかり自分が決めて悪い流れを断ち切りたかったです。あの場面に関しては決められてよかったと思っています」
山田は目をギラつかせ、何度も手をたたいて自らを奮い立たせた。城間監督は下地をベンチに座らせ、山田の続投を選択。ベンチメンバー中心の5人を最終Qまで引っ張った。
しかし、ラスト10分は序盤から東海大に連続で3ポイントを献上。残り8分28秒でわずか1点リードになったところで山田は交代を告げられた。その後、チームは試合をひっくり返され、最後は61-66で試合終了のブザーが鳴った。まだ1年生。勝敗を大きく左右する時間帯において、山田はベンチから声を出すことしかできなかった。
「4年生には本当にお世話になったので、最後のインカレで4年生と優勝したかったです。それがかなわなくて、悔しいです……」。ロッカールームから取材エリアに現れた時も、山田は泣いたままだった。
「チームを安定させることができなかった」
日本大には米須玲音(3年、東山)というポイントガードもいる。高校時代から川崎ブレイブサンダースの特別指定選手としてBリーグの舞台を経験している実力者だ。しかし、今大会はケガの影響で15人のメンバーから外れた。
これまでよりも出場機会が巡ってくる――。山田も準備はできていたが、自分の力を出せないまま敗戦。セカンドユニットの司令塔として、試合の流れを変えたり、チームを安定させたりすることを第一に意識したが、この日はベンチから出てきた東海大のメンバーにも見せ場を作られた。日本大は相手よりも高いチーム力を発揮できず、無念の逆転負けを喫した。
「今大会は玲音さんも出られなかったので、自分がガードとしての役目を果たしたかったですけど、勝てなくて申し訳ないです。セカンドユニットが出ている時に自分がチームを安定させることができず、4Qもこっちのミスから流れを持っていかれてしまったので、そこは自分の責任だと思います」
4年生は「お兄ちゃんみたいな存在だった」
北海道出身の山田は高校3年の夏、U18日本代表に選出。FIBA U18アジア選手権大会2022で5試合を戦い抜き、チームは準優勝の成績を収めた。ポイントガードとしては大柄。その上で「スピード感のあるバスケットが得意」と口にし、ドライブからの力強いフィニッシュに加え「マークを引きつけてからパスも出せる」と、味方の得点を演出できることも彼の強みだ。
期待のルーキーとして日本大に加わった山田は、春の関東大学バスケットボール選手権大会(スプリングトーナメント)からメンバー入りを果たした。秋の関東大学バスケットボールリーグ戦(オータムリーグ)、1年の集大成のインカレでも経験を積み、どんな1年を過ごしたのか。
「高校の時に比べて1試合1試合が本当に濃かったです。春のトーナメントでは全然通用しなくて、リーグ戦もあまりプレータイムをもらえなかった。だからこそ今回のインカレで勝ちたかったですけど、負けてしまったので本当に悔しいですし、あっという間に終わってしまったという感覚ですね」
「お兄ちゃんみたいな存在だった」という4年生と笑顔で終わることはできなかった。けれど、4年間のすべてをかけて戦うトーナメントで感じたこと、そこで味わった悔しさは、これからの山田をさらに強くさせるに違いない。
得点、アシスト、リバウンド。そして強いリーダーシップでも「チームを勝たせられるガード」になるために、山田哲汰は唇をかみ締めながら歩み始めた。