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特集:第75回全日本大学バスケ選手権

白鷗大学・樋口鈴乃 敗れ続けたライバルの「徹底力」見習い、一体感でつかんだ日本一

インカレで優勝した白鷗大の樋口主将(すべて撮影・井上翔太)

第75回全日本大学バスケットボール選手権大会 女子決勝

12月10日@国立代々木競技場第二体育館(東京)
白鷗大学 79-69 東京医療保健大学

12月10日に女子の決勝が行われた第75回全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)で、白鷗大学が79-69で東京医療保健大学を下し、7年ぶり2回目の優勝を果たした。東京医療保健大の連覇は6で止まった。近年、インカレ優勝を阻まれ続けたライバルに雪辱を果たし、白鷗大の樋口鈴乃主将(4年、精華女子)は「この瞬間を4年間、ずっと追いかけていたので、うれしいの一言です」と喜びを語った。

第75回全日本大学バスケットボール選手権

「自分が突破口を」と後半にゲームを動かす

白鷗大はセンターの大黒柱・オコンクウォ・スーザン・アマカ(3年、桜花学園)やエースの三浦舞華(4年、精華女子)らが得点を重ねる中、樋口は後半にゲームを動かした。

56-52で迎えた第3クオーター(Q)残り2分弱。樋口は果敢に3ポイントシュートを狙い、沈めた。笑顔で右拳を握ると、その直後にも加点。61-52にリードを広げた。「周りの選手が相手のディフェンスに切られていたので。まずは自分が行って突破口を開こうと思っていました」。この姿勢は最終第4Qでも変わらなかった。

東京医療保健大に3連続得点を許して3点差まで迫られたところで、最終Qチーム最初の得点を挙げて流れを引き留めた。その後も、鋭いドライブでゴール下まで切り込んだ桐原麻尋(4年、明秀日立)からパスを受け、相手ファウルをもらいながらシュート成功。最後まで一度も交代することなく全40分間を走り抜き、オコンクォに続いてチーム2番目の21得点を稼いだ。

試合が終わると、整列した後、少し遅れて歓喜の輪に加わった。主将として相手チームの監督や審判にあいさつに向かったためだ。最初に胴上げされ「高校時代や中学の頃は、自分が日本一になれるなんて夢にも思っていなかったです。最高の仲間に恵まれて、こういう形で日本一になれたことがうれしいです」と終始笑顔で取材に答えた。

同じ4年生の小林美穂(右)と喜びを分かち合う樋口

リーグ戦で敗れた後、ミーティングで語った本音

インカレの決勝で白鷗大と東京医療保健大が顔を合わせるのは5年連続。その間、白鷗大は一度も勝てていなかった。樋口自身は「1年生の頃はまったく試合に出られず、2、3年生のときは少しプレータイムもあったんですけど、まったく活躍できなかった」と振り返る。悲願の大学日本一をつかむためには、絶対に避けて通れない相手だった。

東京医療保健大と自分たちの差は何か。「今まで対戦して思っていたことは『徹底力が違う』ということです。スカウティングしたことだったり、ボックスアウトの部分だったり。今まで負けてきたゲームは40分間、医療さんの方が徹底してできていました」。その相手を乗り越えるために、まずは自分たちも「徹底力を磨こう」と約束した。佐藤智信監督を含め、練習中にダメな面があったら、練習を止めて全員で指摘し合った。

東京医療保健大との差を埋め、乗り越えるべく1年間努力してきた

8月下旬から約2カ月間開催された関東大学女子リーグ戦では2度対戦し、9月30日の1度目は81-87で敗れた。その後、チームの全員でミーティングをしたという。「自分がキャプテンとして声をかけなきゃいけない部分はあるんですけど、周りのみんなに『もっと助けてほしい』という話をしたんです。自分だけじゃなくて、全員が一体にならないと、医療さんの壁は越えられないと思ったので」

そこから周囲も変わった。試合中の苦しい時間帯、樋口はそれまで「自分に頼ってほしい」という面があったというが、ミーティングを経てからは全員がキャプテンのような振る舞いを見せてくれるようになった。樋口が3ポイントシュートを外した際も、春だったら周りからあまり声をかけられなかったが、今では「大丈夫!まだ打ち続けていいよ」と言ってくれるようになった。2度目の対戦となった10月29日は、インカレ決勝と同じ代々木第二体育館で87-68の勝利。チーム全体に「自分たちも代々木で医療さんに勝てる」という自信が芽生え、今回の頂上決戦も勝ちきった。

リーグ戦で東京医療保健大に勝ったことが、インカレへの自信につながった

成長させてくれた存在

改めて東京医療保健大はどんな存在か、と尋ねると「チームとしても、個人としても、4年間ずっと切磋琢磨(せっさたくま)して成長させてくれた存在ですし、絶対に負けたくない存在でもあります」と答えてくれた。ただ、試合前にはチームメートと「勝ちたいね」と言い合いながらも、今の4年生が在籍している過去3年間は負け続けていたことから、不安はあった。試合中に点差が縮まったときに、その不安は大きくなったが、ベンチのみんなが前を向けるような声かけをしてくれたことで、立ち直った。

樋口にとってはバスケ人生で初めて味わう日本一。「もっとうれし泣きするのかなと思ってました。でも泣くという感情よりも、うれしいの方が勝って、意外と泣かないな、みたいな感情になってます」。試合中から時折見られたが、優勝を決めた後は、ずっと笑顔だった。

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