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特集:第75回全日本大学バスケ選手権

早稲田大・星川堅信 後輩の寛大さを受け、背負う責任「ラストシュートは僕が打つ」

星川はコートに立つ4年生として責任を負う覚悟だ(すべて撮影・井上翔太)

早稲田大学は今秋の関東大学リーグ戦で苦い思いを味わい続けてきた。1部の14チーム中13位に終わり、2部降格が決定。開催中のインカレも自分たちの力でつかんだ出場権ではなかった。「苦しいときの1本やラストシュートは僕が打ちたい」。星川堅信(4年、洛南)は後輩たちに責任を負わせず、最後まで戦い抜くと誓う。

流れを渡さず、耐えられる強さを習得

「リーグ戦では接戦をずっと落としてきて、悪い現象なんですけど、終盤で接戦になると『また負けるんじゃないか』っていうのが、意識しないところでみんなあったんです。一方で春のトーナメントでも勢いに乗れていたところがあったので(結果は6位)、早稲田はトーナメントの方がいいなあって思いますね」

12月7日、インカレのトーナメント1回戦で、京都産業大学に87-82で競り勝った後、星川はそう語った。

お互いの長所をみんなで引っ張り上げるオフェンススタイルは、一言で言えば「自由」。チームは全体的に背が高くなく、「外からのシュートも空いたら打とうと言っている」(星川)。このスタイルを貫いていると、相手との実力差に関係なく、たとえ格上であっても「もしかしたら勝てる」という感覚になるのだという。「リスクはそのままでハイリターンなバスケですね。これがうまくはまって流れに乗れれば、トーナメントも勝ち上がっていける感じがあるんです」

オフェンスでは自由なスタイルを貫く

リーグ戦ではもろさもあった接戦の展開。一転して京都産業大との試合では第3クオーターの途中までリードを許しながらも、その後は危なげない試合運びを見せた。「ビハインドが1桁ぐらいで行き来していたのは、流れを全部相手に渡さずに、自分たちで耐えられている証拠だと思うので、そういう強さをだんだんチームとして獲得できています」

インカレ出場が決まったときは、安堵感より情けなさ

8月下旬から11月上旬まで続いた関東大学リーグ戦では、苦杯をなめ続けた。1部は14チームによる総当たり戦がまず1次リーグとして行われ、上位と下位の7チームずつに分けられる。そこで2次リーグとして上位・下位ごとの総当たりがあり、計19試合を戦って順位が決まる。下位2チームは自動的に2部降格となり、早稲田大は5勝14敗で13位。1部に残れなかった。

「リーグ戦に臨むときは『1周目が終わったときに上位リーグに入りたいよね』という話をしていて、でも最初から負けが込んで……。終盤に差し掛かるにつれて『1部残留』をみんな意識し始めて、でもそれがかなわずに終わってしまった。僕ら4年生としては『来年からみんなを2部でやらせなきゃいけない』という無力感、やりきれない気持ちがありました」

ベンチに戻り仲間からの助言を受けながら試合を見つめる

インカレも自力で出場権を獲得できたわけではなかった。1部の12、11位と2部の1、2位による入れ替え戦で、いずれも1部のチームが残留を決めたため、転がり込んできた。まだ、このメンバーでバスケを続けられる――。星川の胸の内は、そんな安堵(あんど)感ではなく、情けなさだったという。「みんなにかけられる言葉がないね、って4年生の中で話していて。だからといって棄権するわけにもいかない」

早稲田大の4年生プレーヤーは、星川と主将の細溪宙大(ほそたに・みちひろ、早稲田実業)の2人。他にスタッフが4人いる。細溪は出場機会が少ないため「だいぶ悩んでいた」と星川は言う。「4年生の晴れ舞台と言われるインカレで、どういう姿を見せればいいのかわからない。エナジーの出しどころが難しかったんだと思います」

乗り越えるきっかけになったのは、ミーティングを重ねて1~3年生たちが「4年生のために頑張りたい」と言ってくれたことだった。後輩の寛大さを感じ、最後まで戦い抜くと決めた。

情けなさもあったが後輩の心意気を受け、最後まで戦い抜くと決めた

苦楽を共にした同期、これからを担う後輩の分まで

最後のインカレでどんな姿を後輩たちに残したいですか、と尋ねると「たぶん僕が今から言うこと以外のことも思いながらプレーしてます」と前置きしてから、話してくれた。「責任感が強くなるラストシュートは、僕が打ちたい」

この言葉には、リーグ戦の神奈川大学戦で、同点をかけたラストシュートを後輩の三浦健一(1年、洛南)が放ち、外れてしまったという背景がある。「健一も泣いて、ダメージが大きくて。試合中に外れたシュートなんてみんな何本もありますけど、ラストの本人にとっては『このシュートで負けた』という思いが強くなります。その責任は4年生にあるというところを示したい」

この1年間、うれしいことよりも悔しさを味わうことの方が、はるかに多かった。最後は苦楽を共にしてきた同期の分まで。これからの早稲田を担う後輩たちの重圧を軽くするためにも。チームの大黒柱は最後まで責任をまっとうする。

同期のため、後輩のため、体を張り続ける

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