バスケ

山梨学院大・武内理貴 初挑戦の1部で輝く得点力 成長の足跡を追う

初めての1部の舞台でもトップクラスの得点力を見せつけた(すべて撮影・小沼克年)

第99回関東大学バスケットボールリーグ戦は10月9日に総当たりの1次リーグが終了し、2次リーグへ突入した。折り返し時点での個人成績に目を向けると、個人得点で首位に立っていたのは、新興勢力の主将だった。山梨学院大学のシューティングガード、武内理貴(4年、松山工業)。今季から1部に戦いの舞台を移した山梨学院大のエースに迫る。

初の1部でも躍動、1試合平均20点超

Bリーグでヘッドコーチ経験のある古田悟監督のもとで、入学当時から中心選手としてコートに立ってきた。最大の武器は3点シュートだ。3年生で主将を任され、最終学年で迎えた今季は昇格したばかりの1部リーグで1次リーグ13試合で、1試合平均20.8得点。1、2年時は3部、昨シーズンは2部でプレーしていた選手が、大学トップレベルの選手がしのぎを削るリーグでも持ち味を存分に発揮している。1次リーグ最後の相手となった拓殖大学との試合では、1人で37点を稼いで白星を手にした。

最大の武器は3点シュート。「1部でも得点を決められていることは自信になっています」

山梨学院大は決して彼のワンマンチームではない。明治大学戦では武内がわずか3得点にもかかわらず勝利しているし、「今は1年生も試合に出ることが多い」(武内)と、中村千颯(1年、福岡第一)や齋藤晴(1年、関西)といった今後が楽しみなルーキーたちもコートを駆け回っている。2部を戦った昨季のリーグ戦ではカボンゴ ジョナサン(4年、瀬戸内)がリバウンド王を獲得して1部昇格の立役者となった。

「影」になり、屈指のスコアラーへと変貌

武内は、昨年3月に開催されたルーキーズトーナメントでも1部相手に点を取りまくって注目を浴びた。当時はまだ2年生。良くも悪くも遮二無二シュートを打つことが多く、今後への課題をこう話していた。

「自分がチームの中心ではあるんですけど、周りの選手を生かすプレーができていないです。パスもあまり出せていないので、それができればもっといいバスケができると思っています」

大学ラストイヤーを迎えた今季も、チームの顔であることは変わらない。けれど今は、これまで以上に仲間を信じ、目の前の相手とリングだけでなく「周りを見てプレーできるようになった」。1部でも自身のオフェンス力が通用している要因を、武内は次のように話す。

「自分が点を取ろうというよりは、まずは試合に勝とうという思いが強いです。『空いたら打つ』という意識は変わらずに持っているんですけど、自分が無理にシュートを狙うのではなく“影”になることも心がけていて、今シーズンはアシストを意識して増やしています。アシストをする時はするし、自分で勝負できる時は勝負する。そのバランスを意識してプレーしているので相手のディフェンスも迷うことがあるのかなと」

1次リーグを終えてのアシスト数は平均2.2本。このパスや味方のためにスペースを空けるといった影のプレーが布石となることで、エースのシュートは一層まばゆい光を放つようになった。

仲間を立てる「影のプレー」が得点力につながっている

プロの舞台で磨いたフィジカル

1部昇格を果たした昨シーズン終了後は、地元の愛媛県でプレーをした。昨年12月から今年3月までB2リーグに所属する愛媛オレンジバイキングスの特別指定選手となり、武内は計9試合に出場。プロの舞台では緻密(ちみつ)な戦術やバスケIQの高さを学んだようだが、気になったのは一回り以上も大きくなった胸板の厚さだった。

何げなく聞いてみた。「体デカくなりました?」。武内は少しうれしそうに笑った。「そうっす」。現在は身長181cm、体重83kg。昨年末から約4kgの増量に成功したという。「愛媛に行ったことで自分が細いことを改めて感じました。そこから食べる量も増えて、ウェートトレーニングもこれまで以上にして意識的に増やしました」

プロのレベルを痛感し、フィジカル強化に取り組んだ

フィジカルも強くなったことで、シュートにも安定感が増した。約3カ月という期間だったが、「将来はBリーグで活躍する」という夢の輪郭がはっきりした貴重な時間だった。

「自分がBリーグで一番通用するのはシュート力。そこをもっともっと磨いていきたいです。あとはポイントガードでプレーすることもあると思うので、ハンドリングやアシスト、バスケIQなどもレベルアップして、Bリーグでも活躍できるような選手になりたいです」

これからもシュートを打ち続け、楽しむ

バスケを本格的に始めたのは、小学校2年から。けれど、兄と姉の影響で物心がつく前から身近にバスケットボールがあった。中学時代からシューターとしてコートに立ち、大学最後のシーズンとなる今季、リーグ戦でもトップクラスの3点シュートの成功率をキープしている。

全14チーム総当たりの1次リーグを終えて、山梨学院大は4勝9敗の10位。負け越しているものの、首位争いをする日本体育大学、白鷗大学、日本大学と競り合ってきた。

「上位チームにも勝てるチャンスがあったと思いますけど、そこで勝ちきれないのが自分たちの経験の少なさ」

主将として、悔しさをにじませた。その一方で、こうも話した。

「やっていて楽しいですね。どのチームもそれぞれのカラーがありますし、それを自分たちがどう打開するかってところが毎試合楽しいです。そう簡単にはいかないですけど、それでも勝ったり得点が取れたりした時はうれしいですし、自分としても1部でも得点を決められていることは自信になっています」

思えば、武内は2年前も「やっていて楽しい」と口にしていた。もともと関東の大学に進学するつもりはなかったが、関東のレベルの高さを肌で感じたときに、「来てよかったです」と笑みを浮かべていた。

リーグ戦は上位・下位の2グループに分かれ、熾烈(しれつ)な順位争いが繰り広げられる。そんな舞台でも、大学屈指の3ポイントシューターは楽しむことを忘れずにチームを率いる。

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