「瑠莉と一緒に」初勝利 下妻一、足つっても粘り強く 高校バスケ
ウインターカップ初出場の下妻一の選手たちには共通のモチベーションがあった。
1年生からの主力で、6月に右ひざに大けがを負った清水姉妹の妹、瑠莉と一緒にプレーしたい。その思いが結束を強めた。
初戦の相手は今年創部ながら全国高校総体で16強入りした日本航空北海道。「相手は1年生ばかりだけど、胸を借りるつもりでやろう」と木村幸司監督が言う通り、挑戦者の気概は随所に現れた。
こぼれたボールに体を張る。
身長の高さでは劣るのに、コート上の5人がリバウンドに絡む。
足をつっても全員が粘り強く走り、終盤の反撃を振り切った。
73―69。敗れた日本航空北海道の矢倉直親監督は「顔つきやメンタルの部分で差があったと思う」と語った。
下妻一の木村監督は当初、大学でもプレーを続けるという瑠莉を無理やり復帰させるつもりはなかったという。しかし、高校最後の舞台で仲間とコートに立ちたいと懸命にリハビリしてきた本人の熱意にほだされた。医師と相談した上で「短い時間限定なら」と起用を決めた。
久しぶりの試合で舞い上がらないよう、この日は先発させてすぐ交代させる配慮も。出場は16分46秒だったが、瑠莉が得点したり、リバウンドをとったりする度に、ベンチや応援席が盛り上がり、チームに勢いを生んでいった。
双子の姉でエースの瑠奈は33得点の大活躍。妹がケガをしている間にゴール下に向かっていける選手がいなくなり、その分、自らドリブルで切れ込んでいく技術や判断力を磨いてきたという。「一番近くで見てきた」からこそ、妹の復帰を勝利で飾りたかった。終盤、勝利を決定づけた3点プレーは、ドリブル突破からのシュートだった。
県立の下妻一は文武両道を大切にしており、他の強豪校と比べてバスケットに割く時間が短い。練習は1日3時間程度。休日も一日中練習することはほぼないという。
木村監督は「バスケットだけの人間にならないように、勉強の時間を邪魔しないようにしてきた」。
中学時代に全国大会に出場した清水姉妹が、地元の県立高校を選んだのはそんな学校の気風にひかれたからだ。
下妻一では練習中から、すぐに自分たちの映像を見て部員だけで修正点を話し合う習慣があるという。「タイムアウトもなるべく取らないようにした。いまどきと言われるかもしれないけど、自分たちで考えて問題を解決していく力はバスケに限らずに大切ですから」と木村監督。
自分たちのスタイルを貫いてつかんだ記念すべき初白星だ。
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(野村周平)=朝日新聞デジタル2023年12月23日掲載