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特集:パリオリンピック・パラリンピック

立命館大・柳井綾音が女子10000m競歩で学生記録更新 パリオリンピックも笑顔で

圧倒的な強さを見せた関西インカレ。両拳を突き上げゴールした(撮影・立命スポーツ編集局)

今夏のパリオリンピック男女混合競歩リレー代表、立命館大学の柳井綾音(3年、北九州市立)が再び偉業を達成した。5月25日、関西インカレ最終日に行われた女子10000m競歩で、自身が持つ日本学生記録(44分27秒72)を約6秒更新する44分21秒85で3連覇を飾った。柳井は関西インカレの6日前にスペインで開催された「ラ・コルーニャ国際グランプリ」女子20km競歩にも出場し、自己ベストを1分以上更新する1時間29分44秒。日本歴代7位のタイムをマークした。

遠征で力をつけ、課題だった腕振りも改善

関西インカレ最終日。会場のたけびしスタジアム京都は湿度84%、気温は25度を超え、蒸し暑かった。「暑さがあったので、大会新記録更新を目標に挑みました。正直、学生新記録まで出せるとは思っていませんでした」と振り返る。「立命館のみんなの応援のおかげで出せた記録だと思います。チームメートの前で学生新記録を出せたことが、とてもうれしいです」

自身が持つ学生記録をさらに更新し3連覇を飾った(撮影・立命スポーツ編集局)

連戦だったが、調子は良かったという。「3kmを13分くらいで通過できたので『これはいけるな』と記録を狙いにいきました。遠征で力がついてきたのと、課題だった腕振りが改善できて、より前に歩けるようになりました」と勝因を語る。

大学対校得点では1人で28点を獲得し、チームの総合3連覇に大きく貢献。大会MVPにも選出された。「関西インカレは立命館のために頑張れる特別な大会です。応援の力がどの大会より大きい。総合優勝を決定づける結果が残せて、本当に良かったです」と笑顔を見せた。

チームの総合優勝にも大きく貢献し大会MVPにも選ばれた(撮影・立命スポーツ編集局)

世界チーム競歩選手権で得た手応え

もともとはパリオリンピックを視野に入れておらず、2025年の東京世界陸上を最短の国際大会出場ルートとして考えていた。だが、昨年のブダペスト世界陸上出場をきっかけに、「パリオリンピック出場」を明確に意識し始めた。

2月の日本選手権を3位で終えてから、負荷のかかるセット練習を増やして距離を踏むなど、体力強化に取り組んできた。

手応えを感じたのは、4月の世界チーム競歩選手権。女子20km競歩に出場し、序盤から先頭集団を追走するなど、積極的なレースを展開した。4km付近で離されはしたが、1時間32分52秒で18位と健闘。「直前にケガをしてしまい、成果を発揮とまではいきませんでしたが、先頭集団で歩いたことで世界のレース展開をつかむことができました。少しでもトップに付けたことで自信にもつながりましたし、世界で戦うイメージができるようになりました」

海外レースでも安定して結果を残す。写真は「ラ・コールニャ国際グランプリ」(本人提供)

その世界チーム競歩から、わずか5日後に吉報が舞い込んだ。パリオリンピック男女混合競歩リレーで日本代表に内定したと報じられた。「憧れの舞台に自分が立てるんだと、うれしい気持ちと感謝の気持ちでいっぱいでした」と当時の心境を振り返る。「最初はほんとに実感がなくて。みんなから『おめでとう!!』という言葉をたくさんいただいて、だんだん実感が湧いてきました。中学時代の同級生からもお祝いのメッセージをもらって『オリンピックすごいな』と思いました」

海外選手から学んだ意識の高さ

男女混合競歩リレーはパリオリンピックで初めて行われ、男女1選手ずつがペアになり、交互に計42.195kmを歩く。1区(11.195km)と3区(11km)を男子選手が、2区と4区(ともに10km)を女子選手が担当する。柳井は「私自身、もともと結果を出してきた距離(10000m)ですし、リカバリーの早さには自信があるので、力を発揮できるのではないかと思います」と話す。また「警告を男女トータルで3枚取られると、タイムがプラスされるので、丁寧に歩けるように、技術的なところを高めていきたいと思います」と続けた。

オリンピック内定を受け、5月7日~20日の2週間、フランスとスペインに遠征した。「フランスでは向こうの選手、スペインでは日本の実業団の選手と一緒に練習させてもらいました。体力をつけるというより、学びにいく、挑戦する感覚でした」と柳井。「海外の選手と関わる中で、意識の高さを学びました。競技を心から楽しんでいる姿や食事への考え方は、マネしたいと思いました」

2カ国に渡る海外遠征では、海外選手の意識の高さを学んだ(本人提供)

世界の舞台を経験したことで「前は世界大会に特別感が強くあって、出場できることに満足してしまっていた。今ではかなり海外の地にも慣れてきて、自分のパフォーマンスができるようになりました」と語る。

「すごく刺さった」高木美帆の言葉

世界チーム競歩を終えてから、自身は絶好調だ。「日本選手権後に取り組んだことがようやく成果として出てきました。長い距離でも短い距離でも、自分の自己ベストが出ているので、力がついてきたと実感しています」

オリンピックに対する思いはどんどん強くなってきている。「この前オリンピックの会議があった際に、スピードスケートの高木美帆さんが『オリンピックは憧れの舞台ではなく、本気になる場所』とおっしゃっていた言葉がすごく刺さって。憧れの気持ちがやっぱり強かったんですが、意識面から本気になろうと思いました」

いよいよパリの舞台が近づいてきた。「支えてくださる方や応援してくださる方に笑顔を届けたいです」と言葉に力を込め、「もうひと踏ん張り、スピードを磨いていきたいです」と成長を誓う。

顧問の先生から勧められ、高校3年生で始めた競歩。「最初はとにかくしんどそうなイメージが強かったので、正直『嫌』でした。今ではしんどい先に待っている瞬間が良いなって思っています。競歩は順位変動が激しく、最後まで分からない種目。駆け引きが様々な場面で見られるので、そこを楽しんで見てもらえるのではないかと思います」

パリオリンピックの舞台でも持ち前の笑顔が見たい(撮影・立命スポーツ編集局)

「メダル獲得を目指して頑張ります。絶対に笑顔でゴールすると決めているので、そこは注目して見てもらいたいです。また応援が私の力になるので、テレビでの応援よろしくお願いします!!」

画面越しに満面の笑顔を見たい。

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