陸上・駅伝

特集:第92回日本学生陸上競技対校選手権大会

世界陸上代表の立命館大・柳井綾音は悔しい2位 「初心を取り戻すため」の全力疾走

女子10000m競歩で2位だった立命館大の柳井(撮影・井上翔太)

第92回日本学生陸上競技対校選手権大会 女子10000m競歩決勝

9月15日@熊谷スポーツ文化公園陸上競技場(埼玉)

1位 下岡仁美(同志社大4年)   45分59秒45
2位 柳井綾音(立命館大2年)   46分50秒70
3位 内藤未唯(神奈川大3年)   47分20秒88
4位 石田さつき(武庫川女子大1年)48分07秒27
5位 山岸芽生(中京大2年)    48分14秒35
6位 近藤葉香(金沢学院大1年)  48分34秒75
7位 岡本瑠香(中京大4年)    48分38秒16
8位 中村綾花(日本体育大2年)  48分43秒32

日本インカレ2日目の9月15日、女子10000m競歩の決勝が行われ、今夏の世界選手権(ハンガリー・ブダペスト)の女子20km競歩代表、立命館大学の柳井綾音(2年、北九州市立)が46分50秒70で2位になった。フィニッシュ直後は顔を両手で覆い、優勝を逃した悔しさを全身で表した柳井は「来年のパリオリンピックと(2年後の)東京世界陸上の代表をめざす中で、勝たないといけなかった。すごく悔しいです」と率直な思いを語った。

世界陸上の疲労から発熱、「怖さに勝てなかった」

レースは早々と400m過ぎに動きを見せた。同志社大学の下岡仁美(4年、泉陽)が飛び出した。柳井はついていかず、集団にとどまった。集団の内側を歩いていたことも響いた。1000m付近で抜け出して先頭を追ったが、4000mあたりまで15秒前後の差を縮めることができない。「最初の400mで察してそこで出るべきだったが、自分の状態も良くなかった。一気に上げるのがしんどい部分があった」と柳井。逆に5000m付近で20秒以上の差がつき、徐々に広がっていった。最後の2周はギアを上げてペースを上げたが、下岡には届かず。最終的に50秒ほどの差をつけられる完敗だった。世界選手権後に疲労から発熱し、約2週間ほぼ練習ができたなかったという。「ジョギングで体力を戻すというよりも、整えるという感じだった。自分の中でも怖さがあり、その怖さに勝てなかった」と冷静に振り返った。

日本インカレは不安を抱えたままのスタートだった(撮影・井上翔太)

大きな刺激を受けた世界の舞台

それだけ8月の世界陸上では全力を出し切った。同じ高校出身の先輩である藤井菜々子(エディオン)と共に立った初のシニアの世界大会。炎天下の中、序盤から果敢に第2集団に食らいついた。7~8kmで集団から離れたときがきつかったというが、粘った。10km地点では先頭と2分差の28位。そこから大きく順位を落とすことなく、1時間34分59秒の30位で歩き切った。そのとき柳井は「悔しさもあるが、今日はこういう大きな舞台で歩けたという楽しさの方を感じた」と話していた。

藤井からは事前に「ハイペースで今日は進む思うから、自分のペースを刻んで」とアドバイスを受けたという。憧れの先輩と歩けたことで大きな刺激を受けた。「日本選手権のときはスタートから離れてまだ先輩とは戦えないなと思ったが、今回は少しでも先輩と一緒の集団で歩けて、ちょっとは成長したなと思えた。菜々子先輩を目標ではなくて、超える選手になりたいなと思った」

初の世界選手権は「大きな舞台で歩けたという楽しさ」を感じた(撮影・内田光)

目標のために立ち止まらない強い決意

日本インカレのレース後、柳井は何度もトラックの脇を全力疾走した。これは高校時代にやっていたことだが、大学入学後は初めてのことだったという。「悔しさもあったし、初心に戻らないといけないなと思った」と柳井。自分のふがいなさ、悔しさをぶつけた。柳井はチームで駅伝にも取り組んでいる。昨年の全日本大学女子選抜駅伝競走(富士山女子駅伝)では1区を走った。これからも競歩と駅伝の両立をめざすといい、「駅伝の練習も競歩につながると思っている。練習を続けることで(競歩の)35kmの選手にも体力面で勝てるのかなと自分では感じている。しっかり駅伝でも日本一をめざしたい」

柳井の将来のビジョンはしっかりしている。来年2月に神戸市で開催される日本選手権20km競歩でパリオリンピックの参加標準記録(1時間29分20秒)を突破すること。そして、東京で開催される2年後の世界陸上で入賞を果たすことだ。「今年1年はすごく充実している。でもここで止まってはいけない」。きっと、今回の悔しい経験をプラスに変えて見せる。

今後はパリオリンピックの参加標準記録突破と東京で開かれる世界陸上入賞をめざす(撮影・井上翔太)

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