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東京医療保健大・絈野夏海 ネガティブな若き日本代表候補 目指すはオリンピアン

大学1年生ながら日本代表候補に選出されている絈野夏海(撮影・中西真雪)

6月9日に閉幕した第14回関東大学女子バスケットボール新人戦で3位に入った東京医療保健大学から、ベスト8賞に絈野夏海(かせの・なつみ、1年、岐阜女子)が選出された。昨年のウインターカップ準優勝の岐阜女子高校を主将として率い、記者向けの資料では「歴代屈指の精神的支柱」と評され、すでに日本代表候補として代表合宿などにも参加する絈野だが、素顔は〝等身大の大学生〟だった。

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結果に悔いは残るが、成長を感じた新人戦

3位決定戦は、これまでスターティングメンバーとして出場していたジュフ・ハディジャトゥ(1年、岐阜女子)が欠場し、イレギュラーな形で始まった。相手は昨年のインカレ、そして今年の春季トーナメントで負け越している白鷗大学。絈野にとっても、ひときわ意識してきた相手だった。「トーナメントでぼろ負けしてしまって、新人戦で勝ち切るということを意識して、これまで準備してきました」

試合は一進一退の攻防、前半は白鷗大が2点リードして折り返す。東京医療保健大の反撃は第3クオーター(Q)から始まった。門脇瑚羽(2年、北越)を中心に一気に攻撃のギアを上げると、絈野も3ポイントを決め、残り30秒でバスケットカウント。第3Q終了時点で16点差をつけた。第4Q、一時は5点差まで詰め寄られたが、長谷川蛍(2年、明秀日立)のガッツあふれるプレーで、流れを断ち切り勝利した。

キレのあるドライブを仕掛ける絈野(撮影・中西真雪)

絈野は5月初旬の春季トーナメントで早々に大学公式戦デビューを果たし、5月13日から23日にかけては日本代表の第2次合宿に参加していた。そこから約3週間後の新人戦。過密スケジュールの中、チームの練習にコミットするのは難しい部分もあったという。「代表合宿ならではのプレッシャーや緊張感があって、帰って来てから疲労がドッと出てしまいました。大学の練習では、自分がやろうとしていることと違うプレーが組み立てられることもあるので、なじむのは大変でした」と話す。そんな中でも「チームに悪影響が出ないように、できる限り全力で」という思いで、先輩の助言も受けながら今大会に臨んだ。

優勝を目指していただけに準決勝の山梨学院大学戦で勝ち切れなかったことには悔いが残る。しかし「たくさん3、4年生が準備してくださって、その胸を借りて自分たちは成長していくのみでした。決勝ではジュフ・ハディジャトゥが欠場する中で、ほかの選手で戦い切れたことが、良い経験になったし、すごく良い試合ができたと手応えを感じています」と総括した。

「自分が選ばれていいのかな」と悩んだ高校時代

小学1年の時、5歳上の姉に連れられバスケの練習に参加したことが始まりだった。3ポイントシュートが注目されがちな絈野だが、中学生までは3ポイントをほとんど打たず「ドライブしかできなかった」という。現在のプレースタイルが確立されていったのは、高校時代。「岐阜女子に入ってから安江満夫先生や面髙春奈先生から3ポイントシュートを教えてもらって、3ポイントとドライブどっちも武器になりました」

高校3年の時には日本代表候補に選ばれた。「正直自分が選ばれていいのかなという気持ちでした。日本代表の試合を見てすごいなと思っている選手と自分がやるっていうのは、想像がつかなかったです。自分はネガティブ思考なので『自分が行っていいのかな』とマイナス方向に考えてしまっていました」と当時の気持ちを振り返る。

今年1月の日本代表強化合宿はマイナスな気持ちが強かった(撮影・野村周平)

男子選手に比べて女子選手は高校卒業後、すぐにプロの道に進む選手も多い。それでも大学進学を選んだのには二つの理由があった。

一つ目は「プロに行っても通用しない。大学で経験を積んでからでも遅くない」というアスリート的な考え。二つ目は「大学生ライフを楽しみたい」という等身大の学生ならではの考えだ。憧れの大学生ライフはどうですか? と聞くと「1年生なのでまだ必修の授業が多いです。医療情報学科にいるのでパソコンを使う授業が多くて……。全然パソコンができなくて苦戦してはいるんですけど、楽しいです」とはにかんで答えてくれた。部活は、新人戦へ応援に駆けつける明るい先輩をはじめ「仲が良いチーム」で充実しているようだ。

前を向くルーキーはオリンピックを見据える

「代表合宿で学んだことをチームに還元しなければいけないと思っています」

代表合宿では練習中の声掛けやプレーの質、当たりの強さなどたくさんのことがハイレベルに展開されていた。特に「キャプテンの林咲希さん(富士通レッドウェーブ)はいつも周りに気を配って、声をかけてくれるんです。自分が理解していないと悩んでいた時も「大丈夫? ここ分かる?』って。視野の広さがすごいなと思います」。大学に戻ってからは学んだことを意識して、周りに声かけしているという。

代表合宿で得たものをチームに還元している(撮影・中西真雪)

2季目に入った代表活動では気持ちが少し前に向いている。「今でもまだちょっと不安はあります……(笑)。でも、選んでもらっている以上はやるしかない。自分の強みを出せるようにというのは思っています」

これから長い大学生ライフ。ゆくゆくは「候補ではなく日本代表に。オリンピックに出てメダルを取って、オリンピック選手になることが目標」だ。

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