陸上・駅伝

特集:第56回全日本大学駅伝

皇學館大が伊勢路に返り咲き 就任1年目の寺田夏生監督「全員が100点満点の走り」

3組で独走する皇學館大学の岩島昇汰。チームは2大会ぶりの本戦出場を決めた(すべて撮影・浅野有美)

第56回全日本大学駅伝対校選手権大会 東海地区選考会

6月22日@マルヤス岡崎龍北スタジアム(愛知)
1位 皇學館大学   4時間10分53秒62
----------ここまで本戦出場------------
2位 愛知工業大学  4時間12分44秒16
3位 岐阜協立大学  4時間13分06秒92
4位 中京大学    4時間14分05秒85
5位 三重大学    4時間26分03秒55
6位 中部大学    4時間28分18秒97
7位 岐阜大学    4時間29分31秒43
8位 至学館大学   4時間35分38秒07
9位 日本福祉大学  4時間36分09秒94
10位 愛知大学    4時間37分13秒88
11位 静岡大学    4時間37分16秒76
12位 愛知教育大学  4時間42分21秒37
13位 東海学園大学  4時間55分38秒16
名古屋大学は途中棄権者、南山大学は失格者、名古屋工業大学と名城大学は欠場者がいたため選考外

6月22日にあった全日本大学駅伝の東海地区選考会で、皇學館大学が2大会ぶりの本戦出場を決めた。就任1年目の寺田夏生監督は、「全員が100点満点の走りをしてくれたおかげで、接戦の中を勝ち切れた」と選手たちをたたえた。大学の地元、伊勢神宮がゴールとなる本戦で恩返しの走りを見せる。

【特集】第56回全日本大学駅伝

2組で3年生コンビが力走を見せトップに

昨年悔し涙にぬれた顔が、今年は笑顔に変わった。

東海地区の出場枠1を巡る激しい争いが予想されたが、皇學館大は2組目以降、首位を明け渡すことなく2大会ぶり7回目の本戦出場を果たした。

1組は、主将の毛利昂太(4年、神港学園)と新間圭(2年、天竜)が序盤から積極的な走りを見せた。残り2周で毛利が遅れたが、新間が踏ん張った。ラストスパートを仕掛けた名古屋大学の加藤太一(3年、千種)と浅野稜太(3年、菊里)に組1、2着を譲ったものの、1秒差以内の組3着でフィニッシュした。

「(集団の)ちょっと前に出て名古屋大学さんの注意を引いてペースを乱す作戦でしたが粘られてしまった。最後で力を出し切れなかった」と新間。組7着だった毛利も「練習は積めていて自信はあったが、レース展開に対しての準備が足りなかった」と悔んだ。

1組終了時点で、皇學館大は名古屋大と10秒37差の2位につけた。

積極的な走りを見せる毛利昂太(右)と新間圭(中央)

ターニングポイントになったのが2組だ。

「ライバルの名古屋大に勝てるチャンスだからガンガン行こう」。寺田監督は選手に発破をかけた。雨が降る中、田中靖晃(四日市農芸)と倉原成冶(浜松湖北)の3年生コンビが期待に応え、終盤まで先頭集団をリードした。

田中はラスト1周で中京大学の柴田望海(2年、中京大中京)を抜き去り、組1着でゴール。「雨が降って涼しくて走りやすかったです。最後400mでめちゃくちゃ上がって、チームに貢献できてよかったです」と満足げ。一方、倉原は残り2000mで集団からこぼれてしまい、「僕の力不足でついていけなくて離されてしまった。まだ弱いなって実感しました」と涙ぐんだ。

2組終了時点で皇學館大がトップに立った。岐阜協立大が5秒57差の2位、名古屋大は途中棄権者が出るアクシデントに見舞われ選考外となった。

2組の田中靖晃(23番)と倉原成冶(24番)が力走

3組で岩島昇汰が独走、リードを広げる

3組では、ラストイヤーとなる岩島昇汰(4年、益田清風)と藤川創(4年、伊賀白鳳)が躍動した。昨年も3組を走った2人はリベンジを誓い、練習に励んできた。

岩島は前半から先頭集団を引っ張った。「5000mから前に出るつもりでしたが、スタートが思った以上に遅かったので余裕があったら自分から出ようと。2000mを超えたら一気に出て自分のレースに持ち込んでやろうと思って走りました」。後半に入り、中京大の田中海吏(4年、高田)、名古屋大の小川海里(4年、津西)を振り切って単独トップへ。2着に43秒70差をつけてフィニッシュすると右手で大きくガッツポーズした。

藤川は無理に前に出ず、後続集団の中で力をためた。ラストスパートで猛追して組3着でゴール。「監督からはいつもどおり走ればいいよ、と励ましてもらいました。ラスト1周で完全に勝ち切る気持ちでした」と実力を発揮した。

岩島は「4組に2年生がいるので、ちょっとでも安心してスタートラインに立ってもらえるようにと思っていた。いい襷(たすき)がつなげたと思います。藤川も最後上がってきてくれたんで頼もしいです」と笑顔だった。

皇學館大は3組終了時点で、2位の岐阜協立大との差を1分41秒71に広げた。

藤川創は後続の集団でスパートを狙っていた

初レースの前野皓士「チームの力で勝った」

貯金ができたことで、最終4組はリラックスしてレースに臨めた。曽越大成(4年、木本)と前野皓士(2年、 名経大高蔵)は、ハイペースな展開でも安定した走りを見せた。

名古屋大の河﨑憲祐(院1年、大津緑洋)が中盤から飛び出し、全体トップの29分46秒99でゴール。曽越は30分12秒43の2着に入り、「個人トップを狙って先頭についていこうと思っていたんですが、3組までにリードができていたので冒険はしませんでした。ラスト2周で愛工大の選手にスパートかけられた時にちょっときついなと思ったんですけど冷静に対処できました」と振り返った。

前野は選考会初レース。大会前の体調不良の影響で出走を見送った浦瀬晃太朗(4年、鎮西学院)に代わって抜擢(ばってき)された。「今年は奪還するぞ、東海の王者は自分たちだと、スローガンでも『紫上最皇』を掲げてやってきた」と気持ちを強く持ち、最終組のプレッシャーの中、組12着で走り切った。「ラスト3kmで上げられなくて、僕の弱みかなと思います。(点数をつけるなら)50~60点くらいです。チームの力で勝ったレースだったと思います」と、先輩たちに感謝しきりだった。

前野皓士はリードをつくってくれた先輩たちに感謝した

チームの合計タイム4時間10分53秒62で、2位の愛知工業大に1分50秒54差をつけ、伊勢路への切符を手にした。

地元で雄姿を、東海地区代表の増枠も狙う

昨年は監督不在の中で名古屋大に敗れ、連続出場が6で途絶えた。当時外部コーチとして帯同していた寺田監督も涙にくれたチームの姿を目の前で見ていた。

7月に寺田監督が就任し、本格的にチームづくりがスタートした。練習では選手たちと一緒に走り、コミュニケーションを積極的にとるようにしてきた。10月は出雲駅伝に出場し、全国に門戸が開かれた第100回箱根駅伝予選会にも挑戦。実戦を通してチームを強化してきた。

しかし、12月の東海学生駅伝対校選手権大会(東海学生駅伝)で名古屋大に敗れ、全日本の選考会に続いて2連敗。「勝ち方を忘れてしまう」と危機感を持った寺田監督は今年の選考会にかけた。ピークを合わせるため、苦渋の決断で5月末の東海インカレ出場を控えた。それだけこの選考会で勝つ意義があると感じていた。

その思いに選手たちは走りで応えてくれた。寺田監督は「全員が100点満点の走りをしてくれたおかげで、接戦の中を勝ち切れた」とねぎらった。

レースを見守る寺田夏生監督

2大会ぶりの返り咲き。昨年の本戦で東海学連選抜として7区を走った岩島は、「やっぱり皇學館の襷をつなぎたいと思った。本戦に向けて再スタートいう気持ちで頑張りたい」と意気込む。

毛利主将も「本戦でチームにいい影響を与えられるような走りをして、キャプテンとして仕事をしっかりできればと思います。伊勢路では大学のキャンパスの前を走ることができるので、日頃お世話になっている方々や地域の方々に恩返しできたらと思います」と語った。

本戦では総合成績に応じて翌年の地区代表出場枠が決まる。東海地区はここ2大会は1枠にとどまっている。皇學館大は地元・伊勢路で雄姿を見せるとともに、地区代表の増枠も狙っていく。

 

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