陸上・駅伝

特集:第54回全日本大学駅伝

皇學館大が4大会連続のトップで伊勢路へ、日比勝俊監督が驚いた選手たちの底力

東海地区選考会の1組目で皇學館大の(前から)毛利と浦瀬がワン・ツーに入り、仲間を勇気づけた(撮影・すべて松永早弥香)

第54回全日本大学駅伝対校選手権大会 東海地区選考会

6月18日@マルヤス岡崎龍北スタジアム(愛知)
1位 皇學館大学  4時間07分34秒91
2位 愛知工業大学 4時間07分49秒37
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3位 名古屋大学  4時間09分09秒00
4位 岐阜協立大学 4時間10分11秒09
5位 中京大学   4時間13分31秒03
6位 三重大学     4時間25分30秒94
7位 静岡大学   4時間39分10秒64
8位 中部大学   4時間39分13秒95
9位 至学館大学  4時間47分15秒70

6月18日の全日本大学駅伝東海地区選考会で、皇學館大学は最終組で愛知工業大学に追い上げられたが、4大会連続の総合1位で6大会連続6回目の本戦出場をつかんだ。「悪い流れにハマれば落選もあるかな、と覚悟はしていたので、その点からすれば、まずは良かったです」。日比勝俊監督がそう言うにはわけがあった。

クラスターで活動停止、冬季の強化練習もままならず

今年1月、駅伝競走部以外の合宿所生が新型コロナウイルスに感染したことでクラスターが発生。自部屋隔離の時間を過ごし、2月まで部活動も停止となった。冬季強化もままならず、シーズンインは例年より1カ月遅れ。加えて、感染対策で食事や入浴の時間がきっちり管理され、新学期が始まると授業との兼ね合いで練習時間を確保できない日々が続いた。少しでも学生たちがリラックスできるようにと、近くのスーパー銭湯も活用したという。

新体制になるにあたり、皇學館大は5月27~29日の東海インカレとその3週間後の今大会の両方で結果を出そうと話していた。シーズンインが遅れた今年は東海インカレをスキップする選択肢もあったが、「東海インカレ長距離得点でトップは、年間のチーム目標だから」と学生たちは決心して出場した。

その結果、男子は72点、女子は18点と過去最高をマークし、皇學館大の選手が出場した全種目で入賞を果たした。日比監督は「他大学の戦力状況があるから一概には言えませんが、川瀬(翔矢、現・Honda)がいた時でもとれなかった得点を学生たちはとってきました。トップが突出しているわけではないけど、全体的にはレベルアップができていたという表れだと思いましたね」と口にした。

選考会を前にして、エースが突然休学

あとは全日本大学駅伝東海地区選考会に向けて頑張るだけ。そう思っていた矢先、エースとしてチームを走りで支えてきた佐藤楓馬(3年、佐久長聖)が突然、休学を申し出た。年始の隔離期間を終えてもモチベーションが上がらなかった佐藤は一度、実家に帰り、これからのことを考えたという。その中でボートレーサーへの憧れが芽生えた。日比監督は佐藤から相談され、まずは佐藤自身が決断することを促し、色々な可能性を示した。その結果、5月27日の東海インカレ10000m決勝を走り終えてほどなく、佐藤は日比監督に休学の意向を伝えたという。

佐藤は前回の東海地区選考会で全体の2位、チームトップの記録をマークした

エースがいなくなり、松野颯斗(3年、瓊浦)は急きょ、練習で引っ張る役割を担うことになった。「東海地区選考会までの3週間は本当にプレッシャーに押しつぶされそうになりながらでした」と松野は明かす。加えて、学内の合宿所でコロナ感染者が発覚し、11人のエントリーメンバーに入ったひとりがケガをしてひじを骨折。悪いことが続き、またチームに動揺が走り、日比監督も苦しんだ。

ワン・ツーフィニッシュで仲間の背中を押す

迎えた6月18日の全日本大学駅伝東海地区選考会、第1組目から皇學館大の毛利昂太(2年、神港学園)と浦瀬晃太朗(2年、鎮西学院)の2人が集団から抜け出し、そのままワン・ツーフィニッシュ。2組目では名古屋大学の森川陽之(大学院1年、近大東広島)が独走でレースを進め、そのあとに岩島昇汰(皇學館大2年、益田清風)が、続く集団を笹竹陽希(はるき、皇學館大4年、浜北西)が引っ張るなど、皇學館大の強さを知らしめた。3組目の矢田大誠(3年、海星)が2着、 中川雄斗(2年、伊賀白鳳)が6着に入り、暫定2位の愛知工業大学との差は1分以上あった。

2組目では岩島が積極的な走りを見せた

各校のエースがそろう最終の4組目に柴田龍一(4年、三重)と松野が出走した。スタートするとほどなくして中京大学の鈴木雄登(4年、中京大中京)が独走。続く集団を愛知工業大と岐阜協立大学の各2人が続き、その集団の最後尾に柴田と松野がついた。5000mの手前で柴田が一度は集団の先頭に出たものの、再び岐阜協立大の2人が前へ。柴田は集団から後退していったが、松野が粘る。最後はスパート合戦になり、松野は7着、柴田は11着でゴール。愛知工業大との差は約15秒差に縮まったが、皇學館大は1組目から首位を明け渡すことなく4大会連続のトップ通過を果たした。

「全日本で15位」を本気で目指せるチーム

松野はレース後に口にしたのは、6大会連続の本戦出場の喜びではなく、愛知工業大に迫られたことへの悔しさだった。「全日本大学駅伝ではしっかりと今まで以上に、選考会の時の皇學館よりも1段階も2段階も何段階も進化した走りをしたいです」。松野は1年生の時はケガに苦しみ、2年目の夏を越えてメンバー入りを果たした。前回の全日本大学駅伝では長距離区間である7区(17.6km)を任され、区間14位だった。今年も長距離区間の7区、8区(19.7km)でチームへの貢献を誓う。

松野(中央)は「途中まで粘りある走りができたんですけど、最後は全然粘れず、不甲斐ない走りになった」と悔しさを込めた

選手たちが悔しさをかみしめている一方で、日比監督は決して悲観的ではなかった。「今シーズンのチーム目標は全日本で15位というもので、これまでがそうではなかったわけではないんですが、本気で狙えるんじゃないかなという思いもあるんです」。コロナ禍に翻弄(ほんろう)され、エースの休学、ケガと様々なことが続いた中でも、選手たちは底力を発揮した。

「この状況下でもこれだけ走れるんだ。ひょっとしたらもうひとつ上のことができるチームなんじゃないかと感じましたね。15位という目標はこれまで以上に真実みがある目標としてやっていきたいです」



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