皇學館大・川瀬翔矢 3年目の躍進を経て、最後の全日本では区間賞で東海地区に貢献を
全日本大学駅伝の東海地区選考会が9月22日に開催され、皇學館大学は4年連続4回目の本大会出場を勝ちとった。全4組(各組に1校2人)による10000mのタイムレースで、皇學館大は全組で6位以内と確実にタイムをかせぎ、4時間05分29秒90という大会新記録をなし遂げた。そのチームを支えるのが、10000mで28分26秒37の東海学生記録をもつエースの川瀬翔矢(4年、近大高専)だ。
「後ろの組のメンバーを少しでも楽にさせよう」
川瀬は9月11~13日の日本インカレで1500mと5000mに出場した後ということもあり、今大会はベストなコンディションではなかった。加えて公式戦で初めて10000mを走る1年生や選考会初出場の2年生もいるチーム編成。日比勝俊監督は「他大学が最高の走りをしてきたら混戦になるかもしれない」と考えていた。それでもトップ通過のために総合タイム4時間5~7分を目標に定め、その上で一人ひとりがどういうレースをするべきか、学生たちに意識をさせてレースに臨んだ。
1組目を終えた時点で皇學館大はトップに立ったものの、2位の岐阜協立大学との差はたったの5秒。2組目の川瀬はスタートから一人飛び出し、一気に集団を引き離した。日比監督からは「最初の3000mは突っ込み、8000mまでペースを維持し、残り2000mで絞るというプランでいこう」と言われていたこともあったが、何よりエースとして「後ろの組のメンバーを少しでも楽にさせよう」という思いがあった。最初の1000mは2分49秒。すでに2位集団とは100mほどの差がついていた。
中間も3分2~6秒ペースを刻んだが、苦しさに顔がゆがむ。全員を1周遅れにする勢いでペースを上げるも、最後にひとりを抜かせずフィニッシュ。29分39秒38というタイムに「70点ぐらいかな。しんどかったです。でもこのコンディションでひとりで押し切っていたので、まぁ十分なのかな」と笑顔を見せた。
弱い自分も認められるようになった
振り返ると、川瀬は1年生の時に5000mで13分54秒32をたたき出して注目を集めたが、2年生での全日本大学駅伝は当日にメンバーから外された。3年生のトラックシーズンはけがに悩まされるも、覚悟を決めて挑んだ全日本大学駅伝東海選考会では全体のトップの記録でチームに貢献。本戦では2区区間11位となり、その2週間後の日体大長距離競技会5000mでは13分36秒93、翌週の八王子ロングディスタンス10000mでは28分26秒37をマークし、再び注目を集めた。ただ日比監督は「その場面場面で言うと予想通りにいかなかったことはありましたが、1年ごとのスパンで見ると描いたビジョン通りにきていましたし、3年目でそのレベルにきてもおかしくないという状況にはありました」と言う。
フィジカルトレーニングや栄養管理、体調管理など、一つひとつを積み重ねたことで確実に記録を出してきた。その成長過程で「弱い自分も認められるようになった」と日比監督は強調する。「急激に階段を昇り始めると、変にかっこわるい自分を認めたくないですよね。でも今は良くも悪くも自分を認められていて、ポジティブになる時はどんどんポジティブになれる。たくましくなりましたよ」。川瀬の成長を日比監督も心から楽しんでいる。
塩澤稀夕との勝負に「楽しいな」
9月13日の日本インカレ5000mでは、高校時代からライバル視していた塩澤稀夕(東海大4年、伊賀白鳳)とも対戦した。レースでは塩澤の背後に川瀬が続くというシーンがあった。その瞬間、川瀬は「楽しいな」と感じたという。ラスト1周の勝負で川瀬は追い上げ、吉居大和(中央大1年、仙台育英)に続いての2位でゴール。「塩澤からも『おめでとう』と言ってもらえてうれしかったです。でもまだこれで勝ったとは思っていないので、これからもいい勝負ができたらと思っています」。その塩澤とは11月1日の全日本大学駅伝でまた顔を合わせることになる。
前述の通り、川瀬は前回の全日本大学駅伝で2区を走っている。今年はその2区でのリベンジ、もしくは3区でチャレンジしたいと考えている。目指すのは前回大会で見せつけられた、2区区間賞の伊藤達彦(東京国際大~ホンダ)、3区区間賞の相澤晃(東洋大~旭化成)のような力強い走り。とくに前回、皇學館大は19位で成績枠を獲得できず、東海地区は2枠から1枠に減ってしまった。「去年は自分たちの不甲斐なさで1枠になってしまったので、絶対2枠とって、東海地区の陸上を盛り上げていきたい」と闘志を燃やす。
日比監督から川瀬に課せられているラストイヤーのミッションは「駅伝で区間賞、10000mで27分台、ハーフマラソンで学生記録(1時間50秒)更新」。川瀬の覚悟も、そこにある。