陸上・駅伝

特集:第89回日本学生陸上競技対校選手権大会

中大・吉居大和、インカレ5000mでV 三浦龍司の大会新に刺激を受けた攻めの走り

ラスト1周の鐘の音とともにギアチェンジし、スパートをかける吉居(すべて撮影・藤井みさ)

第89回日本学生陸上競技対校選手権大会

9月13日@新潟・デンカビッグスワンスタジアム 
男子5000m決勝
1位 吉居大和(中央大1年)13分40秒04
2位 川瀬翔矢(皇學館大4年)13分42秒60
3位 鈴木芽吹(駒澤大1年)13分43秒07
4位 加藤淳(駒澤大4年)13分43秒61
5位 レダマ・キサイサ(桜美林大4年)13分44秒23
6位 ルカ・ムセンビ(東京国際大2年)13分46秒26
7位 塩澤稀夕(東海大4年)13分48秒59
8位 吉田圭太(青山学院大4年)13分50秒66

日本インカレ最終日の9月13日、男子5000m決勝が行われ、中央大のルーキーで7月に5000mU20日本記録を更新した吉居大和(仙台育英)が13分40秒04の記録で初優勝を果たした。2位には皇學館大学4年の川瀬翔矢(近大高専)、3位には駒澤大学1年の鈴木芽吹(佐久長聖)が続き、10位までが13分台というハイレベルなレースとなった。

ルーキー吉居大和、学生トップレベルの快走の理由 中央大学の現在地(上)

ラスト1周で勝負

夏合宿で走り込んだ後、吉居はこの新潟にやってきた。日本インカレに向けて調整をしてきたわけではなく、ここから長い距離に対応していく中での1本のレース。今の自分が出せる力を出し切ろうと考え、「少し入賞ラインは難しいかな」という気持ちがあったという。

レースはルカ・ムセンビ(東京国際大2年)とレダマ・キサイサ(桜美林大4年)の留学生、そのすぐ後ろに吉田圭太(青山学院大4年、世羅)がつく大きな集団で動き、最初の1000mは2分48秒を刻んだ。3000m過ぎに塩澤稀夕(東海大4年、伊賀白鳳)がすっと前に出ると、レダマ・キサイサに続いての2番手にまで上がった。

吉居はレース中盤までは先頭集団の中ほどで走った

4000mで先頭集団はレダマ・キサイサを先頭に、塩澤、吉居、ルカ・ムセンビ、川瀬翔矢(4年、近大高専)、吉田、鈴木芽吹(駒澤大1年、佐久長聖)の7人の集団になった。その集団の中で順位を変えながらレースは進んだが、ラスト1周の鐘が鳴ると先頭集団の中ほどにいた吉居が一気に前に出る。たちまち後続選手を引き離し、そのままホームストレートへ。そこで後ろの選手の動きを確認し、優勝を確信。2位にはホームストレートで鈴木を抜いた川瀬が続いた。

駒澤ルーキー鈴木、「気楽に走れ」と言われてつかんだ3位

3位になった鈴木もルーキーのひとり。鈴木も夏合宿直後でのレースではあったが、試合が限られた今シーズンの中で大会が開催されたことに感謝し、ここで結果を出したいという強い気持ちで挑んだ。初めての日本インカレということもあり、大八木弘明監督からは「1年だから気楽に走れ」と言われ、強い選手たちの中でもなんとかついていき、ラスト勝負に持ちこんでいこうと考えていた。

鈴木自身、格上の先輩たちとのレースに楽しみより不安な気持ちの方が大きかったと言う。それでも冷静にレースを展開し、ラストで粘っての3位。力の差を感じていた吉居とも競い合えたことで自信がついた。

同世代の三浦龍司は勝負してみたい相手

吉居はレースを振り返り、「思っていたよりもスローペースに感じた」と言う。ラストで勝負すると決めて挑んだ最後の1周は56秒ほどと知ると、「そんなに速いと思っていませんでした。初めてそのくらい速く走れたので自信につながりました」と素直な気持ちを口にした。留学生を振り切っての勝利だったが、「今日欠場したイェゴン・ヴィンセント(東京国際大2年)とか強い選手はまだいるので」と述べ、10000mやハーフマラソンでもまた勝負できる日を待ち望んでいる。

ゴールし手を広げ、喜びを表現する吉居

初めての日本インカレで3000m障害(SC)を制し、8分28秒51という大会新記録をたたき出した三浦龍司(順天堂大1年、洛南)の存在も吉居の刺激になった。スタートから独走した三浦のレースを目の当たりにし、「見ててすごい、強いな、と思いました。自分は独走は無理でも、できるところまでやってみようと」

10月17日の箱根駅伝予選会ではそんな三浦と相まみえることになる。吉居は過去のレースで三浦に勝ったことがあまりないこともあり、「ラストを競ってみたい、勝負してみたい、という思いはあったので、ハーフマラソンや、もし箱根駅伝で同じ区間になることになれば勝負してみたいです」と闘志を燃やす。

今年の中大にとっては、学生駅伝のうち箱根駅伝が唯一の舞台。そのために箱根駅伝予選会ではなんとしても力を発揮したい。ルーキーの吉居も、思いは同じだ。

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