陸上・駅伝

仙台育英・吉居大和 モヤモヤ晴れ、伊那駅伝区間賞

吉居は慣れないレース展開に苦しみながら、区間賞をとった

男子第42回春の高校伊那駅伝

3月24日@長野・伊那市陸上競技場を発着点とする6区間42.195km
2位 仙台育英(山平怜生、喜早駿介、三浦剛、吉居大和、小原快都、中澤優希) 2時間11分10秒
4区(9.1km)1位 吉居大和(2年) 27分49秒

春の高校駅伝日本一を決める伊那駅伝が3月24日にあり、男子は4年ぶりに世羅(広島)が優勝した。レースを盛り上げた一人が、最長9.1kmの4区で、初めて仙台育英をトップに引き上げた吉居大和(2年)だ。仙台育英は6度目の出場で、これまでの最高は5位。吉居の区間賞の走りもあり、チーム最高の2位に入った。

チームのために

チームとしては3位以内、そして吉居個人としては区間賞を目標にして伊那へやってきた。レースが始まると埼玉栄(埼玉)がひた走る展開になった。吉居は「自分の区間で先頭に立てれば」と考えた。3区の三浦剛(2年)で埼玉栄との差が35秒縮まり、15秒差の3位でたすきを受けた。「これはもう先頭に立つだけじゃなくて、ここまで頑張ってくれたチームのためにも、できるだけ後ろを離そう」。吉居は一気に加速して、埼玉栄のオレンジのユニフォームを追った。

1.3km地点で埼玉栄をとらえた。あとは自分自身との勝負。ときおり強い風も吹く中での単独走は想像以上に苦しく、中盤から次第にペースが落ちた。それでも2位の埼玉栄に34秒差をつけ、区間賞を獲得した。

吉居(左)はチームをトップに引き上げて、5区の小原につないだ

当初掲げていた目標は、二つともクリアできた。しかしレース後の吉居は自分に厳しかった。「タイムを見ると、まだまだ自分は弱いと思ってます。風はあったけど、もっと速いタイムが出せたと思うから悔しいです。もうちょっと粘るというか、タイムを維持することが重要だと思うので、そこをもっと練習して、レースペースでしっかり長い距離を走れるようになりたいです」

「もっと競技を楽しめ」

現在地に満足しない姿勢は、ここ1年の悔しさと無縁ではないだろう。

昨夏のインターハイにはけがで出られず、故障を乗り越えて挑んだ年末の全国高校駅伝では1区で42位に沈んだ。チームは11位だった。思い返してみると、都大路の前から、吉居は陸上に対してモヤモヤしたものを抱えていた。それは都大路のあとも、しばらく続いていたという。

そんなとき、真名子圭監督に言われた。

「もっと競技を楽しめ」

響いた。少しずつ前向きに走れるようになった。今年の2月中旬にけがをしてしまい、伊那駅伝で走れるかどうか危ぶまれたが、なんとか間に合わせた。「今回のレースは少し長い距離だったので不安もあったんですけど、『楽しんで区間賞を狙って走ろう、前を追おう』と思って走りました」と吉居。陸上を楽しむ気持ちが、吉居の力を引き出してくれた。

吉居とともに仙台育英のダブルエースを担う喜早(右から2人目)は、2区で区間4位だった

 吉居にとって仲間の存在も大きい。同じ2年生の喜早(きそう)駿介とは、ダブルエースとしてチームを引っ張っている。「喜早がいなかったら自分もここまでこられなかったと思うし、『お互いまだまだ強くならなきゃな』って話してます」。二人のエースに1年生の山平怜生(れい)も加わり、三人を中心にチームで切磋琢磨できているという。

いつか堀尾さんのように

いよいよ吉居にとって高校最後の1年が始まる。インターハイは5000mで入賞、都大路は昨年の借りを返して優勝を目指す。その先に大学での駅伝もあるのかと尋ねると、「20kmはいまはまだ考えられない距離なんですけど、大学4年間でしっかり走れる体をつくって、区間賞の走りができる選手になりたいです」。力強く返してくれた。

「チームとしてプラスになるレースだったと思います」と吉居(中央)

吉居は「あこがれの大学生ランナー」に堀尾謙介(中央大4年、須磨学園)の名を挙げた。中大の合宿に参加する機会があったこともあるが、強いインパクトを受けたのが、昨年11月の日体大記録会だ。堀尾は5000mの自己ベストを大幅に更新し、13分33秒台をたたき出した。吉居は堀尾の1組前で5000mを走っていた。出番のあと、マサイ・サムウェル(カネボウ)に食らいつく堀尾の走りを目の当たりにした。

そして今年3月3日の東京マラソン。堀尾は初マラソンながら日本勢トップの走りで、東京オリンピックの代表選考会となるマラソングランドチャンピオンシップ(9月15日)の出場権を得た。吉居もいずれはマラソンに挑戦したいと考えている。「大学生のうちからあれだけすごい記録を出したり、日本人トップで走ったりしてる姿を見て、僕もそういう選手になりたいと思いました」。はにかみながら、夢を語った。

まずは、この一年のリベンジを。その先に広がる4years.で、どれだけ羽ばたけるのか。自分を救ってくれた「競技を楽しむ」の言葉を胸に刻み、吉居大和は走る。

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