同志社大・吉田陽菜、トリプルアクセルを磨いて目標の舞台へ 文武両道にも意欲
フィギュアスケート女子で、同志社大学1年の吉田陽菜(はな、木下アカデミー、中京大中京)は本格的にシニアデビューした昨シーズン、トリプルアクセル(3回転半)ジャンプを武器に、グランプリ(GP)ファイナル3位、初出場の世界選手権8位と躍進した。勉学にも意欲的な19歳は、文武両道で世界の舞台を目指す。
中学1年でトリプルアクセル成功
吉田は愛知県出身の19歳。2016年の全日本ノービス選手権Bで、2017年の同Aでそれぞれ優勝し、中学1年の2018年げんさんサマーカップでトリプルアクセルを成功させて注目を集めた。2020年春から木下アカデミーに所属し、その年の全日本ジュニア選手権で2位に。2022-23年シーズンはジュニアGPシリーズに初参戦し、ファイナルに進出し6位。さらに全日本選手権6位で四大陸選手権にも初出場した。
シニアに本格参戦した昨シーズンは、GPシリーズ初戦のスケートアメリカで4位、次戦の中国杯で優勝し、GPファイナルに進出。SP(ショートプログラム)とフリーで大技のトリプルアクセルに挑み、銅メダルを獲得、初の大舞台で飛躍した。
GPファイナルの成績などが評価され、世界選手権代表に選出。SP8位で臨んだフリーは、トリプルアクセルをわずかな回転不足ながらも着氷し、スピンはすべて最高のレベル4でそろえ、130.37点で6位。SPとの合計194.93点で総合8位に入り手応えを得た。「1年間ですごいたくさんの経験をさせていただいて、すごい濃いシーズンだった」と振り返った。
いまできることはどの試合も全力で戦うこと
吉田の武器はキレのあるトリプルアクセルだ。ジュニア時代からプログラムに入れ、試合で積極的に跳び続け習得してきた。「苦労するときもあるんですけど、いままでずっと挑戦してきて、これからも挑戦していきたいし、もっと自分のものにしていきたい」と話す。トリプルアクセルの精度を上げ、SPとフリー両方での成功で目指している。
シニアで戦う中で「一番足りない」と感じた部分が表現力だった。「もっと大人っぽく、もっと堂々とした演技をしたいなと思います。自分は技術点(TES)で戦っている部分が大きいので、演技構成点(PCS)はどの項目にも伸びしろがあると思うので磨いていきたいです」
今シーズンのSPはブノワ・リショー振付の「Temen Oblak-"Dark Clouds"Dark Clouds」で力強い曲調のプログラム。激しい動きのステップシークエンスは見どころの一つだ。フリーはローリー・ニコル振付の「悩める地球人からのS.O.S.」でボーカル入りのエモーショナルな曲。いずれも吉田の成長につながるプログラムになりそうだ。
プレオリンピックシーズンだが、「オリンピックは、まだまだ自分には見えない位置にある」と冷静に分析する。「大事なシーズンにはなると思うんですけど、いまできることはどの試合も全力で戦って少しずつでも上がっていくことだけだと思います。オリンピックが最終的な目標ではあるんですけど、その前の一日一日を大切にしていきたいです」
ヨーロッパに関心「授業が楽しい!」
今春、同志社大学グローバル地域文化学部に進学した。幼少期にインターナショナルスクールに在籍し、英語が話せる吉田。国際大会の経験も多く、海外の文化に触れる機会に恵まれてきた。「小さいときに色んな国のクラスメートと一緒に勉強していました。海外の方とコミュニケーションをとるのが好きなのと、海外の試合に行ったときに外国の文化や歴史により興味を持ち、もっと学びたいなと思ってこの学部を選びました」
中京大中京高校時代から学業との両立に努めてきた。当時、文武両道の目標にしているスケーターを問われた際には、同じ高校出身で、2022年世界ジュニア選手権銅メダリストの壷井達也(神戸大学4年、シスメックス)の名を挙げていた。
大学でもその姿勢は変わらない。「スケートはもちろん精一杯頑張りながら、視野を広げるためにも、勉強も頑張って両立したいです」と意欲的だ。
学部ではヨーロッパコースに所属している。「試合でいろんな国に行ってみて、ヨーロッパが特に好きでした。ヨーロッパの文化を政治や経済、宗教などいろんな視点から見たり、国際関係や国際問題とか、授業がすごい楽しいです!」と笑顔を見せる。世界一周の夢もひそかに抱いている。
京都市のキャンパスと宇治市のリンクを往復する日々。「一秒一秒を大切にする」ことを心がけて両立に励む。大学ではスケート以外の友人もできた。「新鮮な気持ち。この気持ちを忘れずに、スケートも勉強も大変ですが頑張りたいです」と目を輝かせる。
10月に開幕するGPシリーズは、第2戦スケートカナダと第5戦フィンランド大会にエントリーしている。GPシリーズ成績上位6人によるGPファイナルへの2年連続出場を目指す。
「昨シーズンはどの試合も全力を出し切るのを目標にやって、最後の世界選手権につながっていった」と吉田。夢舞台を目指し、今シーズンも全試合を全力で戦い抜く。