突き詰めた1センチ、光った日本の堅守 車いすラグビーで悲願の金
主将の池透暢(ゆきのぶ)は試合終了前から喜びを抑えるのに必死だった。過去6大会すべてでメダルを取っている米国に48―41の快勝。車いすラグビーの日本が6度目のパラリンピックで悲願の金メダルを手に入れた。
立ち上がりは硬さが目立った。パスが合わず、簡単にボールを失う。第1ピリオドは3点のリードを許した。
だが、ここから守備で形勢を逆転する。
際だったのが相手ボールのプレー再開直後。敵陣深くまで4人全員で追い込み、連係しながら相手のパス回しを封じた。第2ピリオドだけで2回のターンオーバーを奪い、逆に1点をリード。その後も圧力をかけ続けて相手のミスを誘い、点差を広げていった。
守備はパリに向けて、チームが重点的に磨いてきたポイントのひとつだ。
日本はこれまで実戦形式の練習を中心としてきたが、昨年就任した岸光太郎監督は違った。ワンプレーごとに区切り、ポジション取りや車いすの向きを1センチ単位で突き詰めることを求めた。「練習でやったな、と思いながらプレーできる」と倉橋香衣は手応えを口にした。
少なくないリードを許した第1ピリオドのあと、岸監督はこれまで繰り返してきた言葉を選手たちに投げかけた。「練習通りのプレーをしよう」
試合後、岸監督は報道陣に「いつもと同じ(言葉)で、面白くないですよね」とわびた。日本にとって初めての決勝でも、特別なことをする必要はなかった。地力でつかんだ金メダルだった。
(藤野隆晃)=朝日新聞デジタル2024年09月03日掲載