サッカー

筑波大DF福井啓太 MF角昂志郎と「対人の強さ」磨き、小学生から育ったRB大宮へ

2024年12月にあった筑波大のプロ内定選手記者会見で笑顔の福井啓太(すべて撮影・照屋健)

大学4年間で学んだことは何か――。

今季、筑波大学蹴球部からサッカーJ2のRB大宮アルディージャに加入したDF福井啓太(4年、富士見)に尋ねると、きっぱりと言った。

「サッカーのことも、ピッチ外のことでも、やったらやっただけ伸びるし、やらなければ落ちていくだけ。人間として成長したい、という選手は大学に行った方がいいのかなと思っています」

「絶対プロになる」と覚悟を持って大学へ

埼玉県出身。RB大宮のアカデミー組織で小学校から高校まで育ったが、高校3年のタイミングではプロになれなかった。

「自分の中では大きな挫折というか、自分の人生のターニングポイントだったと思う。でも、トップに上がれないことを告げられてから、自分は絶対プロになるという強い気持ちを持ってこの筑波大学にきた」

Jクラブのアカデミー組織とは違い、大学では個人に対してコーチがきめ細かく指導する場面は少ない。むしろ、筑波大では自主練習が多く、自らが考えて「個」を伸ばす時間が長くとられている。

福井が入学した当初、チームを率いる小井土正亮監督が部員に投げかけた言葉も、シンプルなものだった。

「三笘と山川は、毎日1対1やっていたぞ」

例に挙げたのは、同じく筑波大出身で、日本代表になったMF三笘薫(現・ブライトン)と、J1ヴィッセル神戸の連覇に貢献したDF山川哲史。同学年の2人が毎日のように練習後、サイドから1対1の攻防を繰り返す姿を、小井土監督は後輩たちに伝えた。

ユース時代を過ごしたRB大宮アルディージャでプロ生活を踏み出した

自分に足りないものが見つかった「3回勝負」

その話を聞いて福井が選んだ練習相手が、同じ学年にいたドリブラーで、J2ジュビロ磐田に入団が内定しているMF角昂志郎(4年、日大豊山)だった。

「三笘さんみたいにギュンギュンと突破してくるサイドの選手とやりたかったし、一番『ドリブル突破が嫌だな』と思っていた選手だった。『俺らもやろうぜ!』と言って、結構やっていました」

年代別の日本代表にも選ばれたアタッカーを相手に何度も練習することで、自分に足りないものが見つかる。練習後に行う最後の3回勝負で、どっちが勝つか。そんな日々を繰り返したことで、自身のストロングポイントを「対人の強さ」と言える自信もついた。

大学サッカーには、「お手本」が近くにいることも大きいのだという。

三笘をはじめ、歴代の先輩たちが取り組んできた陸上の専門家によるスプリントやフィジカルトレーニングを福井も試してみた。入学したばかりのころ、4年には日本代表に選ばれた経験もあるDF角田涼太朗(現・コルトレイク)がいた。同じセンターバックの選手として、ロングフィードの仕方をまねた。

小井土監督は「大学サッカーは人が成長する場所。自分に足りない物に自分で気づいて『考えて鍛える』ということは、プロの舞台に行っても、行かなくても大事なことですから」と語る。

小井土監督(右から3番目)の言葉を受け、角(同2番目)と1対1を繰り返して「個」を磨いた

後輩たちや親からのメッセージ動画に涙

福井は大学ラストイヤーで主将を務めた。100人を超える部員をまとめ、日本一を目指す。部員同士で意見をぶつけ合い、どうやったらより良い組織になるか、試行錯誤を重ねる。そうした日々も「良い思い出だった」と振り返る。

学生生活の集大成として臨んだ2024年12月の全日本大学サッカー選手権大会では、準々決勝で明治大学にPK戦の末敗れ、日本一には届かなかった。ただ、その後にあった納会では、同じトップチームでプレーした後輩たちや親からのメッセージが入った動画を見て胸が熱くなり、涙も流した。

「この1年を振り返って、頑張ってきてよかったな、と思ったし、またプロの世界でもう1回、頑張ろうと思った」

プロの世界に進むにあたって、小井土監督からは「環境は人が変えられる」という言葉をもらった。大学4年間も、プロの世界も同じ。自分にベクトルを向けて、行動することで、周囲も動かしていける、という意味だ。

「環境は人が変えられる」という言葉を胸に刻んでいる

元イタリア代表、ファビオ・カンナバーロに憧れて

RB大宮の練習には、すでに合流している。エナジードリンクで知られるレッドブルが親会社になり、新しくなったエンブレムのもと、ユニホームを着て新体制発表会見にも臨み、プロでの生活を実感している。

「(プロと学生で)求められることは多少、違うと思うんですけど、球際を厳しくいくところだったり、走るところだったりは筑波でも求められていた。良い意味で新しいアルディージャを見せられるこの1年が、本当に楽しみだなと思います」と抱負を口にする。

大学4年で得た経験を糧に、プロの世界へ。小柄ながら世界屈指のDFといわれた元イタリア代表のファビオ・カンナバーロが憧れというセンターバックは活躍を誓った。

RB大宮アルディージャのキックオフイベントでユニホームに袖を通した(中央が福井)

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