フィギュアスケート

法大の岡本真綸、地元・倉敷で成長した姿を 岡山県代表で国スポ出場「感動届けたい」

国民スポーツ大会に地元・岡山県代表として出場する法政大学の岡本真綸(すべて撮影・浅野有美)

国民スポーツ大会冬季大会スケート競技会が26日に開幕し、フィギュアスケートは27~30日、岡山県倉敷市のヘルスピア倉敷アイスアリーナで開催される。法政大学2年の岡本真綸(岡山理科大学附属)は成年女子の部で岡山県代表として出場する。スケートと出会い、高校生まで過ごした思い出の地で成長した姿を見せる。

憧れの高橋大輔さんを指導した長光歌子コーチに習う

国民スポーツ大会(国スポ)はフィギュアスケートでは珍しい団体戦で、各都道府県の代表2人が1組になって戦う。それぞれがショートプログラム(SP)とフリーの演技を行い、2人の総合成績の合計によって都道府県の順位が決まる。普段、リンクサイドにはコーチのみが付き添うが、国スポでは都道府県の監督や選手、クラブのチームメートが応援してくれるなど、試合の雰囲気がガラリと変わる。

今年の国スポは岡山県で開催される。岡本は、高校生まで過ごした地元・岡山県代表として出場できることに胸を弾ませている。

岡本がフィギュアスケートと出会ったのは、小学校1年生の冬。自宅の郵便ポストに入っていたスケート教室の案内チラシに目が留まった。会場の倉敷市のリンクは自宅から近いこともあり、まずは体験してみることにした。

リンクに乗ってみると楽しく、どんどんスケートの魅力にハマり、そのまま倉敷FSCに入会した。クラブには同学年の選手が多数在籍しており、切磋琢磨(せっさたくま)して練習に取り組んだ。

当時は自主練習が中心で少し伸び悩みを感じた岡本は、高いレベルの指導が受けられる先生に習うため、岡山市のリンクに通う時期もあった。しかし、憧れでもある倉敷FSC出身の高橋大輔さんを指導した長光歌子コーチに教わりたいと、関西大学たかつきアイスアリーナに通うことを決めた。

岡山県から大阪府に毎日通うことはできないが、週末や学校が早く終わる日などにレッスンを受けに行き、習ったことを倉敷市のリンクで復習する日々が続いた。コツコツと努力を重ね、地域の大会などで結果が出るようになった。あっという間に、全国から将来有望な選手が集まる、通称「野辺山合宿」に参加できるレベルまで成長した。

自信を持って参加した野辺山合宿では、2025年四大陸選手権代表の松生理乃(中京大中京、中京大学2年)や、2024年グランプリファイナル5位の吉田陽菜(はな、中京大中京、同志社大学1年)らと同じグループになり、生活を共にした。練習でのスピード感や技術力の高さ、スケートに対する意識など、トップ選手は基礎の部分から違うと気づかされ、大きな学びとなった。

「もっと努力を重ねないとみんなに追いつけない」。合宿から戻って以降、技術を1つでも自分のものにしようと自主練習に励んだ。地方大会では結果はついてくるものの、大きな舞台に立つと緊張で身体がこわばってしまい実力を出しきれないことが続いた。もどかしい気持ちもあったが、技術は確実に身についていると信じて練習を続けた。そして中学進学を前に、勉強とスケートを両立するため拠点を岡山県に絞る決断をした。

小学生の頃は岡山県と大阪府のリンクで練習に励んだ

MFアカデミーで刺激を受け、充実した日々

岡本の強みはダイナミックなジャンプで、ジュニアに上がった頃はジャンプの本数が多いフリーを得意にしていた。だんだんと失敗を恐れずトライできるようになり、大きな舞台でも結果がついてくるようになった。高校1年の時に出場した全国高校総体(インターハイ)ではSP24位から、フリーはミスのない演技で総合9位に入った。また学校別で競う団体でも2位に入り、岡本にとって自信がついた大会となった。

高校卒業後は法政大学に進学した。同大には通信課程に在籍しながら岡山県を拠点に活動している選手もいる。その中に岡本が知っている選手がいたことが決め手になった。

東京への憧れがあった岡本は上京を決め、千葉県船橋市のリンクを拠点とするMFアカデミーに移籍した。リンクに通いやすい場所に下宿し、都内のキャンパスには電車で通っている。今まで自転車もしくは両親の送迎で通学していた岡本は、電車通学時の人の多さに驚きを隠せなかった。また身の回りのことを自分自身で全てこなさなければならず、最初は食事面でとても苦労した。入学当初は環境の変化に身体がついていけず体調を崩しがちだったが、徐々に生活リズムをつかんでいった。

MFアカデミーではレベルの高い環境で練習できることがモチベーションになっている

文学部心理学科に所属しており、日常生活でふとした時に、講義で学んだことに関する発見があるなど気づきが多くて楽しいと感じている。またスポーツ推薦で入学した学生向けの講義もあり、スポーツの関連分野も勉強している。中でも栄養学は自炊している岡本にとってとても興味深い内容で、当初は苦手だった料理も、今では趣味と言えるレベルまで上手になった。

MFアカデミーでは、中四国九州選手権で面識があった中庭健介コーチをはじめ、多くのコーチからたくさんのことを日々吸収している。入った当初はテレビで見ていた選手が目の前で練習していることや選手の技術の高さに、ただ圧倒されていた。次第にレベルの高い環境で練習できることがモチベーションにつながり、今では刺激をもらいながら、充実した練習ができているという。

「全力でやり切ったと思えるスケート人生にしたい」

昨シーズンはシニアへの移行も考えたが、苦手意識があるスケーティング面や演技面において、シニアで戦うには力が足りないと感じ、ジュニアに残ることにした。全日本ジュニア選手権には進出できなかったが、やるべき課題も見え、収穫のある1年となった。

今シーズンからシニアに上がり、初の全日本選手権出場をかけて東日本選手権に出場。SPでは良い演技ができたが、フリーでは力が入ってしまい、全日本出場はかなわなかった。しかし、昨シーズンよりジャンプが安定し、表現面やスケーティング面で徐々に点数が上がってきているなど、少しずつ成長を感じている。

選手としては大学卒業を区切りにしようと考えている。それまでに全日本に出場し、フリーを滑ることが目標だ。

卒業まで残り2シーズン。「全力でやり切ったと思えるスケート人生にしたい」という思いを胸にリンクへ通う。

表現やスケーティングで成長を感じている

今シーズン最後の大きな大会である国スポは、スケートを始めた倉敷市のリンクで開催され、大会にかける思いは誰よりも強い。

「応援してくださる方へ感動を届ける演技をして、同じ岡山県代表の三宅咲綺(岡山理科大学附属、岡山理科大学4年)と共にいい結果を出すこと」が目標だ。

昨シーズンから継続のSP「江」は、以前から使ってみたかった曲の1つで、和風の衣装で踊りたいという思いもあった。振り付けは鈴木明子さんが担当した。ステップでは音にはめた動きがちりばめられており、曲の盛り上がりに合わせた動きが見せ場だ。

フリーも同じく鈴木さんの振り付けの「WE./What Is Love?」。幼い頃から共に練習してきた杉山匠海(たくみ、就実学園、岡山大学4年)が選んでくれた曲だ。競技生活の終わりが見え始め、「自分に合う曲はなんだろう」と考えた時、自分の特徴を理解し、生かしてくれると思い、杉山に相談した。

杉山は岡本に合う曲を選び、さらに編曲もしてくれた。「コレオシークエンスやステップで盛り上がる部分ではしっかりと魅(み)せて、最後に入れたビールマンスピンで見せ場になるようにしたい」と意気込む。

上京してからは西日本で演技を披露する機会はほとんどなかった岡本。地元・倉敷市のリンクで一回りも二回りも成長した姿を見せてくれるだろう。

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