フィギュアスケート

法大・門脇慧丞が「滑走屋」出演 高橋大輔さんからオファー 「精いっぱい務めたい」

インカレで法政大学の団体優勝に貢献した門脇慧丞(すべて撮影・浅野有美)

1月に行われたフィギュアスケートの日本学生氷上選手権大会(全日本インカレ)で、男子7・8級の団体優勝に貢献したのが、法政大学3年の門脇慧丞(けいすけ、岡山理大附属)だ。シニア2年目の今シーズン、初の全日本選手権出場を果たした。2月10~12日にプロフィギュアスケーターの高橋大輔さんがプロデュースするアイスショー「滑走屋」に出演予定で、今後の成長が楽しみな選手だ。

高校時代から岡山で一人暮らし、スケートに集中

幼い頃、皮膚が弱かった門脇は、汗をあまりかかないようにしていた。その中で取り組めるスポーツを探したところ、フィギュアスケートに出会った。最初はスケート教室に通う程度であったが、次第にのめり込んでいった。他にたくさんの習い事をしていたが全てやめて、スケート漬けの日々を過ごすことになった。

当時通っていた島根県出雲市のスケートリンクはシーズンリンクで、閉鎖している夏季は県外まで通わなければならなかった。その中で一番近い岡山国際スケートリンク(岡山市)まで片道4時間。学校が終わるなり両親が運転する車に乗り、練習が終わってすぐに帰路に着く。練習時間よりも移動時間が長いことの方がほとんどであったが、両親は嫌な顔をせず門脇がやりたいことを応援してくれた。

縁があり練習拠点を岡山市に移したため、冬季に島根のリンクがオープンしても毎日岡山まで通っていた。初めて全国大会に出たのはノービスB2年目の時だ。最後のポーズを反対向きで終わってしまうほど緊張していたが、全国レベルの高さを知ったのと同時に、家から程よい距離にある通年リンクで練習する選手がうらやましくもあった。氷に乗れない日は陸上トレーニングで補い、氷に乗れる日は全力で取り組む。その生活は中学卒業まで続いた。

高校卒業まで岡山を拠点にスケートに打ち込んできた

高校は両親と相談し、平昌オリンピック男子代表の田中刑事さんらを輩出した岡山理大附属高校に進学。それを機に一人暮らしもスタートさせた。とはいえ、定期的に母親が家に来て、おかずを冷凍しておいてくれるなど、スケートに集中できるようにサポートしてくれた。

スケートに打ち込める環境が整ったことで、門脇の成績は瞬く間に伸びた。ジュニアに上がった頃はとにかく全日本ジュニア選手権に出ることが目標であったが、徐々に成果に結びつくようになり、ジュニア最後の2年間は結果にこだわるようになった。そして高校3年のシーズンの全日本ジュニアで8位入賞を果たし、翌シーズンの強化選手に選ばれた。

全日本に初出場、インカレ団体優勝にも貢献

FISUワールドユニバーシティゲームズやインカレなど学生の大会に出場したいという思いから、かねてより大学進学は考えていた。学業とスケートの両立を考え様々な大学を調べ、通信で学べる法政大学に進学を決めた。

練習を軸に授業のスケジュールを決められるものの、単位の取得には少し苦戦中だ。しかし、拠点リンクと大学が同じで、2023年世界ジュニア選手権銅メダリストの吉岡希(のぞむ、2年、西宮甲英)と一緒に課題などに取り組み、充実した日々を過ごしている。

4回転ジャンプの練習をするなど、いよいよこれからという時にケガに見舞われ、自分の本来の実力が出せないまま終わる試合が続いた。また、自分では練習で完璧だと思っていても、ここぞという場面で力を出せず、シニアに上がった大学2年のシーズンでは東日本選手権で予選落ち。全日本選手権出場は叶(かな)わなかった。大会直後は悔しさや自分へのいらだちなどもあり冷静に話ができる状態ではなかったが、「何かを変えないといけない」と考え始めていた。

そして今シーズン、長年拠点を置いていた岡山市から、同じ県内にある倉敷市のリンクへ拠点を移すことを決意した。そこでは男子選手が多く練習しており、櫛田一樹(関西学院大学卒)やジュニアの小河原泉颯(いぶき)ら同じようなレベルの選手も在籍していた。

林祐輔コーチのもと、チームメートと切磋琢磨(せっさたくま)し、自然と練習へのモチベーションも上がってきた。疲れていても他の選手が難しい技を練習していると門脇も感化され、とても刺激になっているという。全日本出場を目標に、なくしていた自信を取り戻すべく、厳しい練習にも取り組んだ。その甲斐(かい)あって東日本を突破。ついに全日本への切符を手にすることができた。

初めての全日本は、過去の試合で何度も訪れたことがある長野市のビッグハット。緊張することもなく挑んだショートプログラムでは終始楽しく演技できた。ほぼノーミスではあったが、26位でフリーに進むことはできなかった。

しかし、自信が戻ってきている手応えは感じており、年明けに行われたインカレでは、法政大学の団体優勝に貢献。ここ2年間は結果がついてこず、試合前になると不安になる気持ちに押しつぶされていたが、ようやくスランプから抜け出せたと実感することができた。

インカレ男子団体の表彰式。左から門脇、鈴木楽人、吉岡希

来シーズンの目標は全日本出場と強化選手入り

今シーズンの試合は全て終え、今は2月10日に福岡市で開幕する高橋大輔さんプロデュースのアイスショー「滑走屋」に出演するため、日々練習に取り組んでいる。「滑走屋」の情報が解禁された頃、「出演スケーターを募集しているとから応募してみては?」と母親から連絡があったが、門脇自身はおこがましくて応募できるわけがないと見送っていた。

しかし、昨年11月の東日本終了後に高橋さんから直々にオファーがあり、「選んでいただいたのであれば……」と、アンサンブルスケーターとして出演することに決めた。「(自分の)試合を見てくださっていただけでもうれしい」と話すが、「期待に応えられるよう、与えられた役割を精いっぱい務めたい」と意気込む。

出演するアンサンブルスケーターの多くは、中四国九州ブロックで練習をしている選手たちだ。特に、中四国地方はオフシーズンに営業しているリンクが岡山県しかなく、そこでよく顔を合わせている旧知の仲だ。「よく知るスケーターたちと一緒に作品を作り上げるのが楽しみ」と、目を輝かせていた。

アイスショー「滑走屋」に向けて練習に励む

来シーズンの目標は、全日本出場はもちろん、さらに結果を残して強化選手に選ばれることだ。今シーズンは目標だった全日本の舞台に立ったものの、「本当に出場しただけになってしまった」と、反省の意を込めて目標を立てた。

アイスショーで魅(み)せることを勉強し、さらにトップスケーターとともに過ごすことで、新たな気づきもあるだろう。たくさんの経験を経て、来シーズンには一回り成長した姿が見られることを楽しみにしている。

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