フィギュアスケート

法政大・渡辺倫果、フリーでスケート人生描く 暗黒時代からの飛躍、そして夢に向かう

2023年世界選手権に初出場した法政大学の渡辺倫果(撮影・朝日新聞社)

2022年9月のチャレンジャーズシリーズ・ロンバルディア杯優勝をきっかけに、グランプリ(GP)ファイナル進出、四大陸選手権、世界選手権出場と、一気にトップスケーターへの道を駆け上がった渡辺倫果(TOKIOインカラミ/法政大学)。その活躍があり、今季はオフシーズンから多くのアイスショーに出演した。2年連続のGPファイナル進出は逃したが、12月21日に開幕する全日本フィギュアスケート選手権で再び世界選手権代表入りを目指す。

初の世界選手権は10位、悔しさが残った

2022~23年は快進撃のシーズンだった。22年9月のチャレンジャーズシリーズ・ロンバルディア杯を初制覇。初出場したGPシリーズスケートカナダでショートプログラム(SP)6位から逆転優勝を飾った。欠場選手が出たことから2戦目のNHK杯出場が決まり、SP9位からフリー3位と巻き返して総合5位。GPファイナルに進出し、四大陸選手権、世界選手権にも出場を果たした。

特に記憶に残ったのが、23年3月にさいたま市で行われた世界選手権だ。「出場するまでは夢のような舞台という位置づけでした。日本開催というのもあって、声援をたくさん頂きました。全日本選手権とはまた違った独特の雰囲気がすごく印象に残っています。その雰囲気を楽しむこともできました」

大舞台には立てたが、SP15位と出遅れ、フリー7位で総合10位。実力を発揮できず悔しさが残った。

「シニアの主要大会すべてに出場でき、この経験が今、そして今後につながってくると思います」と振り返った。

スケートカナダで初優勝し、喜びを爆発させた(撮影・朝日新聞社)

アイスショー出演「表現の幅が広がった」

22~23年シーズンの活躍があり、オフシーズンは多くのアイスショーに出演した。4月の「スターズ・オン・アイス」、5月の「アイスエクスプロージョン」、6~7月の「ドリーム・オン・アイス」、8~9月の「ワンピース・オン・アイス」。前シーズンの1回と比べると出演回数が一気に増え、まさに“ブレーク”したと言える。

人気アニメのアイスショーとして話題になった「ワンピース・オン・アイス」ではチョッパー役を演じた。世界選手権2連覇中の宇野昌磨(トヨタ自動車)や、引退したオリンピック元日本代表の田中刑事らと2カ月間みっちり練習。「一つの作品を作り上げる“仲間”として過ごすことができました」と笑顔を見せる。

最初は役に入り込むのに苦労し、試行錯誤を繰り返した。「チョッパーは仲間に加わった時点では感情がそれほど豊かではなく、そこからどう立ち回って、どう仲間のために戦っていくか、複雑な感情を表現しなければいけませんでした。ですが、過去の苦しい経験を含めて前に進んでいくチョッパーの役は、自分のスケート人生と重なる部分がありました」

アイスショーを通して表現面で成長できた。「アイスショーは360度お客さんに囲まれている中で、自分がどういうものを伝えたいかを見せるのが重要視されていると思います。多くのアイスショーに出演して表現の幅が広がりましたし、役に入るという面で役に立ちました」と話し、充実したオフシーズンを過ごした。

多くのアイスショーに出演し、表現面で成長した(撮影・朝日新聞社)

渡辺倫果は世界で一人。壮大に表現して

自分のスケート人生をプログラムと重ねる。その経験は今季のフリーのテーマにもつながっている。

シェイリーン・ボーンさん振り付けの「Brotsjor, Goliath, Meeting Laura(Perfume - The Story of a Murderer), November」は、まさに自分のスケート人生を写し出す作品だ。

シェイリーンさんからは、「木や葉っぱが1枚1枚違っているように、渡辺倫果は世界で一人。それを壮大に、そして自分の思いを全面に出して表現してほしい。これまでの過程で感じたこと、触れたものをこのプログラムに落とし込んでほしい」と言われたという。

プログラムは砂嵐のような音から始まり、ジュニア時代の「暗黒時代」を描き、終盤はGPシリーズの派遣がない状態から世界選手権出場まで飛躍を遂げた昨季の気持ちを表現する。

「フリーは複数の曲が組み合わさっているのですが、最初の部分は自分が選びました。ステップシークエンスでは夢見ていた舞台に行けた喜び、今後もっともっと自分の夢に向かって歩き続けていきたい思いが込められています」

SPの「映画『アバター』より」もスケール感がある作品だ。宮本賢二さんが振り付けを担当した。「壮大な“世界線”をやりたいと思っていて、母親から映画の中から探してみたらと言われて、『アバター』の最新作を見て、直感で決めました」

ステップシークエンスには工夫を凝らした。通常なら左回転を多めに入れてレベルを取りやすくするが、アバターの並外れた身体能力を表現するために、左回転と右回転を交互に入れている。オフシーズンに伸ばしてきた演技力で映画の世界に引き込んでいく。

今季のSPは映画「アバター」より。母が手作りした衣装で舞う(撮影・浅野有美)

今季のテーマは「自分の思いのままにやること」

渡辺の競技人生における最大の目標、2026年の冬季オリンピック出場に向けては、これからの1年1年がますます大事になる。

「昨季は常に全力で、ピークをどこに合わせていいかわからない状態でした。今季はピークをちゃんと見定めていきたいです。トリプルアクセルも、理想はSPとフリーで計3本入れることですが、その時の調子もあり、どういう大会で入れるべきで、どういう大会で入れるべきでないかも1つの作戦だと思います。そこを落ち着いて考えてやっていきたいです」

目標にはどれくらい近づいたのか? その答えは「あまり昨季と変わらない」だった。

昨季は貴重な経験をたくさん積んだが、悩んだり考えたりする機会も増えた。今季は「自分の思いのままにやること」をテーマに掲げている。「周りをあまり気にせず、自分のやりたいことを確実に落ち着いてやっていきたいです。目標を一つずつ叶(かな)えていった先に、少しずつオリンピックに近づいていけると考えています」

今季のGPシリーズは、中国杯で2位と表彰台に上がったが、スケートカナダは6位に終わり、ファイナル進出を逃した。今季の最大の目標である世界選手権に出場するためには、12月21日から始まる全日本選手権で結果を残すことが求められる。

世界選手権の開催地カナダは、渡辺が中学から高校まで練習拠点にしていた「第2の故郷」だ。思い出の地で成長した姿を見せるため、そして目標に一歩でも近づくため、全力で全日本に向かう。

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