ラクロス

特集:駆け抜けた4years.2025

明治大学・松山皓星、学生主体で大会を運営「観客にも運営側にも感動体験を」

全日本大学選手権の東京会場責任者を務めた明治大学の松山皓星(撮影・浅野有美)

昨年12月、ラクロスの全日本大学選手権大会(インカレ)が東京・スピアーズえどりくフィールド(江戸川区陸上競技場)であり、男子は慶應義塾大学が2大会ぶり7回目の優勝、女子は早稲田大学が初優勝を飾った。大学最高峰の舞台を支えていたのが各大学から選出された日本学生ラクロス連盟のメンバーだ。東京会場責任者の明治大学4年の松山皓星(明大明治)もその一人。競技だけでなく、大会運営にも携わる醍醐味(だいごみ)を語ってくれた。

日本一を目指せる環境があった

昨年12月15日に行われた全日本大学選手権決勝。松山は関係者との連絡や表彰式の対応で駆け回っていた。明大男子ラクロス部HUSKIESのDF(ディフェンス)としてプレー。9月に引退試合を終え、この日は大会を運営する東京会場責任者として躍動した。

松山は大学でラクロスを始めた。「母親の職場の元同僚が『ラクロス面白いよ』という話をしてくれていて、高校時代の先輩からの誘いもあって入ってみようと思いました」

高校時代はソフトテニス部だったが、当時はコロナ禍で満足いくまで競技に取り組めなかった。全国高校総合体育大会(インターハイ)などが中止になり、日本一を目指す舞台もなくなった。

そこで出会ったのがラクロスだった。「大学で初心者から始められる競技はアメフトやラクロスくらい。日本一を目指せる環境がいろんな大学に存在しているのがラクロスの魅力の一つでした。それに加えて学生主体で部活動を回しているのがすごく面白いと思いました」

HUSKIESは、約100人の選手と20人のスタッフ、日本代表経験があるコーチや外部トレーナーなどが所属する大所帯。2022年度の全日本大学選手権では準優勝を果たしている。松山は2年時に他大学や社会人と練習試合や合同練習を組む渉外担当として活動。3年時にAチームのDFとして活躍し、4年時はBチームで後輩の育成を行いながらAチームのチームスタッフとして携わった。

HUSKIESではAチームに所属し、DFとして活躍した(撮影・小林航)

学生連盟の活動に従事、意識改革に取り組む

競技に打ち込む一方、興味を持ったのが日本学生連盟の活動だった。

大学ラクロスは「学生主体」の文化で、部活動だけでなく大会の運営にも学生たちが主体的に携わる。

松山が所属する日本学生ラクロス連盟東日本支部には、リーグ戦を運営する大会委員会、新入生向けの合宿や新人戦を実施する新人委員会、対外的な情報発信や大会集客を担う広報委員会があり、委員は各大学から選出される。3委員会を統括する執行部では学生主体で運営できる環境を整備したり、競技の知名度アップや競技人口の増加に向けた取り組みを行ったりしている。

松山は2年時に大会委員として、全日本選手権大会などの運営を担当。3年時は幹部として各大学の大会委員の育成に注力し、関東リーグ戦の準決勝や決勝、全日本大学選手権の東京会場統括の補佐を務めた。大きな大会を1から作る楽しさと達成感に魅力を感じ、4年時は執行部で活動した。

大会の会場設営や集客、広報、各大会の統括に尽力し、昨年10月に大井ホッケー場で行われた関東リーグ戦の準決勝では6000人以上の来場者を集めた。全日本大学選手権の準決勝と決勝では会場責任者として奔走。とくに決勝は約4000人の観客が詰めかけ、大盛況だった。

インカレ決勝の会場で、松山(中央)は大会運営に奔走していた(撮影・浅野有美)

今大会の運営に携わった学生は167人。松山を含め6人が中心メンバーとして大組織を束ねた。「今年7月の関東リーグ戦が始まったときから、インカレに向けて意識を高めるように後輩たちに働きかけてきました。『全員が当事者意識を持ってやろう』という話を何度もしました。観客だけでなく、運営している側にもこの会場を自分たちが作っているんだという感動体験を味わってほしいと思っていました」

最初は後輩全員が指示待ち状態。松山がトランシーバーやLINEで頻繁に指示を送っていたが、次第に自分たちで状況を判断し、考えて行動できるようになったという。「いまでは自分が指示しなくても動いてくれている後輩たちがたくさんいます。当事者意識を持つように変えられたのは大きな成果だったのかなと思います」とほほえんだ。

何かプラスアルファの経験を提供したい

日本学生連盟の活動を通じて自分自身も成長できた。「いろんな大学から多くの学生が主体的に関わって、ここまで大きな大会をつくり上げるという経験ができるのはラクロスの大きな魅力だと思います。いろんな価値観と巡り合えました」

大学から始める人が多いことから「カレッジスポーツ」と呼ばれるラクロス。その競技環境は様々だ。初心者の1年生をリーグ戦に出さないと成り立たないチーム、そもそも人数が足りず他大学と合同で組んでいるチーム、人数は多いがチーム内で技術格差が激しいチーム……。「様々な環境がある中で運営に来てくれる委員幹部がいる以上、全員に何かプラスアルファの経験をさせてあげたい、その思いでやってきました」と振り返る。

「後輩たちから、自分が考えてもいなかったアイデアや運営への思いを熱弁されたら自分もうれしいし、自分の学びにもなります。ただ指示を待つだけだった自分が、主体的にかつ誰かに自分の面白いと思うことを共有して一緒になって楽しみたいと、本気で思えるようになれた。そんな4年間だったと思います」

日本学生連盟で大会運営に携わり、いろいろな価値観に出会えた(本人提供)

大学卒業後は広告会社に就職する。「いろいろことに興味をもって経験し、周りの人間だけでなく全国の人たちにプラスアルファの経験を提供できるような広告作りに携わりたい」と目を輝かせる。ラクロスを通じて組織運営に取り組んだ経験を生かし、次は営業マンとして新しいフィールドに立つ。

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