高校代表SH川端隆馬・後藤快斗「仲が良いけどライバル」早大・明大に分かれ第二幕へ

多くの日本代表を輩出してきたラグビーの高校日本代表が今年も編成された。3月10日から、「花園」こと全国高校ラグビー大会や合宿などを経て選ばれた第50期29人が〝母国〟イングランドに遠征している。プロクラブのアカデミーチームなどと2試合戦ってから、3月22日、イングランドU19代表とテストマッチを行う。
29人の中で、同じスクラムハーフ(SH)として高校日本代表に選ばれ、「仲が良いけどライバルです」と声をそろえたのは、花園で連覇した桐蔭学園(神奈川)のSH後藤快斗(3年)と、春の選抜大会やサニックスワールドユースを制した大阪桐蔭(大阪)のSH川端隆馬(3年)だ。高校時代は好敵手としてしのぎを削ってきた2人は、高校最後の試合は同じチームで「打倒・イングランド」を目指し、4月からは明治大学と早稲田大学に進学し、再びライバルとなる。
出会いは2年前U17代表で すでにライバル
後藤は熊本県出身。幼少の頃から福岡・かしいヤングラガーズで競技を始めたが、福岡県選抜に選ばれることはなかった。また川端は大阪・生野ラグビースクールでラグビーを始め、大阪・東生野中学でプレーし大阪選抜に選ばれて全国大会に出場したが、中学時代はお互いに認識していなかったという。

2人が初めて出会ったのは2年前。初めて桜のエンブレムがついたジャージーで戦うU17日本代表に選ばれた時だった。
U17中国代表とU17韓国代表に快勝したが、川端9番、後藤が21番を背負った。川端が高校1年から試合に出ていたため、後藤は「うまいハーフがいるということは知っていました。大会後も連絡を取り合うようになった」と言えば、川端は「ホテルの部屋が一緒やったので仲良くなって話すようになりましたが、勝負は勝負なので、ライバル心を持っていた」と話した。
高校2年時の花園は準決勝で対戦し桐蔭学園が大阪桐蔭に25-0で快勝したが、後藤が21番で、先発で出場した川端が途中で交代したため、直接対決はほぼ5分ほどだった。「先発で出られず、ちょっと悔しかった」(後藤)


高3は痛み分け 川端は二冠、後藤は花園連覇
しかし新3年生になると、ともに「9」番を背負いチームの中軸となった。「昨季は桐蔭学園に花園でやられて悔しい気持ちで新チームに臨んだ」(川端)という大阪桐蔭が、3月の春の選抜大会、5月のサニックスワールドユースでともに決勝で桐蔭学園を下して「二冠」を達成した。
大阪桐蔭に連敗した桐蔭学園の後藤は「僕の中では、チームが負けているということはスクラムハーフの部分で負けていると思って、ずっと超えようと思って1年間、練習をやってきた」と振り返った。特に後藤は3年の秋には主将、副将がケガをしたこともあり、チームのリーダーの一人に指名されて、藤原秀之監督が「春から一番成長した選手」と名指ししたほどの進化を遂げた。

昨年12月、3年時の花園で大阪桐蔭、桐蔭学園ともにAシードに選ばれ、ともに優勝候補と目されていた。花園はベスト8が出そろった後に再抽選を行うが、その抽選の結果、両校は準々決勝で激突することになった。川端は「まさかここ(ベスト8)で対戦するとは思っていなかった」という。
初の15人制の「三冠」を目指す大阪桐蔭が、試合開始早々に2トライを挙げて0-14と先行した。しかしそこから桐蔭学園がゲームを支配して逆転し26-14で勝利した。その勢いのまま桐蔭学園は準決勝で國學院栃木(栃木)、決勝は東海大大阪仰星(大阪)に勝利して、連覇を達成した。
川端は「追われる立場で1年間、練習してきました。僕は決勝のカードと思って臨んだが、最後は桐蔭学園さんが仕上げてきたのを感じて、負けて悔しい思いで終わってしまった」と表情を曇らせれば、後藤は「1年間、やってきたことが形になったし、ずっと大阪桐蔭に負けていたのでチームで勝ててうれしかった!」と破顔した。

「敵として嫌な選手」「尊敬している」お互い褒め合い
花園が終わると、1月には高校代表候補の内部合宿でセレクションマッチがあり、そこでも再びマッチアップした。「同じポジションを目指すライバルだが、いっしょに選ばれよう」という話をしていた2人は、見事に高校日本代表29人に選出された。「お互いに気づいたりすることやアドバイスことがあれば伝えたいし、それが互いの成長につながると思います」(後藤)
そんな2人に互いの長所を聞くと後藤は「(川端は)球さばきしている中で、ミスが少ない。また非常に前が見えていて、FWの使い方もうまく、(スペースが)空いていたら自分で走っていく。自分が敵だったら本当に嫌な選手です」と言えば、川端は「自分から仕掛けるところなどはプレースタイルがちょっと似ているところがありますが、後藤はキックがうまいし、自分にないところは尊敬しています」と褒めた。
川端は早大、後藤は明大 早明戦経て桜のジャージーめざす
高校日本代表では同じチームとなったが、2人はともに関東大学対抗戦の強豪に進学し、4月から再び敵として対戦する。川端は昨季、能力のあるSHが2人も卒業した早稲田大ラグビー部に、後藤は明治大ラグビー部に入部する。
明治大に進学する後藤は「川端は大学に入ってもすぐに試合に出ると思うので、自分も1日でも早く紫紺のジャージーを着られるように努力していきたい。自分の強みはキックもありますが、球さばきしている中でまだミスしてしまうので、少しでも早く同じ舞台に試合に出られるように頑張っていきたい」と意気込んだ。

早稲田大に進むSH川端は「自分はテンポのあるさばきと鋭い仕掛けが強みなので、入部したら、1年から、一刻でも早くアカクロのジャージーを着られるように頑張っていきたい。また早明戦という伝統ある舞台があるので、(後藤と)同じ9番を背負って出たい気持ちがあります」と前を向いた。

ラグビー選手としての将来の目標も同じで、川端が「桜のジャージーを着て、ワールドカップに出たい」と言えば、後藤も「自分も日本代表の9番を着て、ワールドカップで一番良い成績を収めるチームのスクラムハーフになりたい」と先を見据えた。
桜のジャージーを目指すライバルSHの2人は、高校に続いて大学でも早稲田大と明治大のライバル校に入学して切磋琢磨(せっさたくま)しつつ、今から「早明戦」で9番を背負って相対することを心待ちにしている。

