ラグビー

佐賀工業の井上達木・服部亮太 高校日本代表のハーフ団を狙う、小中高幼なじみコンビ

4月から別のチームでプレーする2人。高校生活最後に高校日本代表でハーフ団を組めるか(すべて撮影・斉藤健仁)

桐蔭学園(神奈川)の春、冬の「2冠」で幕を閉じた23年度の高校ラグビー。その中でも大きな存在感を示したチームの一つが、夏の7人制ラグビー(セブンズ)の全国大会で初の高校日本一に輝き、冬の「花園」こと全国高校ラグビー大会でも23大会ぶりにベスト4に進出した佐賀工業(佐賀)だった。元日本代表FB五郎丸歩さん(現・静岡ブルーレヴズCRO)の母校としても知られる全国的強豪である。

ハーフ団を組み、花園で23季ぶりベスト4

そんな佐賀工業でBKの中心選手として3年間引っ張ってきたのがSH井上達木、そしてSO服部亮太の2人だった。2人は同じ福岡県北九州市八幡西区出身で、地元のラグビースクール「帆柱ヤングラガーズ」から数えて、12年間、同じチームでプレーを続けてきた幼なじみだ。小学校1年の頃、初めて会ったときのことは互いに「覚えていないですね」と笑った。

左足のキックが武器で「五郎丸2世」とも呼ばれていた身長173cmの井上は、今季から「将来を考えて」FBからSHに転向したことで、服部と9、10番のハーフ団として花園に臨んだ。目標はもちろん花園で初の日本一だった。2人でハーフ団を組むのは中学校2年生以来だったという。

ヤマハ発動機の五郎丸歩、トップリーグを引っ張ってきたFBの最後の雄姿を見逃すな
23シーズンぶりに花園でベスト4に入った佐賀工業

優勝候補の筆頭で3チームしかないAシードに選ばれた佐賀工業は、その責務を果たし23シーズンぶりにベスト4に進出したが、1月5日の準決勝で、九州のライバルであり同じAシードの東福岡(福岡)に28-50で敗戦し涙をのんだ。

SH井上は「花園ではチームのために身体を張ると決めていた。(準決勝では)自分たちの『不撓不屈(ふとうふくつ)』のラグビーを最後は見せられたが、最初から見せて勝ちたかった。(Aシードに選ばれて)自分たちでプレッシャーをかけてしまったかな……」と言えば、SO服部は「セブンズで優勝することができて自信になり、一昨季、昨季の先輩はベスト8だったのでその壁を越えてベスト4まで行けたのはうれしかったが、優勝するという目標を達成できずに悔しかった」と振り返った。

エディーさんの御前試合で躍動

2人は高校卒業前にもう一つのチャレンジに挑んでいた。1月25日から27日にかけて東京都内で行われた高校日本代表候補合宿に参加。セレクションマッチには日本代表の指揮官に再び就任したエディー・ジョーンズHCも視察に訪れた。

SO、FBの両方でプレーし非凡なところを見せた服部
セブンズの遠征から戻ったばかりでもいい動きをしていたSH井上

セレクションマッチでは2人は別チームで出場していたため、ハーフ団を組むことはなかったものの、服部が前半はSOで出場しキックパスでトライを演出し、FBで出場した後半にはトライを挙げるなど花園でも見せたスキルの高さ、視野の広さを披露。7人制ラグビーのユースチームの遠征でフィジー帰りのため後半からの出場だったSH井上は、疲れを見せることなく積極的に仕掛けてチームの勝利に貢献した。

SO服部は「(ジョーンズHCが)みんなの前で、ディフェンスで歩くな、と言っていたことが心に刺さりましたね」と言えば、SH井上は「エディーさんに見てもらえて、代表に入るいいチャンスだと思うので、今後も成長していきたい!」と前を向いた。

日本代表のジョーンズHCが視察に。隣はU20日本代表の大久保HC

大学は別々に 「敵になるのは新鮮」

親元を離れて一緒に進学した佐賀工業での3年間を振り返って、SH井上は「ラグビーに熱意がある先生たちとコミュニケーションしながら、3年間、努力することができた。『50:22』という新しいルールができたので3年間でキックが上達することができました」、SO服部は「高校入学した当初は身長163cmだったが、15cmほど伸びました。サイズがなかったので、どうしたらいいかと考えて自分に必要なものを身につけることができた。花園では毎年違うプレーができて楽しかった!」と胸を張った。

「ヘッドコンタクトプロセス」「50:22」とは 大学でも対応が求められる新ルール
井上はキックが武器。佐賀工業の先輩になぞらえ「五郎丸2世」と呼ばれることも
花園では準決勝敗退。「優勝するという目標を達成できずに悔しかった」と服部

2人とも関東大学ラグビー対抗戦の強豪への進学を選び、SH井上は筑波大、SO服部は早稲田大と、大学からは別々のチームでプレーすることになる。

SO服部は「お互いにスクールから高校にかけて一緒にやってきたことを、大学でも1年から生かせていければいいなと思います。大学はともに関東対抗戦なので井上と敵になるのは新鮮ですね」と言えば、井上は「もっと服部とプレーしたかったですが(苦笑)、1年生からスタメンを狙いたい。まずは4月のセブンズから出場して、春季大会でもいい成績を残して、夏合宿や対抗戦に向けてやっていきたい。チームを日本一に導きたい」と意気込んだ。

高校最後の目標は、代表選出とイタリア戦勝利

ラグビーの高校日本代表は例年と同じ26名が選ばれる予定で、もし2人が選ばれれば3月20、24日にアウェーでU19イタリア代表と対戦する予定だ。

夏のセブンズでは初の日本一に輝き、服部はMVPに選ばれた
将来を見据え、今季からSHに転向した井上

SH井上は「服部とは大学では違う道にいきますが、(その前に)高校日本代表でハーフ団を組むのが今の目標です。いっしょに選ばれたい」と言えば、SO服部も「(高校と)コールとか違うのでやりにくさもありますが、違う楽しみもあります。佐賀工業のメンバーでみんな一緒に高校日本代表に選ばれて、(井上と)とハーフ団を組めたらいいな」と笑顔を見せた。

高校生活の有終の美を飾り、大学生活に向けた最高の一歩を踏み出すためにも、2人そろって高校日本代表のハーフ団に選ばれ、イタリア代表から勝利を奪いたい。

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