ラグビー

長崎南山高PR本山佳龍 「世界のトップに行くために」プロと大学進学の二刀流に挑戦

U19合宿での長崎南山3年・PR本山。リーグワンの静岡ブルーレヴズへ入団する(すべて撮影・斉藤健仁)

中学までは相撲とラグビーの〝二刀流〟で活躍し、長崎南山高校でラグビーに専念した右PR本山佳龍(けいたつ)。身長187cm、体重118kgと恵まれた体格で、U17・U19・高校の日本代表に選ばれた逸材は、ラグビーの強豪大学からも誘われたが、リーグワンの静岡ブルーレヴズとプロ選手として契約し、春からは静岡産業大学にも通い、ラグビーと勉学の〝二刀流〟にチャレンジする。

U19と高校の日本代表選出、リーグワン・静岡とプロ契約

今季は「花園」こと全国高校ラグビー大会に出場できなかった本山だが、大学1年生中心のU19日本代表へ昨年12月に選出され、2月1日には高校日本代表にも選出された。さらに日本代表エディー・ジョーンズHC肝いりの「JAPAN TALENT SQUADプログラム2025」にも高校生FWとしては唯一選ばれた。

1月26日からの高校日本代表候補合宿に参加した本山は「まだまだ力が出せなかった部分があるが、レベルの高いチームでやれて良い刺激になったし、やっていて楽しい! U19日本代表での経験がスピードやスクラムの部分で生かされていると思います」と声を弾ませた。

1月23日、リーグワン・ディビジョン1の強豪・静岡ブルーレヴズの発表は、ファンの注目を集めた。ラグビー強豪高の有力選手はほとんどが大学に進学する中、本山は高卒でブルーレヴズ入りし、しかも、静岡産業大学スポーツ科学部にも進学する。あまり前例のない形でラグビーと学業の〝二刀流〟にチャレンジすることになった。

強豪大学ではなく静岡産業大学スポーツ科学部に進学し、リーグワンと学業の二刀流に挑戦する

選手としての成長と教員免許取得の両立 高2で決断

高校1年の終わり、春の選抜大会に出場して好パフォーマンスを発揮した本山は、高校2年時にU17日本代表に選出されるなど将来を嘱望されていた。その時点で多くの強豪大学から誘われる中、本山はブルーレヴズにも誘われた。

もともと長崎南山高ラグビー部の久保田一平監督が、元日本代表WTBでブルーレヴズでプレーしていた伊東力の実兄という関係から、伊東や静岡の選手が長崎南山の練習に参加して指導してくれることがあったという。

本山は、静岡・磐田市にあるブルーレヴズの練習場を訪れたときのことを、「スクラム用の坂があるなど、さすがディビジョン1のチームの施設だと思ったし、高いレベルの環境で自分が成長できると思った。コーチから『尻(の筋肉)がペラペラだな』と言われました(苦笑)。(スクラムで強くなるために)もっと背中や足腰の筋肉をつけないといけない(と感じた)」と振り返る。

高校2年の花園。身長187cm、体重120kgの体格でボールキャリー、モールで活躍。U17日本代表にも選ばれた

ブルーレヴズはリーグワンの中でも特にスクラムの強さに定評があるチームで、元日本代表のスクラム職人だった長谷川慎コーチ、田村義和コーチの指導を受けられることも大きな魅力だった。

「大学でラグビーを続ける選択肢もありましたが、世界のトップに行きたいと思ったので、一番、自分が強くなれる場所を選びました。リーグワンで、プロの(コーチの)教えを経験し、自分に吸収した方が強くなれるし、(社会人になってルールが変わる)課題のスクラムも強くなれる」

ブルーレヴズ側から、静岡産業大学に通いながらラグビーができるという提案もあり、親と相談の末、本山は強豪大学への進学ではなく、高2の花園の前に静岡への入団を決めた。

ブルーレヴズの練習は朝と午後で、社員選手が働いている時間帯に本山は大学へ通学する予定。「将来、セカンドキャリアを考えて教員免許も取ろうと思っています。両立は難しいと思いますが、学業面、ラグビー面の両方に慣れることから始めたい」と大きな笑顔を見せた。

高校日本代表候補合宿で。ブルーレヴズではプロコーチの教えを吸収し、大学では教員免許の取得をめざす

相撲に傾いた進路 野澤武史氏から説得されラグビー専念

本山は長崎県東彼杵郡川棚町出身。3人きょうだいの末っ子で、小学校2年から長崎・大村ラグビースクールで競技を始めた。当初はBKで、CTBだったという。小学校4年から大村相撲クラブで相撲も始めて、平日の週3は相撲、土日はラグビーという生活を送った。

最初に頭角を現したのは楕円(だえん)球ではなく相撲で、小学校5年で九州王者に輝いた。父(剣道部)、兄(野球部)が長崎南山高OBだったこともあり進学した長崎南山中学でも、本山は〝二刀流〟を貫き、相撲では全国ベスト16、ラグビーでは長崎県代表として全国ジュニアラグビー大会で準優勝し優秀選手にも選ばれた

ただ高校進学時、大相撲の相撲部屋や全国的な相撲の強豪高からも誘われて、高校からは相撲一本にしようかな、と傾いたという。

そこで長崎南山中学ラグビー部のコーチが、日本ラグビー協会でユース世代の育成に関わり続けている元日本代表の野澤武史氏に相談し、野澤氏が電話で「君は(日本)ラグビーの宝だ」と説得。本山は相撲で他校に進学することなく、ラグビーに専念する覚悟を決めた。

長崎南山1年生当時のPR本山。将来性を大いに感じさせた

そのまま長崎南山高校に入学すると、高校1年でタレントを発掘、育成する「TIDユースキャンプ(Bigman&Fastman Camp)」に招集され、春の選抜大会では全国大会を経験。高校2年時には初めての桜のジャージーとなるU17日本代表にも選出され、冬には「花園」こと全国ラグビー大会に出場するなど、順調に経験を積み成長した。

長崎南山高校の久保田監督に本山の長所を聞くと、「見た目からすると、どうなのかなと思ったら、すごく素直でした(苦笑)。素直さが彼の良さです。研究熱心だし努力家です」と言えば、昨年12月に本山をU19日本代表に招集した大久保直弥ヘッドコーチは、「どんどん上のカテゴリーでやっていくべきでしょう。これから上の舞台でもまれていけば(2年くらいで日本代表も)あるのでは」と期待を寄せた。

長崎南山1年生時に「TIDユースキャンプ」に招集され、2年時にはU17日本代表選出と「花園」出場を果たす

前例のない道「自分が成功例となる」

相撲のぶちかましに似たボールキャリーよりも「スクラムを押すのが好き」と以前から話していた本山。静岡に入団直前の3月には、高校日本代表としてイングランド遠征が控えている。「将来は日本代表になりたいですが、高校日本代表に続いてU20日本代表も呼ばれたいし、JAPAN TALENT SQUADプログラムではジョーンズHCにアピールしたい!」と語気を強めた。

ラグビーと相撲の二刀流で名をはせた本山は、春からはプロラグビー選手と大学の新たな二刀流に挑む。「長崎南山高校や久保田監督に感謝しています。ほとんど前例がないので、自分が成功例となって、下の代にもこういう道があると示していきたい!」と腕を撫(ぶ)した。

プロと学業の二刀流を選んだ。「ほとんど前例がないので、自分が成功例となって下の代にこういう道があると示したい」

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