バスケ

特集:第73回全日本大学バスケ選手権

静岡産業大・水谷和樹、東海リーグの得点王が最後のインカレで見せた意地の40分

水谷たち静岡産業大は前回大会での初戦敗退の悔しさを胸に、再びインカレの舞台に立った(撮影・全て小沼克年)

第73回 全日本大学選手権大会 1回戦

12月7日@国立代々木競技場第二体育館(東京)
静岡産業大学 64-89 京都産業大学

静岡産業大学は今年もインカレ初戦で姿を消した。けれど、昨年にはなかった手応えがある。今季の東海リーグの得点王・水谷和樹(4年、豊川)は、たとえ勝敗が決まろうともリングに向かい続け、計28得点。この1年で確かな成長を遂げ、「自分らしいプレーができた」と振り返った。

昨年の完敗から一から体作りに励む

昨年のインカレでは、静岡産業大は近畿大学に敗れ、初戦敗退となった。最終スコアは55-88。チームはこの完敗から全国の舞台で1勝を挙げるため、フィジカルトレーニングを一からやり直した。

「トレーナーの方と契約しまして、体作りを徹底的に意識したことで体重も増えました」。そう話すのはシューティングガードの水谷。2年生の時からスタメンに定着した静岡産業大の得点源を担う選手だ。トレーニングの甲斐(かい)あり、水谷自身も体重が3~4kg増えたと明かす。「試合でアタックしても当たり負けしなくなりましたし、得点を取るという意味でも体を作れた分、楽になりました」

フィジカルトレーニングの成果は得点力にもつながっている(右が水谷)

自他ともに認めるエースとなった今年、水谷はドライブからのプルアップシュートを最大の武器にスコアを重ね、10月の東海リーグでは5試合で合計116得点を記録。リーグ戦得点王と優秀選手賞に輝いた。

東海リーグ得点王として

そして迎えた12月7日、自身2度目のインカレでは、立ち上がりこそシュートタッチに苦しんだが、第2クオーター(Q)から本来の姿を取り戻す。水谷は3本の3ポイントシュートを射抜き、前半だけで13得点。チームとしても試合序盤に背負った13点ビハインドを跳ね返し、40-39とリードしてハーフタイムを迎えた。

後半も、マークマンを剥(は)がしきれていない状態で3本連続のジャンパーを沈めるなど、水谷は自らの得点でチームを鼓舞。しかし、静岡産業大は第4Qの立ち上がりでミスが続くと、相手に速攻と3ポイントを許してジリジリと引き離されてしまう。

マークマンがついた状態にもかかわらず、水谷(奥)はシュートを決めた

約20点差がついた第4Q中盤、水谷はリバウンド争いの際に左腕をコートに強打し倒れ込んでしまった。だがこの瞬間、戦況を見つめていた松角翔吾ヘッドコーチはピクリともしなかった。

「肘(ひじ)から落ちてしまって痺(しび)れてしまいました。ちょっと痛かったんですけど、コーチが『お前は40分使うから』と言ってくれていたので、自分がコートに立っている以上は全力を出し切ろうと、やるしかないと思っていました」

その直後、静岡産業大の背番号3は立て続けにジャンプシュートと3ポイントを決めてみせた。まさに“東海リーグ得点王”の意地だった。

最後のインカレでもエースとしての責任を果たす

「東海地区の代表としてインカレに出場していますし、個人としても東海で一番点を取っている選手として、全国でも守られることなく点数を取り続けないといけないなと思っていました。そこに関しては少しできたのかなと」

前回大会と同じ1回戦敗退であっても、この1年で積み重ねてきたものを実感できる試合だった(右が水谷)

試合終了のブザーが鳴り、スコアボードには「64-89」の数字が並ぶ。昨年と同じ初戦敗退。しかし、「去年は全く試合にならなかったんですけど、今年は前半を1点リードで折り返して勝負できる内容でした」と、水谷は一定の手応えを口にする。

最後までチームの勝利を信じ、両チームでただ1人となるフル出場40分間。得点はゲームハイとなる28得点を稼いだ。静岡産業大の水谷和樹は、最後までエースであり続けた。

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