ラグビー

天理大学・筒口允之主将 4年ぶりの関西王者・日本一へ「チームを勝たせる10番に」

昨季の大学選手権準決勝。キックは筒口の武器の一つだ(すべて撮影・斉藤健仁)

9月22日から関西大学Aリーグが開幕する。昨年まで京都産業大学が3連覇を果たしている中、「関西王者奪還、そして日本一」を掲げて臨むのが、昨年の2位・天理大学である。2020年度には関西勢として36年ぶりに大学選手権で日本一に輝き、昨季も帝京大学に敗れたが準決勝まで進出した。今シーズン、「関西のオールブラックス」でおなじみの強豪チームのキャプテンを任されたのがSO筒口允之(まこと、4年、長崎南山)だ。大学1年時からキックを武器に10番を任された冷静な判断力を持った司令塔だ。

主力不在の春を乗り越え、夏は早明に勝利

天理大は伝統的にFWのスクラム、接点が強く、BKはフラットパスを武器にトライを重ねるチームだ。スキッパーを任されたSO筒口は「キャプテンの姿は私生活でもラグビーでも周りに見られている。まだまだだと思いますが、チームの顔として成長していきたい」と話していた。しかし新チームになると春から苦しんでいた。

5月の練習試合では京都産業大に5-48で敗れ、筑波大学などにも敗戦。関西大学春季トーナメントでは準決勝で関西学院大学に28-43で、3位決定戦では近畿大学に28-35で敗れて4位に終わった。

昨季の4年生だった左PR富田凌仁(スカイアクティブズ広島)らが卒業し、さらにU20日本代表にPR森仁之輔(3年、東福岡)、FL/NO8太安善明、川越功喜(ともに2年、天理)が選出され、チームに不在だった影響は否めなかった。

天理大の筒口主将。夏の菅平合宿では明治大、早稲田大に勝利した

筒口主将が「選手一人一人を見ると良い選手もたくさんいるので、一つになるようにまとめていきたい」と話していた通り、夏休みに入るとハードトレーニングを重ねて「チームをかなり追い込んだ」という。

8月に入ると、日本大学に勝利。菅平合宿では帝京大学、東海大学にこそ敗れたものの、明治大学には29-28で逆転勝利し、早稲田大学にも65-35で快勝。一定の手応えを得ることができた。

「エリアの部分だったら自分がキックでとってFWを前に出す。そしてBKでも展開してトライを取れるチームを目指しているので、質をもっと高めていきたいですね!」(筒口)

長崎南山で主将を務め、花園出場

開幕前に、調子が上向いてきた黒衣軍団を引っ張る筒口主将は、長崎式見高校などでラグビーをやっていた父の影響で、5歳から長与ヤングラガーズで競技を始めた。父もSOだったという。小学校時代は剣道、中学校では部活動でソフトテニスもしていたが、中学時代も長崎ラグビースクールに在籍し、太陽生命カップで準優勝も経験した。

高校ではラグビーに専念することに決め、「家から近かった」という理由で長崎南山に進学した。高校3年時はキャプテンとしてチームを引っ張り、「花園」こと全国高校ラグビー大会に出場したが、1回戦で東福岡に敗れた。

高校時代、当時、天理大でS&Cコーチを務めていた中村龍氏(現・神戸スティーラーズ)に指導してもらっていたことや筒口自身「(身長171cmと)身体が小さくてもレギュラーが狙えるし、関東勢を倒したい!」という思いから、天理大に進学した。

昨季の大学選手権準決勝では12-22で敗れたが帝京大を苦しめた

靱帯断裂から復調、昨秋は全試合10番

ルーキーイヤーから10番を背負った筒口はリーグ戦6試合に先発した。だが大学2年では、春に左前十字靱帯(じんたい)断裂の大ケガを負い、半年ほどラグビーができない時期が続いて、大学選手権1試合の出場のみに終わった。

それでも筒口は「正直、試合に出られず悔しかったですが、そのおかげで自分がプレーしたときは『もっとこういったプレーをしよう』など外から見えた部分がありました。ケガしたことは、今は良い経験だったと思っています」と前を向いた。

そんな筒口が小松節夫監督から常々言われているのが、「チームを勝たせる10番になれ!」という言葉だ。ケガから復調した3年時はリーグ戦、大学選手権の全試合で10番を背負い、チームを大学選手権ベスト4に導くだけでなく、関西リーグの「ベスト15」も受賞するなど、大きな存在感を見せた。

伝統的なスローガンは「一手一つ」。今季は関西で優勝して大学選手権に臨みたい

ラグビーができる周囲のサポートに「感謝」

目標とする選手は、大学の先輩であるSO松永拓朗(現・東芝ブレイブルーパス東京)だ。趣味は「身体を動かすこと」。好きな言葉は「感謝」である。「自分一人の力だけではラグビーはできない。今、天理大でこうしてラグビーができているのは、親など周りのサポートのおかげだと思っているので感謝しています」。来春からはリーグワンのチームに加入予定で、社会人になってもラグビーを続ける。

今シーズンのチームの目標には「関西王者奪還、日本一」を掲げている。筒口キャプテンは「まだまだバラバラな部分もありますが、自分たちの色を出しながら、もっと『一手一つ』になり、目標に向かって頑張りたい」と語気を強めた。

選手個人として、どんなところを見てほしいかと聞くと「(来春から)リーグワンにも挑戦するので、自分の持ち味を生かして、もっと『チームを勝たせるSO』になりたいですね」と先を見据えた。

冷静沈着な黒衣軍団の司令塔は、よりゲームコントロールに磨きをかけて天理大の勝利に貢献する。

「自分の持ち味を生かしてもっと『チームを勝たせるSO』になりたい」

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