ラグビー

第2の矢崎由高を探せ エディー直々の若手育成プログラムに天理大・上ノ坊駿介ら参加

選手らに直接指導するジョーンズHC(すべて撮影・斉藤健仁)

エディー肝いりの若手育成プログラムが本格始動した。将来の日本代表選手の育成を加速する日本ラグビー協会のプロジェクト「ジャパン・タレント・スコッド(JTS)・プログラム2025」の2回目の合宿が2月12~14日に実施され、大学生31人と高校生1人が参加。日本代表を率いるエディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)ら日本代表のコーチ陣が実際に指導する様子が、13日、メディアに公開された。

高3本山佳龍も招集 代表コーチ陣が早朝から指導

昨年の同プログラムは短期合宿2回を実施し15人の参加だったが、その中からFB矢崎由高(早稲田大2年、桐蔭学園)が日本代表に選出され、躍動した。その矢崎や今季ブレークしたSO服部亮太(早稲田大1年、佐賀工業)は今回の合宿に呼ばれなかったが、今後、日本代表としてプレーする可能性があるスコッド50人(FW27人、BK23人)にリストアップされている。残り5回の合宿も、スコッド50人から35人ほどを呼ぶ予定だ。

早大FB矢崎由高 イングランド戦で代表デビュー「ワールドカップ4強に貢献したい」

32人の選手たちは日本代表同様に、朝6時から接点練習を行い、ウェートトレーニング、ユニット練習、全体練習、夜にも座学と、朝から晩まで盛りだくさんの内容をこなした。

ジョーンズHCは13日、「この2日間でも急速な改善が見られました。日本代表としてプレーできるだけの実力を持つ選手をここから1人か2人輩出できれば、すぐにでも日本代表の選手層は厚くなる。通常、FWは成熟するのに時間がかかるが、BKにはよりチャンスがある。良いSHが数人いますし、(ポテンシャルのある)10番の選手を何人か見ました」と手応えを語った。

BKのユニット練習。左から海老澤琥珀、伊藤龍之介ら

HC「日本は19~22歳のエリート育成システムがなかった」

今回を含め3月までに国内7回の合宿を経て、リーグワンチームと練習試合を2試合敢行し、4月にはU23日本代表を編成してオーストラリアに遠征し3試合を実施する。そこでアピールすれば、昨年の矢崎やHO佐藤健次(早稲田大4年、埼玉パナソニックワイルドナイツ)のように、6月の日本代表に呼ばれる可能性も大いにある。

ジョーンズHCに、大学生を中心とした意義、目的について聞くと「日本(代表)が発足させた最も重要なプログラムのひとつです。高校(日本代表)チームは本当に強い。2年前はアイルランド代表に勝ちましたし、去年のイタリア代表戦は最後の最後で敗戦したが互角に戦っている。しかしその次の4年間は、選手たちにとってのエリート育成がありません。彼らは大学でラグビーをしていて、非常にいいコンペティションがあるが、エリート育成ではない。そこで私たちは、19歳から22歳までの若い選手たちにハイパフォーマンスなトレーニングとゲームを体験してもらうことを目指しています」と説明した。

JTSの意義や目的について話すジョーンズHC

「速いラグビー、見えた」「ワールドカップへアピール」

実際にジョーンズHCらの指導を受けた大学生の声を紹介する。

FBではなくSOとして招集された上ノ坊駿介(天理大学3年、石見智翠館)は「非常にタフです。初めから最後まで練習(メニュー)が入っているので気を緩める隙間がなく、常に緊張感を持って練習に取り組んでいる。エディーさんも常にアドバイスや良いところを言ってくれるので、良い練習ができている。次のワールドカップに向けて、僕らが良いパフォーマンスをすれば絶対に見てくれているので、まず合宿でアピールしたい」。

強風の中、2時間ほど練習が公開された。ボールキャリーは上ノ坊

昨年はU20日本代表に選ばれたPR山口匠(明治大学2年、流通経済大柏)は「エディーさん(の練習)がタフであるとうわさで聞いていたので、ちょっと覚悟していました(苦笑)が、うわさ以上だったのでビックリしました。正確さを求められるし、どれだけ貪欲(どんよく)にやっても結果につながっていなければやり直しさせられた。そういう部分が大学とナショナルレベルの違いかなと思った」と振り返った。

同じく昨年、大学1年ながら飛び級でU20日本代表に選ばれたHO田中京也(立命館大学1年、東福岡)は「エディーさんの指導は3回目くらいです。練習の一つ一つのプレーに意味があり、エディーさんは、なんでできなかったのか一人ひとりに聞いてくれるので、いい刺激になって成長させてもらっている。毎回(の合宿に)セレクションされているのでU23日本代表に選ばれたい」と話した。

日本代表関連の合宿に初めての参加となった早稲田1年のWTB田中健想

今季、1年生ながら関東大学対抗戦で14トライを挙げてトライ王になったWTB田中健想(早稲田大1年、桐蔭学園)は、初めての日本代表関連の合宿参加となり、「新しいチャンスなので頑張りたい。速いラグビーというやりたい方向性が見えてきた。スケジュールなどもテンポが速い。経験としてはなかなか得られないのでポジティブに捉えたい。スピードはまだまだ課題なので学べるところは学んで、自分のスピードを上げていきたい」と意気込んだ。

大学ラグビーがオフ期間に入っている中、「ジャパン・タレント・スコッドプログラム」では大学生を中心とした若きタレントたちが切磋琢磨(せっさたくま)し、まずはU23日本代表を目指してトレーニングを重ねていく。

JTSに2人だけリストアップされた高校生のうち1人、PR本山(中)

「ジャパン・タレント・スコッドプログラム2025」メンバー

★:2024年U20日本代表
☆:2023年U20日本代表
○:2月12~14日の合宿に参加した32名

◆FW:27名

PR杉本安伊朗(早稲田大学2年)
PR大塚壮二郎(関西学院大学2年)★○
PR檜山蒼介(明治大学2年)○
PR弓部智希(近畿大学3年)☆○
PR森山飛翔(帝京大学2年)※昨年日本代表合宿参加
PR八田優太(京都産業大学2年)★○
PR山口匠(明治大学2年)★○
PR本山佳龍(長崎南山高校3年)○
HO西野帆平(明治大学3年)☆○
HO清水健伸(早稲田大学2年)★
HO田中京也(立命館大学1年)★○
HO高比良恭介(明治大学1年)○
LO能勢涼太郎(近畿大学3年)☆○
LO栗原大地(東洋大学3年)○
LO物部耀大朗(明治大学2年)★○
LO磯部俊太朗(筑波大学2年)★○
LO/FL石橋チューカ(京都産業大学2年)★○
LO/NO8坪根章晃(帝京大学1年)
FL/LO亀井秋穂(明治大学2年)★○
FL/LO栗田文介(早稲田大学3年)☆
FL/LO中森真翔(筑波大学1年)○
FL利川桐生(明治大学3年)☆○※昨年日本代表合宿参加
FL薄田周希(東海大学3年)☆
FL/NO8小林典大(関西学院大学3年)☆
FL/NO8太安善明(天理大学2年)★○
NO8宮下晃毅(法政大学3年)☆○
NO8森山海宇オスティン(東洋大学3年)○

体を当てるFWの選手たち。左から2番目が田中京也

◇BK:23名

SH高橋佑太朗(筑波大学3年)☆
SH高木城治(京都産業大学2年)★○※昨年日本代表合宿参加
SH村田大和(京都産業大学2年)★○※昨年日本代表合宿参加
SO伊藤龍之介(明治大学2年)★○
SO服部亮太(早稲田大学1年)
SO小林祐貴(慶應義塾高校3年)
SO/CTB本橋尭也(帝京大学2年)★
SO/FB上ノ坊駿介(天理大学3年)○
CTB野中健吾(早稲大学3年)☆
CTB/FB今野椋平(慶應義塾大学3年)☆
CTB上田倭士(帝京大学2年)★
CTB平翔太(明治大学3年)☆○
CTB時任凜空(福岡工業大学3年)
CTB福島秀法(早稲田大学3年)※昨年日本代表合宿参加
CTB李智寿(朝鮮大学2年)○
CTB/WTB白井瑛人(明治大学1年)★○
WTB海老澤琥珀(明治大学2年)★○※昨年日本代表合宿参加
WTB石垣慎之介(慶應義塾大学3年)
WTB田中健想(早稲田大学1年)○
WTB/FB武藤航生(関西学院大学3年)☆○
WTB/FB増山将(筑波大学2年)★○
WTB/FB竹之下仁吾(明治大学2年)★○
FB矢崎由高(早稲田大学2年)☆※昨年日本代表

BK陣に直接指導するジョーンズHC

◇ジャパン・タレント・スコッドプログラムのスケジュール

2月5日〜2月8日:合宿・トレーニング
2月12日〜2月14日:合宿・トレーニング
2月17~月18日:合宿・トレーニング
2月26日〜3月2日:合宿・トレーニング
3月7日〜3月8日:合宿・トレーニング
3月17日〜3月23日:合宿・トレーニング
3月29日〜4月1日:U23日本代表遠征事前合宿・トレーニング
4月1日〜4月16日:U23日本代表豪州遠征

in Additionあわせて読みたい